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「ひとり行くぜ、東北」旅エッセイ(2)福島県浪江町、猫を愛する人々について

筆者: 松中みどり 更新日: 2015年12月17日

 

「ひとり行くぜ、東北」旅エッセイ第2回目は、福島浪江町の私設シェルターのお話からはじまります。 2015年11月16日、保護された猫と犬のシェルターを維持し続けている赤間徹さんを、再び訪ねました。

 

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自宅と事務所を犬猫のためのシェルターにした赤間徹さん=撮影・松中みどり

 

原発事故のため、20キロ圏内にある自宅には住めず、同じ敷地内の職場も使えない状況になった赤間さん。並んで建っている有限会社赤間工業の建物と自宅とを、保護犬と保護猫のために開放。郡山の避難先から毎日浪江町に帰ってきて、ずっとTNR活動を続けておられます。(*TNRについては、アイデアニュースの過去記事をご覧ください→ (「しろさびとまっちゃん」著者と、福島第一原発20km圏内へ(上)https://ideanews.jp/archives/5367

 

6月にお訪ねして話を聞いた時からずっと、赤間さんご夫妻を応援したいと思ってきました。前回書いた記事を電子書籍化し、売り上げを赤間さんのところに寄付すると決め、今回、少しだけですが売り上げを持参しました。なにか具体的にお手伝いしたくて、今回は犬の散歩をさせてもらったのですが、犬のリードをつかんではたと気付きました。私には、浪江町の道が全く分からない!

 

「散歩道なら私が知ってるから」と言いたげな保護犬

「散歩道なら私が知ってるから」と言いたげな保護犬くくりちゃん=撮影・松中みどり

 

案ずるより産むが易し、お散歩コースは犬たちの方がよく知っていました。20キロ圏内でやたらなところに行って迷子になるという羽目にはならず、賢い犬たちとのんびりお散歩。暖かい春のような日、合計4匹の犬が頼りない新米ボランティアに付き合ってくれました。

 

ウンチ拾いにもたもたしていると、まだーという顔をされます

ウンチ拾いにもたもたしていると、「まだー」という顔をされます=撮影・松中みどり

 

猫大好き人間と思われている筆者ですが、(そしてそれは本当ですが)、実は犬も大好き。事情が許せば、犬と猫の両方と暮らしたいと願っています。「この子たちはおとなしくて、リードもあんまり引っぱらないから」と赤間さんが選んでくれた犬たちとのゆるゆるとした散歩は、私にとって至福の時間でした。しかし、犬たちが通い慣れた散歩コースには、荒れ果てた家があり、もう誰も手を入れない畑が広がっています。ここは、浪江町、福島第一原発からの距離は最も近いところで約4km、原発から約30kmの箇所でも帰還困難区域になっている町。散歩に行く道の端に除染作業車が止まっていて、仮眠中の人の姿を目にしました。散歩の帰りには、マスク、手袋、長靴を身に着けた作業員による除染作業が始まっていました。

 

福島に行くときにはこれと決めているマイ長靴=撮影・松中みどり

福島に行くときにはこれと決めているマイ長靴=撮影・松中みどり

 

長靴こそ履いていますが、普通の格好の私と、もちろん自前の毛皮だけの犬たち。何度も立派なウンチをする犬の後始末をする道、コンクリートと土が隣り合っているこの部分も、除染するのかな。いろいろなことを思いながら、20キロ圏内の散歩を終えました。

 

昼食中も熱視線(?)もっと遊ぼうよ=撮影・松中みどり

昼食中も熱視線(?)もっと遊ぼうよ=撮影・松中みどり

 

散歩を終えて、お昼ご飯。赤間さんの元の仕事場でコンビニで買ってきたおにぎりを食べました。仲良くなった犬の一匹が覗き込んでいます。座ったソファのまわりは保護猫さんたちでいっぱいでした。

 

赤間さんのシェルターにいる保護猫さん=撮影・松中みどり

赤間さんのシェルターにいる保護猫さん=撮影・松中みどり

 

赤間さんのシェルターにいる保護猫さん=撮影・松中みどり

赤間さんのシェルターにいる保護猫さん=撮影・松中みどり

 

お訪ねした日の前日2015年11月15日は、ちょうど浪江町の町長選挙の投票日だったそうです。「福島県浪江町の町長候補が、東京・渋谷駅前で街頭演説」という記事を目にしていたので、赤間さんから聞いた話が腑に落ちました。東京で演説すれば、メディアにとりあげられたり、SNSなどで情報が拡散するのではないかと願っての渋谷演説。赤間さんはこう言いました。

 

