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「ひとり行くぜ、東北」旅エッセイ(3)宮城県気仙沼市のコーディネーター村上充さんのこと

筆者: 松中みどり 更新日: 2015年12月24日

 

JR東日本のキャンペーン「行くぜ、東北。」に乗せられたわけではありませんが、2015年11月15日(日)から11月20日(金)まで、ひとりで東日本大震災被災地に出かけてきました。福島、宮城、岩手を駆け抜けた旅を振り返り、見たこと、感じたこと、そこに出会った人々について書きたいと思います。

 

今回が旅エッセイ最終回です。宮城県気仙沼のことをお伝えします。

 

気仙沼市ホームページより

気仙沼市ホームページより

 

2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を出した町の中でも、気仙沼はテレビで見た火事の映像が衝撃的でした。津波によって港の貯水タンクが倒れて重油があふれだしたり、浸水によって船舶からも火災が発生しました。「津波火災」の恐ろしさが今も目に焼き付いています。土地勘のない私は、気仙沼市が宮城県で、陸前高田市は岩手県だということもよく分かっていませんでした。なので、宮城県仙台市から気仙沼に向かうのが、こんなに遠いということも、行ってみて初めて実感したことのひとつです。

 

たいていひとりで行動し、事情があって車の運転を止めている私は、現場で活動している方や知り合いになった方を頼ります。気仙沼と言えば「ミスター仮設」と呼ばれる村上充さんに頼り切り。福島県ではフリーランスフォトグラファー太田康介さんに何から何までお世話になったように、気仙沼についてからは村上さんの車で移動、現地でのスケジュールもお任せ状態でした。今回も村上さんのコーディネイトで、仮設住宅とみなし仮設でアロママッサージをさせていただくことが出来ました。

 

仮設住宅をお訪ねして、アロマハンドマッサージをしています=撮影・一緒に行った看護師さんの薮崎美紀さん

仮設住宅をお訪ねして、アロマハンドマッサージをしています=撮影・一緒に行った看護師さんの薮崎美紀さん

 

仮設住宅では、一見お元気そうな方もマッサージをさせていただくと、腕が凝り固まっていてびっくりすることがあります。また、いろいろなアロマを用意して、マッサージに使用する香りを選んでもらうのですが、多くの方が「オレンジ」を選ばれます。一般的に、心を静め穏やかにさせリラックス効果の高い「ラベンダー」や華やかな香りで幸せな気持ちになる「ローズ」も好まれる方が多いのですが、なぜか仮設住宅ではオレンジ支持率がとても高い。オレンジには、不安や緊張をときほぐし、ストレスを緩和する効果があります。うつ状態から抜け出したい方が選ぶ香りでもあります。

 

ふらっとたまにやってくる私などがはかり知ることのできない、辛さや悲しみや悔しさを抱えておられる方に、私の出来ることと言えば、これが良いとおっしゃったオレンジの香りをふんだんに使って、固まった手の関節や凝った腕をほぐすことくらいです。そんな時に、ひとことでもふたことでも、本音を話されることがあれば耳を傾けることが出来れば、有難いと思っています。

 

仮設住宅でアロママッサージをしたら、入居者の方がオイル入れを手作りして下さいました

仮設住宅でアロママッサージをしたら、入居者の方がオイル入れを手作りして下さいました=撮影・松中みどり

 

村上充さんは、震災後避難所暮らしを経て、半壊したご自宅をなんとか修復して住んでいます。被災した地元民で、仮設住宅に入らなくてすんだ自分だからこそできることがあると、仮設やみなし仮設での支援活動をずっと続けておられます。

 

村上充さん=村上さんのホームページより

村上充さん=村上さんのホームページより

 

穏やかな笑顔、優しい声の村上充さんは、気仙沼にある90ヵ所の仮設住宅のうちおよそ40ヵ所をまわり、住民の皆さんとボランティアの人々をつなぐコーディネーターとして、掛け替えのない存在です。私のように、たまにふらっとやってくる個人にも、ボランティア団体の要請にも柔軟に応えてマッチングをします。若いボランティアさんが多ければ引っ越しや片付けの手伝いをお願いしようとか、音楽や踊りなど慰問のボランティアさんなら、この仮設住宅に行ってもらおうとか、地域の現在のニーズが分かっている村上さんがいてくれることで、気仙沼の活動はとてもスムーズで温かい。ほぼ毎日、どこかの仮設住宅で村上さんの笑顔を見ることが出来ます。

 

村上さんがFacebook やTwitter などを通して情報を発信し続けているおかげで、用地確保が難しく、大変不便な場所に建てられた仮設住宅の状況や、そこに住んでおられる方々の心労・ストレスについて知りました。また、震災後の気仙沼の医療を取り巻く状況が本当に深刻なのだということを知ったのも、村上さんのおかげです。

 

もともと医療機関の数が少なかったという気仙沼には、医療従事者や病院が不足しています。「看護師さんも、介護職の方も、リハビリ担当の方も、まったく足りません」と村上さんは言います。その圧倒的な不足に加えて、仮設住宅から医療機関への移動手段が少なく、受診をすることが困難な方が多いのです。特に独居の高齢者の方が仮設には多いのですが、車がなければ特に冬場、雪の坂道を歩いてバス停まで行くことは不可能に近い。また、経済的な事情で受診を控えたり薬をもらわなかったりすると、慢性疾患が悪化します。そんな方々の、文字通りいのちを支えているのが、村上さんのコーディネートのもと、気仙沼の医療支援に関わる人たちなのです。

 

