不思議なご縁のある人には、いつか必ず巡りあえるもの。「こんともちゃん」にも、いつかきっと会えると思っていましたが、予想より早くお話することが出来ました。こんともちゃんこと林智子さん。「あ~ちゃん」の大好きな母ちゃん。今日紹介する本「あ~ちゃんの虹」の作者です。今もあ~ちゃんと一緒に虹の種を蒔いているこんともちゃんに、会えました。
「あ~ちゃんの虹」という本のタイトルや、「あ~ちゃん」という名前、あ~ちゃんのお母さんの「こんともちゃん」のことを、いろいろなところで目にしていました。かっこちゃんの「白雪姫プロジェクト」のページでも紹介されている”smileあーちゃん物語”は、明音(あかね)ちゃんが生まれて精一杯生きていた時から始まって、今もあ~ちゃんは大切なことを教えてくれていると書き綴っている、こんともちゃんのブログです。時々それをちらっと読んでいたはいたのですが、読書好きの私がなかなか手に取れなかった「あ~ちゃんの虹」。泣いてしまうに決まっているし、正直に言うと、義父母の介護でいっぱいいっぱいだったときには「小さな子どもさんが亡くなった記録を読むのは辛すぎる」と思っていたのです。
でも、2013年1月に義母が、2015年4月に義父が亡くなってから、胸の中にぽっかりと穴が開きました。時間も少し自由になりました。今なら、会いたいと思っていた人や、行きたいと思っていたところに行けるんだなあと思ったとき、心に浮かんできた名前のひとつが、「こんともちゃん」だったのです。
あ~ちゃんが生まれたのは、2005年10月18日、午前零時8分。空一面が真っ赤だった夕暮れから、丸いお月様にバトンタッチした秋の夜に生まれた女の子です。筆者は10月17日生まれなので、あと10分ほど早く、あ~ちゃんがこの世に「こんにちは」って言ってたら同じ誕生日でした。一緒じゃなくても、お隣の日の誕生日でも、うれしいよ、あ~ちゃん。
あ~ちゃんが天国に住所を移したのが、2011年12月4日午後3時9分。この日は2015年4月に天国に旅立った筆者の義父の誕生日です。脊髄損傷で不自由な体でしたが、寝たきりになってからも笑顔をいっぱい見せて、命を全うしていった義父は、空の上でこの可愛らしい女の子に、もう会えたでしょうか・・・
「あ~ちゃんの虹」は、文芸社という出版社から2013年に発行されました。「総動脈幹遺残」という重い先天性の心疾患を抱えて生まれてきて、小さな体で手術に耐え、何度も危機を乗り越えている娘さんのあ~ちゃんこと明音ちゃん。「あ~ちゃんの本を書きませんか?」とこんともちゃんが出版社の人に声をかけられたのが、2011年の11月。明音ちゃんに「母ちゃん、明音の本を書いてもいいか?」と聞いたら、あ~ちゃんは満面の笑みを返してくれたのだそうです。そうして書き始められた本でしたが、12月にあ~ちゃんはお空にかえっていきました。まだ第1章も書き終えていない、本当に突然の出来事でした。当然、本のことはすっかり忘れ去られて、こんともちゃんの家族が生々しい悲しみの中で時がとまったような日々を過ごしていた頃、再び文芸社の方から連絡。こんともちゃんは、「明音のことが書けるのは世の中で私だけ。この6年間をずっと一緒に過ごして、明音を見つめてきた私だけ」、そんな思いで、もう一度書き始めます。突然お空にかえったあ~ちゃんのように、自分だって必ず明日を迎えられる保証はないんだと気づいたこんともちゃん。何が起きるかわからないから、今日のこの一日を命いっぱいに生きよう、あ~ちゃんの本を書こうと決めたのです。
心疾患からあ~ちゃんは、脳出血、水頭症、脳性麻痺と、様々な病気やしょうがいを抱えます。それこそ命の危機と言われるような場面を何度も何度も迎え、絶望的な宣告を受けながらも、生きることを決してあきらめなかったあ~ちゃん。
呼吸すること
おしっこすること
目を開けること
手足を動かすこと
涙を流すこと
痛みを感じること
生きること
みんなが当たり前のことだと思っているひとつひとつが、どんなに素晴らしい奇跡のようなことなのか、あ~ちゃんが教えてくれます。どんなに辛いことのなかにも希望の光がさしてくるよとあ~ちゃんが教えてくれます。
あ~ちゃんは、どんなに絶望的な診断がおりても、辛くても苦しくても、決して生きることをあきらめませんでした。そんな日々が、第一章の「月の章」から「花の章」、「太陽の章」とつづられていきます。こんともちゃんの、優しいけれど、しっかりとした分かりやすい文章で、私たち読者は、あ~ちゃんの命いっぱい生きた日々を、一緒に生きることが出来ます。本のページを開けば、笑顔でいろんなことにチャレンジしていったあ~ちゃんの日々を、もう一度たどることが出来ます。目も開けられないかもしれないと言われたあ~ちゃんは、可愛いおめめをちゃんと開けたし、手足も少し動かすことが出来たし、表情は出ないでしょうと言われたのに、満面の笑顔を何度も見せてくれた。言葉は話せなかったけど、母ちゃんの胸に、ことんと頭をあずけて「おはよう」「大好き」と伝えられたし、お口に左手を充てる仕草で「もう結構です」と伝えられることも出来た。声を出して笑えたし、号泣だってできたんだよね、あ~ちゃん。