「みんないろんなところに避難していて、いつ町長選挙なのか、誰が立候補しているのか知らないんだもんね。候補者だって、どこに後援会の文書やら選挙ハガキを送ったらいいかわからんって」

 

面積の8割が帰還困難区域にあたる浪江町。浪江町のホームページによると、福島県内避難者数は約1万4千人、県外で避難生活をしている人は6000人を越え、避難先は47都道府県に及び、国外に避難している人もいるという状況なのです。

 

浪江町のこれからを決める大切な町長選挙でしたが、候補者それぞれの政策が十分伝わらないまま低い投票率で終わるという残念な結果になりました。現職の馬場有氏が新人候補2名を大差でかわし、3選を果たしました。投票率は56パーセントと、その前の時の73.5%を大きく下回って過去最低でした。

 

赤間さんのシェルターにいる保護猫さん=撮影・松中みどり

赤間さんのシェルターにいる保護猫さん=撮影・松中みどり

 

「保護してる犬と猫の公的なシェルターが出来たらいいんだけど」と赤間さんは言います。「でも、今の役場の感じでは無理だね。まあ、こんなふうに、しばらくはやっていこうと思ってます」

 

赤間さんの“こんなふう”とは、避難先の郡山から車で2時間近い距離を毎日浪江町に通い常時70匹を超える猫と、20匹前後の犬の世話を、基本的には夫婦ふたりで続けるということです。仕事もなく、住み慣れた家で暮らすこともかなわない先が見えない日々、心も体も福島第1原発20㎞圏内に残った犬猫のために使っているのです。人を信じない犬も、人を怖がる猫も、時間をかけて心を開かせる赤間さんです。

 

赤間さんのシェルターにいる猫は、毛並みも目力もバッチリ=撮影・松中みどり

赤間さんのシェルターにいる猫は、毛並みも目力もバッチリ=撮影・松中みどり

 

TNR(捕獲して、不妊手術を受けさせ、里親を探す、もしくは元の場所にリリースする)のため、給餌器を設置・管理するのも赤間さんの日々の活動のひとつです。どこに給餌場を置くのがいいか、苦労して工夫しても、いろいろな事情で撤去しないといけなくなる・・・

 

赤間さんのブログ「3.11レスキュー日誌」より

赤間さんのブログ「3.11レスキュー日誌」より

 

赤間さんのブログ「3.11レスキュー日誌」に、ある日こんな記事が出ていました。

 

 

    • 『吐き出したい事は多々有る・・・

 

    • いつも、いつも辛い思いをするのは、弱い者ばかり・・・
      人間の身勝手で、翻弄された動物達

 

  • そして又、数少ない給餌場が撤去された・・・
    日夜、野生動物との戦いに明け暮れ
    そして簡単に、人間に潰される
    しかし、簡単に受け入れられるはずも無い・・・』

 

 

私たちにはいつも柔和な笑顔を見せてくれる赤間さんですが、被災者であり、地元民である以上、地域の中で様々なしがらみや軋轢がないはずはないと思うのです。文句も苦情も来ることでしょう。こういう活動をしていることを知って、わざわざ猫や犬を置きにきたり、子猫を捨てたりするケースもあると聞きました。

 

そんな中、猫を愛する人たちの協力で、幸せをつかんだ猫「かりんちゃん」をご紹介します。

 

パステル三毛かりんちゃん=撮影・松中みどり

パステル三毛かりんちゃん=撮影・松中みどり

 

この子は、フリーランスフォトグラファー太田康介さんに初めて連れてきてもらった2015年6月、南相馬市の小高区の給餌ポイントで見かけた猫です。その時の様子は、ぜひこちらの記事をご覧ください → 「しろさびとまっちゃん」著者と、福島第一原発20km圏内へ(中) https://ideanews.jp/archives/5367

 

南相馬の猫では、浪江町の赤間さんのシェルターには連れていけないなあと、人懐こい三毛猫を残していくことに、後ろ髪を引かれる思いだった太田さん。そうしたら、なんとこの猫は、浪江町の立野まで自力で移動、10月初めに赤間さんに保護されたのです。他のボランティアさんからも、こういう猫がいるという情報が入っていたそうで、赤間さんも気にしていたそうです。みんなの気持ちが通じたのか、自分で赤間さんのTNR活動地域までやってきた猫。「かりん」と名前をもらって、早々に保護猫カフェ「湘にゃ庵」に移動することになりました。11月18日には移動だったので、11月16日にかりんちゃんと再会できた私は、よくよくこの子に縁があるのかなあと、しばらく見つめ合いました。良い里親さんが見つかって、温かい家で過ごせるようにねと話しかけましたが、幸運のパステル猫ちゃんですから、きっと大丈夫。そんな気がします。

