『セツアンの善人』が、2024年10月16日(水)から11月4日(月・休)まで世田谷パブリックシアターで、11月9日(土)と10日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演されます。心優しき女性シェン・テ(葵わかなさん)が恋に落ちる失職中のパイロット、ヤン・スンを演じる、木村達成さんのインタビュー後編です。「下」では、原作の戯曲を初めて読んだ時の印象、舞台ならではの表現方法、本作の見どころについてのお話などを紹介します。
――戯曲を読まれて、最初にどんなことを思いましたか?
台本をいただく前に、翻訳を読みました。難しいイメージが強かったのですが、読んでみたら単純明快というか。約80年も前に書かれた作品ですが、今の時代と大差ないなと思いました。ブレヒトが「セツアン」という(架空の)アジア圏をテーマにした作品を書いたことも興味深いですし、それによって僕らには情景が浮かびやすく、理解しやすく、分かりやすくなったのかなと思います。ヨーロッパの方が見たら想像するのにちょっと時間がかかったりするでしょうから。
――異国感が強いでしょうね。
例えば『ブレット・トレイン』など、ハリウッドの映画を見ていると、「日本って、こういう見え方をしているんだ」と思うことがあるんです。彼らに見えている世界と、日本人に見えている世界がちょっと違うんですね。この作品では、そういう違和感が少なかったです。フィルターはかかっていると思いますが、そのフィルターが薄いような感じがしました。
――タイトルにもある「善人」について描かれている部分に関連して、ご自身の中で「善人とは?」と考えたりはされましたか?
そこは結構否定的というか……。そうせざるを得なかった状況を作り出した、もっと外側、国の環境とか、そういうところまで発展していくことだと思うんです。生まれた瞬間から悪い子なんて絶対にいないですし、環境で培ったバックボーンがあったからそうなってしまっているのかなと。でも作品に登場する「セツアンの善人」は、多分貧困の街でも善人として存在しているので、それは素晴らしいことだと思います。この作品を観て、「これは私だ」と思う人もいらっしゃるとは思いますが、5割いればいいほうだと思います。僕は絶対、できていないほうですから。
――善人ばかりだったら、世の中に争いは起きていませんよね。
そうだと思いますね。でも、この作品が持つのは、そういうことを訴えかけられるような爆発的な力じゃないんですよね。心にちくちく刺さるような何か、自分がやってしまったことに対して「あの時、ああやっとけばよかったな」というような過去を、ちくちく針で刺されるような、そんな感情になるんじゃないでしょうか。最後に、「あとはお客さまが考えてください」と結論を出さずに終わるのが、面白い演劇的手法だなと思います。
――舞台ご出演は、昨年の『スリル・ミー』以来ですが、舞台の面白さは久し振りに感じていらっしゃいますか?
こんなきついことを僕は11年間も休まずに、よく続けていたなと思いました。「こんなに頭でいろんなことを考えながらやっていたのか」と思いながら稽古しています。稽古に集中しているからですが、家に帰ったらくたくたです。お客さまは裏側の裏側まで知る必要はないですから、エンターテイメントとして観ていただければと思うんですが、それだけ頑張っているんだから観にきてほしいなという思いはありますね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、舞台ならではの表現方法、本作の見どころなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■舞台の芝居では、表現の角度が広がる。白井さんが「体を立体的に見せるように」と
■世田谷パブリックシアターの舞台に立つのは初めて。どういう感じで伝えようかと
■大河ドラマ『光る君へ』では、御簾の中で孤独たっだ。ぽろっとこぼれた歌は絶品
■「善人とは」「幸福とは」。作品の終わり方を受けて、皆さんが考えることになる
<『セツアンの善人』>
【東京公演】2024年10月16日(水)~ 11月4日(月・休) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2024年11月9日(土)〜11月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式サイト
https://setagaya-pt.jp/stage/16042/
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上・下のインタビューを楽しく拝読しました。
久しぶりの木村達成さんの舞台は、観劇する側にも思い出させてくださるものがありそうです。私たちが見えている世界から入れる作品とのことで、自分なりに考えを広げていけたらと思います。
タイムリーに貴重な大河ドラマのお話もお伺いでき、ありがとうございます。