2016年1月17日、あの阪神・淡路大震災から21年となるこの日、神戸市役所1・2号館前一帯で、「第21回 1.17追悼・連帯・抗議の集い」が開かれました。この集いで上演された太鼓演奏やシンガーソングライターの歌と、「借り上げ公営住宅からの追い出し問題」についての兵庫県震災復興研究センター事務局長のお話を紹介します。(この記事には有料会員限定部分はありませんが、記事の趣旨に賛同してアイデアニュースをご支援くださる方は、記事の文末から会員登録してくだされば幸いです)
この集いは、神戸の冬を支える会、在日韓国国民民主統一連合兵庫本部、日本基督教団兵庫教区、真宗大谷派(ネットワーク朋)、平和と民主主義をめざす全国交歓会、兵庫県被災者連絡会の各団体が集まって作った「1.17 追悼・連帯・抗議の集い実行委員会」(代表・河村宗治郎さん)が主催して、震災以降21年間、毎年、神戸市役所前で開いています。
■三田太鼓
まずは、冒頭の黙祷につづいて披露された「三田太鼓」の様子を、動画で紹介します。
■あいさつ
三田太鼓演奏の後、長くこの集いの実行委員長をつとめた元衆議院議員(社民党)の服部良一さんが「連帯あいさつ」を行い、借り上げ住宅問題のほか、戦争法について話をされました。
■「借り上げ公営住宅」について
今回の催しで最も強調されたのは、「借り上げ公営住宅の転居強制」問題でした。マイクを握った兵庫県震災復興研究センター(⇒ここをクリック)事務局長の出口俊一さんは、「20年という期限は法改正でなくなったのに、神戸市は追い出しをしようとしている。宝塚や伊丹市は継続入居できるのに、なぜ神戸はダメなのか、おかしいと思いませんか?」と話しました。
<以下、出口さんのお話の文字起こしです>
公営住宅というと市営住宅や県営住宅など役所が作ってみなさんに提供するものが基本だったけれども、(阪神・淡路大震災で)短い間にたくさんの住宅が必要だということで、公営住宅法という法律を変えて、民間の住宅やUR(都市再生機構)や神戸市の外郭団体である住宅供給公社の住宅を借りて、被災者に提供するという制度を導入したんです。それが「借り上げ公営住宅」です。
その当時、日本の制度の中で、賃貸借は20年を超えることができないというしばりがあったので、20年という期限が設けられたにすぎないわけです。しかし、その後、この20年というのは国会での法律の改正でなくなったんです。20年の期限はなくなったんです。だから契約だから更新したらいいんです。そうすれば借り上げ復興住宅からの追い出しと言う問題は発生しなかったんですが、2010年に神戸市が、それまでの考え方を変えて「借り上げ住宅の人は20年で出ていってくれ」という方針を決めたんです。心変わりしてしまったんです。そして、今年の1月30日に神戸市で最初の期限を迎える兵庫区の「キャナルタウンウエスト」の住宅のみなさん方に今、「30日で期限ですから出ていってください」という退去通知を出しているわけです。
しかし市役所と当事者との間の入居許可証には、期限は書いてないんです。普通の入居許可証を渡しているんです。だからキャナルタウンウエストの入居者に、通常の期限のない一般の公営住宅と同じ許可証を渡しているです。
おかしいと思いませんか? 公営住宅なんです。日本ではちゃんと公営住宅法という法律があって、それに基づいて作られた住宅なんです。たまたま早く住宅を確保せなあかんということで、民間から借りて提供したに過ぎないんです。追い出しをする必要はないのに、あたかも法律に書かれているかのように言って、追い出そうとしているんです。
同じ被災地の宝塚市と伊丹市は、市長の決断で「そのままお住みください」というふうになっています。同じ兵庫県で、神戸市に住んでいたら出ていかなあかんけれど、宝塚、あるいは伊丹市に住んでいる人は、継続入居なんです。おかしいと思いませんか。
神戸市も、85歳以上の人はかまいませんよという線引きをしました。でも84歳9カ月の人は出ていってくださいとなっている。そのことひとつを見ても、20年ということはもうないから、そういうことができるようになっているんです。おかしいと思いませんか? (後略)
■齋明寺麻里愛さんの歌
この後、阪神・淡路大震災の時は2歳だったというシンガーソングライターの齋明寺麻里愛さんがオリジナルソング「Season」「Duddy」「理(ことわり)」を披露。母親から聞いた震災当時の様子などについて話されました。
このほか、集いには以下のみなさんが出演されました。月桃の花歌舞団、バグンヘ、御影真秀とラズライクエアー、ホーリー・ホーシー、岡本民、おーまき・ちまき&はるま・げん、大城敏信、チョウ・バギ(敬称略)。
■河村宗治郎さんの言葉
実行委員会代表の河村宗治郎さんに、会場の脇でミニインタビューし、「今、いちばん思うこと」をうかがいました。その内容は以下のとおりです。
「どんな形で借り上げ復興住宅の問題を解決するか。できる限り引っ越しをしないで、落ち着いた状態のままで解決したいと思っています。そうするためにどうするかは、神戸市にしても西宮市にしても当時の状況を振り返ればいいんです。どういう状況の中で入居させていったのか。きたるべき時に引っ越しをするというようなことが決定されてなかったということが明らかになると思うんです。すると、それはしてはいけない話になるわけで、『契約の更新をしないという入居契約』を結ぶ時は、例えば公正証書を作るとかの形できちんと伝達しなければならないと法律に定められている。そういうことができていなかったということは、確かなことなんです。仮設住居を始末して早く復興住宅に移らせるために、そういうことをすっ飛ばして、『大丈夫ですよ。契約は更新しますよ』と説明しながら入れていったという、そういう事実の方がはっきりしてるんです。だからそういうことをもう一度振り返る中で、どうやったんかということになれば、そういう片づけ方をせざるをえない。そういうことになれば被災者の方も、場合によっては協力態勢をとることも可能にはなってくるわけです。頭から、そうじゃないという話ではなくなるわけですから。そういうお互いが話し合うというところを取り戻す解決方法を取りたいなあと、思ってます。それを今、一番願っています。そうでないと、せっかくの21年間が、なんにもなしになりますよね」と話していました。
■ぜんざい
会場では、震災直後の「炊き出し」を思わせる、ぜんざいの無料配布が行われ、多くの方が湯気の立ちのぼる白玉入りぜんざいで、暖をとっていました。
■フォトギャラリー(河村宗治郎さんの写真以外は撮影・橋本正人)
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