そして「虹の章」にたどり着くと、筆者はページをめくるのをゆっくりゆっくりにしました。あ~ちゃんが亡くなった後、何度も空に虹を見ているという、こんともちゃんとご家族の話をブログで読んでいたので、「虹の章 ~ありがとうと大きな七色の虹をかけて~」という章題に、もう涙が先回りしているのでした。でも、こんともちゃんの文章はむしろ冷静で、とても穏やかで、あ~ちゃんがお空にかえっていった部分も、淡雪のようにすっと心にしみわたっていったのです。
「明音が亡くなったところはあっさり書いたよ」とこんともちゃんは話してくれました。他の人がどう思うかわからないし、後で自分がどう感じるかもわからないけど、事実だけを淡々と書きたかったと。「もちろんいろんなことがあったけど、亡くなってしまった時の状況にこだわるのじゃなくて、大事なのは、明音の残したメッセージを伝えるってことだったからね」。
お星様になった明音~~「あ~ちゃんの虹」より
2011年12月4日 15時9分 明音はお星様になりました
空に大きな 七色の虹をかけて
生まれてからずっと 背負う痛みや苦しみも 誰といつどこで出逢うのかも 全部自分で決めてきた子です
最期の時も明音が自分で決めたこと ちゃんと最期は 私に抱っこさせてくれて 日曜日を選んで 父ちゃんに見守らせてくれて 本当にどこまでも親孝行な 優しい娘でした
~~中略~~~
そして今わかることは 私たちがどんなに辛いことも 乗り切れる強さを身につけるまで 6年かけて 明音が育ててくれたということ 私たちを支えてくれる たくさんの方と出逢わせてくれていたことです
明音には感謝してもしきれません
私は明音の残してくれた大切なものを語り続けていきます 伝え続けていきます
「あ~ちゃんの虹」は、最初は自費出版の「私家版」として、あ~ちゃんが生きた証しを残したい、あ~ちゃんを知っていた人たちに読んでもらいたいと思って書き始められました。でも、あ~ちゃんが亡くなってから、こんともちゃんは自費出版の「流通版」として世の中に出すことを決心します。Amazonをはじめ通販サイトで購入できて、書店に置いてもらえたり店頭注文してもらえるのが「流通版」。あ~ちゃんを直接知らない人にも、この本を手に取ってもらいたい。あ~ちゃんのメッセージを、たくさんの人に伝えたいと思ったからなのです。2013年2月に初版。2015年7月現在3刷になり、およそ3000部が日本のあらゆるところに「お出かけ」しています。
あ~ちゃんが大好きだったお出かけ。本当は母ちゃんや父ちゃんやじ~ちゃんやば~ちゃんやお友だちみんなと、もっとお外に出るはずだったあ~ちゃん。2236日の人生のうち974日を病院で過ごしたあ~ちゃんは、今、虹になり、大空を自由に駆け巡っています。行きたいところに行き、会いたい人に会っていることでしょう。日本だけではなく、本を読んだ海外の人も、空に虹を見たら、「あ、明音ちゃんがここに来てる」とこんともちゃんに連絡をくれるのだそうです。でも夜にはあ~ちゃんはお家に戻ってきて、母ちゃんの寝顔を確認しているはず。母ちゃんと父ちゃんがちゃんと食べて、眠って、元気にしているかどうかをきっと見に来ていると思うのです。優しい、親孝行なあ~ちゃんですから。
なんで虹だったんだろう・・・こんともちゃんは思います。2011年、あ~ちゃんは入園した「こども園」で、「にじ組」になりました。亡くなった日には朝から大きな虹が何度も空にかかっていました。納骨の日も、誕生日も命日も、虹が出ていた・・・雨の後に出る虹は、どんな悲しいことのあとにも、ちゃんと希望が生まれるよという明音ちゃんのメッセージなのかなと話すこんともちゃん。「すごく壮大なメッセージだよね。でも明音ならやりかねん」と笑います。今日もあ~ちゃんはステッキを握り、さっと振って空にキラキラ七色の虹をかける。「昔、私はそんなことを信じるタイプじゃなかった」とこんともちゃん。でも、あまりにも何度も、何度も、ここっていう時に空に虹が出る。あれは明音やなって素直に思えたし、みんなも「あ~ちゃんの虹や」と言ってくれて、だから信じたいし、それが「真実」なんだと思うよと話してくれました。
