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極限状態でもなお芝居をし続ける意味とは? 「紙屋町さくらホテル」公演評

筆者: 中本 千晶 更新日: 2016年7月15日

 

こまつ座の舞台はいつも面白いけれど、今回はとくに「舞台好き」にとっては特別な思い入れができそうな一作だ。何故か? それは、この作品自体が、極限状態の中でひとつの舞台を生み出していく過程を描いているからだ。

 

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から伊勢佳世、松岡依都美、高橋和也)=撮影・田中亜紀

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から伊勢佳世、松岡依都美、高橋和也)=撮影・田中亜紀

 

だが、良く考えてみれば、観客の多くは「舞台好き」なわけだから、結局のところこの作品はほとんどの人にとって特別だということなってしまう。井上ひさしが、新国立劇場のこけら落としという記念すべきタイミングでこの作品を書き下ろしたのは、じつはそんな狙いもあったのかもしれない。

 

物語の舞台は昭和20年5月の広島だ。「紙屋町さくらホテル」に滞在する移動演劇隊「さくら隊」の面々は、本土決戦が叫ばれる中で今日も芝居の稽古を続けている。その大義名分は国威発揚である。それでも役者にとっては演じる場があることが幸せなのだ。

 

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から松角洋平、伊勢佳世、七瀬なつみ、石橋徹郎、高橋和也、神崎亜子、松岡依都美)=撮影・田中亜紀

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から松角洋平、伊勢佳世、七瀬なつみ、石橋徹郎、高橋和也、神崎亜子、松岡依都美)=撮影・田中亜紀

 

稽古で交わされる濃密なコミュニケーションの中で、にわか隊員たちの素顔が次第に明らかになり、その間にはかけがえのない仲間意識も生まれてくる。いかめしい特攻の刑事・戸倉(松角洋平)は、監視の対象であったはずの日系二世の神宮淳子(七瀬なつみ)を次第に理解するようになり、天皇陛下の密命を果たすべく薬売りに身をやつしている海軍大将・長谷川清(立川三貴)もいつしか芝居の魔法にかかってしまい、この公演を何としても成功させてやりたいと思うようになる。

 

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から立川三貴、石橋徹郎)=撮影・田中亜紀

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から立川三貴、石橋徹郎)=撮影・田中亜紀

 

一座を率いる「新劇の団十郎」こと、丸山定夫(高橋和也)のリーダーシップがとても頼もしい。ちなみに「新劇」とは「旧劇」と呼ばれた歌舞伎に対する言葉で、明治以降に西欧から入ってきた「近代リアリズム演劇」のことである。この新しい演劇のスタイルを日本に取り入れるべく奮闘した先人たちの努力も、丸山の語りからは伝わってくる。また、彼に誘われるがまま、にわか役者となった面々が見せる「大根役者ぶり」も、この作品のユーモラスな見どころだ。

 

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から神崎亜子、松角洋平、立川三貴、松岡依都美、相島一之、石橋徹郎、七瀬なつみ、伊勢佳世)=撮影・田中亜紀

『紙屋町さくらホテル』公演より(左から神崎亜子、松角洋平、立川三貴、松岡依都美、相島一之、石橋徹郎、七瀬なつみ、伊勢佳世)=撮影・田中亜紀

 

 

<こまつ座「紙屋町さくらホテル」>
【東京公演】2016年7月5日(火)〜24日(日) 新宿南口・紀伊國屋サザンシアター
http://www.komatsuza.co.jp/program/index.html#225

 

 

<関連サイト>
こまつ座 ⇒ http://www.komatsuza.co.jp/index.html
紀伊國屋サザンシアター ⇒ https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/theatre.html

 

 

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<筆者プロフィール>中本千晶(なかもと・ちあき)/フリージャーナリスト。兵庫県生まれ、山口県育ち。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルートに勤務ののち独立。舞台芸術、とりわけ宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。宝塚歌劇関係の著作に『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』『宝塚歌劇は「愛」をどう描いてきたか』(いずれも東京堂出版)など。「日経MJ」「朝日新聞デジタル」でも、舞台関連の記事を執筆中。NHK文化センター講師、早稲田大学非常勤講師。⇒中本千晶さんの記事一覧は、こちら

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