2015年11月気仙沼のみなし仮設にて 右側ブイサインの男性が村上さん=撮影・松中みどり

2015年11月気仙沼のみなし仮設にて 右側ブイサインの男性が村上さん=撮影・松中みどり

 

上の写真は、一緒にみなし仮設を訪ねた時の一枚です。左端男性は北海道の病院から医療支援に来られた健康運動指導者中村俊輔さん、後ろで立っている女性は特定非営利活動法人「ジャパンハート」から気仙沼に派遣されている看護師さん薮崎美紀さんです。様々な立場の、いろいろな背景の方とのご縁をつないでくださるのが、村上充さんなのです。

 

村上さんのフェイスブックページは、気仙沼の医療事情が現場の視点で書かれています。2015年12月4日の記事には、ボランティアとして気仙沼の軽費老人ホームやグループホームを訪ねた医療従事者の方からの感想が紹介されていました。「入居されている高齢者の方の医療依存度が上がっている。身体状況が想像以上に厳しく、介護職員の方が懸命にケアされている」。療養型入院が出来る病院がない気仙沼では、医療従事者のいる施設への入所待ちの数も多く、軽費老人ホームの入居者の医療依存度も上がっているというわけです。

 

短い時間しかいない私も、血圧が高い方、乾燥肌がひどい方、靴下や下着の跡が深くついていて血流を圧迫している方、足の爪が伸びてひどい巻き爪になっていた方に会いました。特に足の爪は、皮膚科に行って診てもらわないといけないような方もおられます。先に書いたように、病院の数が少ない気仙沼では「皮膚科」のクリニックはないため、総合病院まで行かねばならず、その移動手段もなかなか確保できないという状況です。震災から年数がたつほどに、仮設住宅での医療支援は今も必要なのかという声を聞きますが、阪神大震災を経験した者として、はっきりと言えます。健康相談を含む医療支援は、これからも必要ですし、時間の経過とともに新たな問題も生まれてニーズは多岐にわたっています。コーディネーターの村上さんの果たす役割は、本当に重要になってきていますし、出来るだけ多くの医療関係者の方に、協力をお願いしたいのです。

 

気仙沼での医療健康支援活動に関心を持たれましたら、ぜひ村上さんにご連絡下さい。連絡先はこちらです。
「気仙沼・仮設住宅での医療支援」
→ http://kaban.net/shie/2409/
気仙沼・コーディネート活動プラスα Facebookページ
→ https://www.facebook.com/ktopicplus/?pnref=lhc
村上充さんFacebookページ
→ https://www.facebook.com/mitsuru.murakami

 

2012年7月に筆者が気仙沼を訪れた時の写真

2012年7月に筆者が気仙沼を訪れた時の写真

 

ネットで情報を読んでいるとはいえ、私が実際に気仙沼に行けるのはせいぜい1年に一回です。たまに訪れる人間の目からすれば、町の風景は復興に向けてどんどん変わっているように見えます。例えば気仙沼の鹿折地区に打ち上げられていた大型巻き網船「第18共徳丸」は2013年解体され、気仙沼では市街地整備のためかさ上げ工事が各地で勧められ、行き交う車の量も増えていました。

 

2015年11月に気仙沼を訪れた時の写真=撮影・松中みどり

2015年11月に気仙沼を訪れた時の写真=撮影・松中みどり

 

一方、仮設住宅やみなし仮設をお訪ねすると、「久しぶり~!」と迎えて下さる方々がいて、お茶をいただいたりマッサージをしながらお話したりすると、この数年、本来なら緊急にしばらく住むだけだったはずの「仮設」住宅で、暑い夏も寒い冬も、不便なことも理不尽なこともいっぱいあった方々の心を思って胸ふさがる思いです。だからこそ、笑顔いっぱいで活動をしたいと気持ちを奮い起こします。

 

震災から4年と8か月。仮設住宅でお目にかかった方からのメッセージの中に、「来年もここにまだいるから、また来てね」というものがありました。町で見かける工事の槌音とはうらはらに、土地の高騰や様々な事情で災害公営住宅に入れない方もおられます。せっかく新築された家に入居する前に、亡くなってしまったという話も聞きました。やるせないことです。

 

東日本大震災では、本当に多くの命が失われました。生き残った者の使命として、「人の命」を本当に大切にし、守っていきたいと村上さんは話されました。

 

村上さんがダジャレを言ったり、不思議なトランプ芸を披露したり、出されたコーヒーもお菓子も全部平らげて「体重が増えちゃったよ」と言うのも、みんなの気持ちをほぐし、その場を明るくしたいという気持ちからなんだと思います。気仙沼の「ミスター仮設」は唯一無二のコーディネーター、いつも本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 

<アイデアニュース関係記事>
「ひとり行くぜ、東北」旅エッセイ(1)福島の猫、犬、ダチョウ、イノシシ
→ https://ideanews.jp/archives/13307

「ひとり行くぜ、東北」旅エッセイ(2)福島浪江町、猫を愛する人々について

→ https://ideanews.jp/archives/14646
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「しろさびとまっちゃん」著者と、福島第一原発20km圏内へ(下)
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モントリオール世界映画祭招待決定、「ナオトひとりっきり」中村監督インタビュー
https://ideanews.jp/archives/4738
映画評:大手メディアが報道できない「いのち」を取材、「ナオトひとりっきり」
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「しろさびとまっちゃん」福島原発20km圏内で生きる猫と松村さんの日々
→ https://ideanews.jp/archives/1919

 

<筆者プロフィール>
松中みどり(まつなかみどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主催。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。

 

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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