「モノトーンで」、『セツアンの善人』木村達成(上) | アイデアニュース

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「モノトーンで」、『セツアンの善人』木村達成(上)

筆者: 岩村美佳 更新日: 2024年10月14日

『セツアンの善人』が、2024年10月16日(水)から11月4日(月・休)まで世田谷パブリックシアターで、11月9日(土)と10日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演されます。『セツアンの善人』は、第二次世界大戦中、ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが亡命先で執筆し、1943年にスイスで初演されました。神様が地上に降りてきて善人を探すというストーリーの本作は、ブレヒト作品を代表する寓意劇として、今も世界各地で上演を重ねています。『セツアンの善人』には、ブレヒトならではの醍醐味を存分に味わえるエッセンスが散りばめられており、「人はどこまで善人でいられるのか」「人はお金で幸せになれるのか」という問いかけが、葵わかなさんが一人二役で演じ分ける、心優しき女性シェン・テと、ビジネスに徹する冷酷な青年シュイ・タという真逆な人物を通して投げかけられます。演出は白井晃さんが、新訳はドイツ文学者の酒寄進一さんが手がけられました。

また、ブレヒトの作品では劇中に出てくる音楽も大きな要素となりますが、本作にも、ブレヒト自身が委託した音楽家パウル・デッサウによる楽曲が並びます。また、国広和毅さんのオリジナル楽曲も新たに追加されるほか、バイオリン・チェロ・パーカッションという編成によるライブ演奏、山田うんさんによる振付など、音楽劇としても存分に楽しめる作品として届けられます。アイデアニュースでは、シェン・テが恋に落ちる失職中のパイロット、ヤン・スンを演じる、木村達成さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、白井さんとの会話の内容がこれまでとは変わったというお話、ヤン・スン像の変化、葵わかなさんとの芝居についてのお話などを紹介します。「下」では、原作の戯曲を初めて読んだ時の印象、舞台ならではの表現方法、本作の見どころについてのお話などを紹介します。

木村達成さん=撮影・NORI
木村達成さん=撮影・NORI

――今の稽古の様子や手応えを伺えますか?

スピードがとても早いと思っています。稽古場が本番の舞台上よりも狭いので、舞台稽古でしか確認できないことも多そうです。

――お久し振りの舞台はいかがですか?

稽古が長くて疲れますね(笑)。 僕が(白井さんが演出される舞台で)稽古していたのはコロナ禍の時でしたから、時間短縮で稽古していたのかもしれないと思うと、「白井さんはこういうタイプの稽古をする方だったんだ」という、初めての驚きがあります。

――白井さんから、今まで言われていたこととの違いはありますか?

言ってくださることが、変わっているような気がします。

――どんなところが違いますか?

もっと初歩的なところを指摘されていたようなイメージがありましたが、今回はあまり言われていない気がします。これまでは、「足幅、歩く速度、体の向き、横で向かい合って芝居をするな、舞台は奥まであるんだからもっと立体的に使え」というようなことを言われていました。

――技術的なことですか?

そうですね。今回は、できるだけ自分が(舞台の)後ろに行ったり、芝居している役者たちの顔が横を向かないようになど、いろんなことを考えながら取り組んでいます。

――逆に、今回初めて言われたことで印象的なことはありますか?

「モノトーンにこだわれ」と。声でお芝居をするのは簡単ですが、聞こえるものは平面的でも、心の中で感情が動いている、モノトーンでもそれが分かるような芝居をと言われました。稽古の時ではなくて、たまたま二人になった時に言ってくださいました。「以前だったら言っていないけど」とおっしゃっていましたね。でも、あまりお客さまに明かしたくない内容なので、この話はこのくらいにしておこうかな(笑)。

――そうなんですね。では、白井さんとお話したことで、他に伺えることはありますか?

愛を知ったというか、ヤン・スンを愛してしまったシェン・テが、「このままじゃだめだ」となってシュイ・タを呼び出します。シェン・テとシュイ・タ、そのふたりが混在する瞬間にそこに存在することで、シェン・テの心が揺れ動くさまを表現できるキャラクター。それが、僕が演じるヤン・スンだと思うんです。「私が愛している人だ」「でもこのままじゃだめだ」となっている、シェン・テの心の揺れを表現する部分ですね。

シュイ・タと対峙している時はすごく緊張感がありますし、シェン・テとお芝居している時はまたちょっと違うんです。シェン・テが恋をしていますから。僕も彼女を利用してはいますが、心の底から好きという気持ちを表すという感じになります。

僕の演じるヤン・スンに関しては、芝居を変える必要はあまりないと思いますが、台本で読むと平面的なものを、お芝居では立体的にしなければいけないことが、すごく難しいです。最初のシェン・テとの出会いも、「話している言葉とはまた別の意味で、二人が共鳴し合っている」みたいな。そういうことを話していたら、思っていたヤン・スン像を、早々に白井さんに壊されました。「木村、そうじゃないぞ」と。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ヤン・スン像の変化、葵わかなさんとの芝居についてのお話などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。14日掲載予定のインタビュー「下」では、原作の戯曲を初めて読んだ時の印象、舞台ならではの表現方法、作品の見どころについてのお話などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■自分が出ていないシーンを見ていても、くすっと笑えるようなシーンがたくさん

■葵わかなさんとは2回目の共演。僕とはまた違った表現の試みをする人だと思う

■シェン・テは「善人」という土足でどんどん入り、ヤン・スンはどんどん扉を開ける

■作品が終わっても「何だったのか」と言えない役も。キャラクターは変わるもの

<『セツアンの善人』>
【東京公演】2024年10月16日(水)~ 11月4日(月・休) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2024年11月9日(土)〜11月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式サイト
https://setagaya-pt.jp/stage/16042/

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木村達成さん=撮影・NORI
木村達成さん=撮影・NORI

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<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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最近のコメント

  1. しっぽ より:

    白井さんと木村達成さんの話の変化という興味深い入口から面白く読みました。
    キャラクターは変化していく、こそ木村さんの醍醐味と思っており、主演の葵わかなさんが演じられる二役をどう引き出していくか着目して観劇できたらと思います。
    後編の内容も楽しみにしています。

  2. うり より:

    白井さんからの演出の言葉に唸り、木村さんと葵わかなさんのお芝居へのアプローチの違いなど、新鮮で興味深いお話がたくさんありました。更に奥深いキャッチボールが稽古場で繰り広げられているのだろうなと想像すると、観劇の日がますます楽しみになりました。

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