「命を捜す」捜索災害救助犬、阪神救助犬協会代表・相良順子さんに聞く(上) | アイデアニュース

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「命を捜す」捜索災害救助犬、阪神救助犬協会代表・相良順子さんに聞く(上)

筆者: 松中みどり 更新日: 2018年10月3日

阪神救助犬協会の代表で、捜索災害救助犬ハンドラーの相良順子さんにお話を聞いてきました。その間、ずっと一緒にいたのは12歳のミモザさんと4歳のヌータウ君、「平成30年7月西日本豪雨」でも広島に出動したラブラドール・レトリーバーです。日本ではまだ認知度が低い救助犬について、2回にわたってお伝えします。

全国救護活動研究会の第47回ベーシックコースでレスキューに関わる人たちと一緒に訓練中のミモザさんとヌータウ君=写真提供・相良順子さん

全国救護活動研究会の第47回ベーシックコースでレスキューに関わる人たちと一緒に訓練中のミモザさんとヌータウ君=写真提供・相良順子さん

小さい頃から犬と一緒に生きてきたとおっしゃる相良順子さん、かたわらにはいつも犬がいたそうです。大好きな犬たちが、世の中の役に立てないだろうか。そう考えていた1995年、阪神淡路大震災が起きました。海外からやってきた捜索災害救助犬が瓦礫の中で活動する姿を見て、「日本でもこうした犬を育てよう、それが自分の使命だ」と決意したのだそうです。愛犬を、「命を捜すことができる犬」として訓練・育成し、一旦災害が起きた時には万難を排して駆けつける。そんな相良さんと犬たちの日々が始まりました。

下の動画は、2018年7月、相良さんが広島市安芸区矢野東に救援に入った時の様子です。(動画提供・相良順子さん)

「流された高校生を探して欲しい」と知り合いから連絡を受けた相良さん。被害が大きかった広島市安芸区矢野東に到着したのは7月10日だったそうです。

――連絡が入って、すぐ駆けつけられたんですね。

今回の現場には、私のサポートをして下さる人が必要で、岡山の訓練所の先生が来て下さることになったんです。プロの訓練士は、出向く際、行政とか公の機関からの要請と言うか、書類が必要ということでした。私とミモザ、ヌータウは、そういうものがなくても行くんですけれどね。「目の前で人が流されている時に書類が要るのか」という現場の気持ちも、プロとして地区でも自治会からでもいいから公式の要請を出して欲しいという事情もわかります。いずれにしても、捜索災害救助犬が出動する時の態勢に関して、日本はまだまだ遅れています。

――今回は何日くらい、現場にいらしたんですか?

車中泊を含めて2泊3日ですね。私たちは、地元の方たちが避難されている避難所で食事をいただくわけにはいかないですから、食料も水も全部持って、車の中で寝泊まりするんです。もう2~3泊して捜索したかったんですが、異常に暑かったこと、安芸区矢野東に水があふれてきそうで、再び避難しなければ危ないという状況になってしまったことなどがあって、帰宅しました。

――その高校生は見つかったのでしょうか?

はい。私たちが見つけることは出来なかったのですが。というのも、地域の方が、「きっとこの辺りにいるはずだから、ここから探して」と場所を先に指定されたんですね。でも、結局ご遺体が見つかったのはお家の近くでした。遠くまで流されたはずという思いこみがあったんですね。お家のあたりはひどい状況でしたけど、やっぱり犬の鼻を信じて、お家の近くから捜索を始めるべきだったと思います。犬は体液に反応しますから。

――高校生の持ち物のにおいを先に嗅いでおいて、探すわけですか?

いえ、それは警察犬ですね。この子たちは捜索災害救助犬なんで、持ち物は必要ないんです。空気中の浮遊臭で人を探すんです。

――あ、そうでした!にわか勉強ですが「浮遊臭」という言葉をメモしたんです。それは、特定の個人を探すのではなく、「ここに誰かがいるよ」とハンドラーに教えるために救助犬が追うにおいなんですね。

そうです、そうです。この犬たちは、「ここに人がいる」ということを教える訓練を受けているんですね。この前の広島でも、犬たちがウロウロして反応する場所がありました。消防や警察の方に聞くと、ご遺体があった場所だということでした。ただ、この子たちは、生きている人を探す訓練を受けた犬で、遺体捜索犬ではないんですね。そこがちょっと辛いところなんです。もう少し迅速に犬と私が現場に入れたら、生きている方を捜せる確率が上がると思うのです。ミモザもヌータウも人間が大好きで、捜しだすことが出来たら、その人がご褒美をくれる、遊んでくれると思っています。そんな訓練を受けて、成功体験を積んできた犬たちなんです。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、相良順子さんとミモザさん、ヌータウ君のくつろいだ様子、普段の訓練、日常の活動などを紹介しています。10月4日掲載予定の(下)では、捜索災害救助犬の活動は今後どうなっていくのがいいのか、日本ではまだ認知度の低い現状を打破しようと奮闘されている部分をお伝えします。

<有料会員限定部分の小見出し>

ミモザさんとヌータウ君、性格と特性を生かして

日々の暮らしの中で出来ること

<捜索災害救助犬応援バザーのお知らせ>
相良順子さんの活動資金となる大切な行事、秋のバザーが開かれます。阪急逆瀬川駅東口から徒歩2分の相良さん宅ガレージでのバザーです。ふるってご参加ください。
◎日時 2018年11月3日(土)朝10時~
◎場所 宝塚市野上1-2-7 (阪急逆瀬川駅東口から高架のトンネルをくぐってすぐ)
◎みなさんから寄付された雑貨、衣料品、食品など掘り出し物がたくさんあります。
捜索災害救助犬の活動が分かるパネルも展示されます。もちろん、ミモザさん、ヌータウくん、ミスジェロニモちゃんに会えます。ぜひ遊びにいらして下さい!

2016年の捜索災害救助犬応援バザーより=写真提供・相良順子さん

2016年の捜索災害救助犬応援バザーより=写真提供・相良順子さん

<関連サイト>
阪神救助犬協会
http://hanshin-rescuedog.org/
わんわんパトロール – チーム・ステファン
https://teamstefan.ironmannet.com/03.htm
阪神救助犬協会|捜索災害救助犬育成・わんわんパトロール『チームステファン』
Facebookページ

<※用語解説>

1.捜索災害救助犬 search and rescue dog
『捜索災害救助犬は、瓦礫に埋もれ苦しむ命を発見し私たちに伝えます。そして、次のステップとして、瓦礫から尊い命を救いだし、適切なアドバイスと加療を施すことによって一つの命を救うことができるのです』相良順子さんが書かれた言葉です。盲導犬や警察犬などのいわゆる職業犬の種類のひとつです。

2.ハンドラー   handler
イヌを調教する人、また、イヌの任務遂行を支援する人。そのような役割を担う専門家の通称として使われる。特別な資格制度はなく、調教師や訓練士が兼務していることが多い。~中略~アニマルセラピー(動物介在療法)では、コンパニオンアニマルに付き添って、病院や高齢者施設などを訪問する人をハンドラーとよんでおり、多くはセラピストや看護師が携わっている。ショーやコンテストに出場するショードッグのハンドラーについては、ジャパンケネルクラブが資格制度を設けている。日本大百科全書(ニッポニカ)より

3. オーナーハンドラー owner handler
上記のハンドラーとしての活動を、自分の犬を使っておこなっている人を指す言葉。ミモザさんやヌータウ君と一緒に暮す相良順子さんは「オーナーハンドラー」というわけです。

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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