 

吉田美惠子さんと太田康介さん=撮影・松中みどり

吉田美惠子さんと太田康介さん=撮影・松中みどり

 

今回の福島訪問で、もうひとり、猫を愛することでは誰にも負けない女性に出会いました。猫のボランティアさんの間では「南相馬の猫おばさん」として知られている人ですよと太田さんから聞いていた吉田美惠子さん。今回、その熱い心と吉田さんの活動の一端に触れることができました。

 

12匹の猫と暮してきた吉田さんは、原発事故で南相馬市小高区の自宅に住めなくなり、今は避難先から猫の給餌とTNR活動のために通っておられます。

 

猫の給餌箱に、アライグマなどの野生動物に餌を食べられないよう入り口を狭くする工夫をしている太田さん。吉田さんから頼まれてこの日の夕方、急きょ作業を開始しました。

 

給餌箱を改造中の太田さん=撮影・松中みどり

給餌箱を改造中の太田さん=撮影・松中みどり

 

太田さんが3台の給餌箱の改良作業をしている間、少しだけお話を聞かせてもらいましたが、本当に忙しい吉田さん。吉田さんと話をしていると、近所の人がやってきて、猫のフンのことでやんわりと苦情がありました。その方の庭に落ちているのは、おそらく野生動物のフンではないかと思われます。でも、帰宅準備のために家や庭の片づけをしている人からすれば、猫の餌やりをしている人がいるせいで・・・と思うのでしょう。どこの町でもあることですが、猫が苦手な人たちにも猫たちのための活動を理解してもらい、地域で気持ち良く暮らしていくためにも、餌のやり方の工夫と、TNR活動が大切だと改めて思いました。

 

吉田さんのところに各地から送られてきた猫の餌=撮影・松中みどり

吉田さんのところに各地から送られてきた猫の餌=撮影・松中みどり

 

3つの餌箱の改造が完成した時点で薄暗くなってきていました。太田さんも私も、今日はこれでおしまいかなあと思ったのですが、吉田さんはまだまだやる気満々です。「よかったら、これを給餌場にもっていって、つけてもらいたいんだよね」と、優しい柔らかい声でお願いされては嫌とは言えません。先導する吉田さんの車の後を、太田さんとふたりで付いていき、改造した餌箱を設置。廃屋のような1ヵ所目の餌場ですでに暗くて、ちょっと足元が危ない感じになってきました。夜になると本当に暗くなる20キロ圏内。がれきを踏んでしまったのか、吉田さんの車がパンクしてしまいました。

 

すでに真っ暗の給餌場=撮影・松中みどり

吉田さんと大田さん、すでに真っ暗の給餌場にて=撮影・松中みどり

 

それでも、猫のためにどうしても餌箱を持っていきたい吉田さん。それならと、太田さんの車の助手席に乗ってもらい、私はキャットフードの箱が満載の後部座席になんとか座る場所を確保して、無事に3ヵ所の餌場に太田さんの改造餌箱を設置、たっぷりと餌を補給してきたという次第です。吉田さんの、猫たちにかける温かい愛情と行動力に圧倒された数時間でした。

 

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<関連リンク>

 

赤間徹さんの活動のブログ「3.11レスキュー日誌」(丁寧な物資や支援へのお礼と報告が載っています。赤間さんのところの保護猫、犬たちの様子が分かるブログです)。 赤間徹さんに犬や猫のための応援物資を送る場合は、こちらの住所までお願いたします。 〒963-8041 福島県郡山市富田町下双又16の16センチュリーパレスCー101 赤間徹さんまで。
→ http://okomenokiwami.blog38.fc2.com/

 

吉田美惠子さんの応援ブログ「南相馬の猫おばさんを応援する会のブログ」(こちらにも収支報告や、給餌活動の報告が載っています。物資の送り先や、欲しいものリストもこちらで分かります)
→ http://ameblo.jp/cat-yoshida/

 

「保護猫カフェ 湘にゃ庵」ホームページ
→ http://shounyaan.wpblog.jp/

 

「湘にゃ庵」Facebookページ(赤間さんのところからやってきたパステル三毛かりんちゃんの写真も「湘にゃ庵」Facebookで見ることが出来ます)
→ https://www.facebook.com/shonyaan/?fref=photo

 

 

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☆今回の記事には有料部分はありません。この旅エッセイの第3回(12月24日掲載予定)では、アイデアニュース有料会員様向けとして「東北を一人旅するのにお勧めの宿」を紹介する予定です。

 

 

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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