筆者も、大切な日に天気予報は雨だったのに青空が見えると、「晴れ男だったお義父さんが頑張ったんだなあ」と思うし、ツバメが3度もヒナをかえしている最寄り駅では、鳥や虫や花を撮るのが大好きだった義母が、「ここに巣をかけてくれたら写真が撮りやすいから」って親ツバメに勧めたんじゃないかと思います。そう信じたいし、そう思うと心は軽く、明るくなる。だからそれは、筆者にとっての「真実」なのかなと思うのです。
本が出来上がって、出版記念の集まりで話をしたこんともちゃんは、それをきっかけに少しずつ、あ~ちゃんのことを伝える講演会をするようになりました。小学校の先生をしていたこんともちゃん。小学生から中学生くらいの子どもたちを対象に授業の一環として話すこともあるそうです。大人の人を対象にしたお話もしています。あ~ちゃんの写真をスライドで見せて、「あ~ちゃんの虹」の中から大切な言葉を伝えてくれる”林先生”のお話は、大変好評で、口コミで多くの人々から依頼がくるようになりました。
「私は、演劇とかミュージカルをやっていたこともあって、ステージでスポットライトを浴びるみたいに、表舞台で頑張っている人や子どもたちをたくさん見てきた」とこんともちゃんが言いました。「でも、明音が生まれて、日の当たる場所にいるから偉いとか、輝いているっていうんじゃないことがはっきりわかったよ」「どんな命も、一生懸命生きている命は、みんな輝いている」そう思えたのは明音のおかげとこんともちゃんは言うのです。
「 講演会で今、一番伝えたいことがあるよ」、こんんともちゃんが真剣な表情で話してくれました。本に書いていることももちろん伝えたいんだけど、何回も明音のことを話しているうちに、くっきり見えてきたことがあると。
「命が大事ってことは、あなたが大事ってことだよ」 って伝えたいんよ。こんともちゃんは言います。
「自分のことを好きになれなくて、自分のことを大事にできない子どもたちがたくさんいるって学校の先生方から聞くと、それは、誰かにつけられたバッテンがついたままになっているのかなあと思う。こんな点数しか取れないの、あかん子やなあ、こんなことも出来ないの、ダメな子やなあって、大人に言われて自分に×をつけたままになってる。でも、この世に生まれた命の中に、ダメな子とか要らない子はひとりもいないよ、みんなかけがえのない命だよ」
「競争社会で、子どもも大人も、点数や、順位や、学歴や、周りの評価に左右されてこの人は偉いとか自分はダメとか思ってるけど、そんな目に見える部分だけがあなたの価値じゃないよ」 って伝えたいんよ。 テストの点数は、目安とか目標にはなるけど、それがすべての価値を決めるんじゃないよって、小学生にも分かるような言葉で伝えていきたいよと、こんともちゃんは話してくれました。
学校で、会社で、家庭で、「あ~あ、今日も面白いことなかったなあ」とか、「疲れたなあ、つまんないなあ」なんて、私たちが、当たり前と思って生きている今日は、あ~ちゃんや、他にもたくさんのお空に帰っていった小さな命が生きたかった今日。心から見たかった今日なのです。生きていることが、奇跡のような贈り物なんだと気が付いたら、どうか空を見上げてください。あ~ちゃんが、魔法のステッキを振って空に七色の虹をかけているところかもしれません。
宝物のようだった愛するわが子を失う。それは、どんなに想像をしようとしても想像の及ばない悲しみです。ノートを読み返し、山のような写真やビデオを見直してこの本を書いたこんともちゃんは、一歩も外に出たくないと思う日も、心が折れて素直に人の言葉が聞けない日もあるけど、やっぱり伝えたい。明音ちゃんが命がけで残していったものを伝えたいと立ち上がりました。あ~ちゃんと一緒に虹の種をみんなの心に届けるために。虹の結晶のように、何度開いても、どこを読み返しても、愛と光が静かにこぼれ出る本、「あ~ちゃんの虹」、どうぞ、手に取ってください。たくさんの人の心に、明音ちゃんの虹がかかりますように。
「あ~ちゃんの虹」はFacebookページがあります。あ~ちゃんとこんともちゃんの、まだまだ続く命のメッセージを読んでみてください。
Facebookページ「あ~ちゃんの虹」→ www.facebook.com/a.chan.no.niji
こんともちゃんにお話ししてもらいたいなあという方は、下記のアドレスまでご連絡ください。講演会「今日一日を命いっぱい」(各種校園等、30分~1時間)
Mail:a.chan.no.niji☆gmail.com (☆の部分は@に変えてください)
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アイデアニュース有料会員向け【おまけ的小文】 こんともちゃんに教えてもらったとおり、今日伝えたい言葉が言えました(松中みどり)
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