筆者は、半月ほど前にようやくスマートフォンにしたのですが、事情があってiPhoneではなくアンドロイドのスマートフォンです。だから、まだこのアプリを入れられないのがとても残念です。自身も視覚障害をもっているデンマークのハンスさん(Hans Jorgen Wibergさん)が開発した素敵なアプリ、”Be My Eyes “を紹介します。
この男性が開発者のハンスさん。目の不自由な人が味わう生活のちょっとした不便さを、軽妙に語っています。
「みなさんも目が見えないと思って想像してください。真っ暗なキッチンで、料理をしようとして、ココナツミルクが要るというとき、戸棚に3つの缶が入っていて、どれかひとつがココナツミルクなんだけど、手触りではどれがそうなのかわからない。どうする?あてずっぽうに開けてみる?いやいや、それは無謀だ。ジャケットを着て、杖を持って、お隣に出かけ、親切な人だから彼に聞くのが一番だと思いながら、ドアベルを鳴らし、どれがココナツミルクの缶かを尋ねる・・・」
たまには、それでもいいかもしれない。でも、いつもいつもそうしていては、お互いに大変だ。そうでしょ?というわけで、ハンスさんが開発したのが”Be My Eyes “です。目の不自由な人と目の見えるボランティア希望者を取り持つアプリで、このサービスに登録した視覚障害者がアプリを起動して助けが欲しいと呼び掛けると、それに気付いた世界のどこかにいるボランティアが協力するのです。マッチングがおこなわれ、ふたりはビデオでチャットします。缶詰のうちどれがココナツミルクなのかを、もしかしたら外国で、スーパーのレジの順番を待っているボランティアが教えてくれるかもしれません。目が見える人がほんの一瞬、目の不自由な人の”目になって”助ける。
ハンスさんは言います。このアプリなら、ボランティアに登録した人に頼むので、家族や友人を煩わせずにすみます。ボランティアの人は、自分のiPhoneに映る缶を見て、「左端の缶がココナツミルクですよ」と言うだけ。ほんの一瞬だけヘルプしてもらって、「ありがとう」と言って電話を切ればいい。珈琲をふるまってお礼をする必要はない。ハンスさんは、この仕組みをマイクロボランティアリングと呼びます。どこからでも参加できるし、気軽です。目が見える人がほんの少しの時間で、負担なく出来ることが目の不自由な人への大きなヘルプになる。本当に素晴らしいアイデアだと思います。
ハンスさん自身も、視野が狭いという障がいを持っていて、生まれた時には180度見えたけれど、今は5度しか視野がないのだそうです。ビデオの中でも、「まっすぐ前を見ると、ふたり、お客様が見えます。聴きにきてくれてありがとう!」と語りかけて笑いをとっていますね。デンマーク視覚障害者協会で働き、目の不自由な人を訪ねてコンサルタントをした経験から、ハンスさんは、「1日に1度か2度でいいから、目が欲しいなあ、そしたらあとはなんでも自分で出来るのに」という声を耳にします。自立して暮らしている視覚障がい者が、ほんの少しだけ助けてほしいこと。牛乳の賞味期限を読んでもらう。パソコンの操作のちょっとわからないところを教えてもらう。買い物に行ったときに、欲しい商品を説明して選んでもらう・・・家族や友人に頼むことはできるでしょうが、お互いの時間がとられ、精神的な負担が大きくなってくる。そこでこのアプリが登場したというわけです。
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