2023年7月8日(土)から7月16日(日)まで、7月22日(土)から7月30日(日)まで、東京・日本青年館ホールで上演される『シュレック・ザ・ミュージカル』フルバージョン公演に、シュレック役で出演するspiさんのインタビュー後編です。無料部分では合同取材の内容を、有料部分ではアイデアニュース独自取材の内容を紹介します。「下」の無料部分では、トライアウト公演でシュレック役を演じる中で役に共感したこと、苦労したところ、カンパニーの印象、岸本功喜さんの演出は作り方がご自身と一緒でやりやすかったというお話と、お客様へのメッセージを紹介します。有料部分では、『ドリームガールズ』でディナ役を演じていた望海風斗さんの歌い方・歌声の魅力、ディナとカーティスのデュエットで互いに調整しながら「言葉をしっかり聴かせる」ことができていたというお話、それぞれの作品と「コラボレーション」している感覚だというお話などを紹介します。
ーートライアウト公演でシュレックという役を演じる中で、役に共感したことなどはありましたか?
頭からバチッとハマっていたので、これがより深まることも、減ることもなく、そのまんまです。等身大なので、逆にこれが深まると、面白くなくなると思います。なんか難しく考えすぎてもダメだし。そもそも、シュレックは俺のものじゃなくて、お客さんのものだから。俺がどうこう深めたところで、ひとりよがりになってしまうから、変わらず、考えすぎず、楽しもうかな!という感じですね。
ーー役作りでは、2.5次元作品とはまた違う感覚でしたか?
2.5次元作品だと、「原作ありき」で「原作に忠実に」みたいな話はよく出てくると思うんです。僕は以前、とんでもなく解釈違いを起こしまくって、炎上しかけているので、そういうのって、なくていいかなっていうところもあります。「舞台は舞台のシュレックですよ」というところで、落ち着いているというか。2.5次元作品でも、僕はそういう感覚です。もちろん、インスピレーションを原作からいただくことはありますけれども、できるだけ、「舞台の」というところでやらせてもらっている感じではあります。
ーートライアルの公演中や稽古中などに、苦労したところや難しかったっところはありましたか?
オーケストラっぽいけれども、実はカラオケだったんですね。それに合わせるのが大変でした。例えば、オナラの間隔が決まっていたりとか。
(一同笑)
動きに合わせての音楽ではないので、カラオケの音に合わせて、(福田)えりさんと一緒に、すごい真剣にオナラを聴くっていう。そういうことはありましたね。
ーーそのあたりは、今回生音になることで解消されそうですか?
解消されるんじゃないでしょうか。もちろん、指揮の方とのコンビネーションにはなりますけど。前回のカラオケも、すごく血の通っているいいカラオケだったので、今回はより、自分たちの心拍数や血の通った空間になるんじゃないかなと思います。でも逆に、間延びせずというか。テンポの良さや飽きさせない空間を、自分たちの手でやらなくちゃいけないので、そこは大変かもしれないなと思います。岸本さんと相談しながらですね。
ーーキャストの中にも子役さんが増えますが、コミュニケーションの点で、何か考えていることはありますか?
特にはないですね。みんなすごいまじめだから。俺より遥かにまじめですし、ちゃんとしてるから、大丈夫だなって思っています。元気溌剌にやってほしいかなあと。トリプルキャストなのでストレスをかけちゃうかもしれないんですけど、一緒に楽しんでやっていけたらなと思っています。
ーー今回フルバージョンになり、こんなシーンができるとか、物語がこうなるとか、その辺りの変化について伺えますか?
今把握している範囲だと、まず、ドラゴンの城から逃げるシーンが長くなっていろんなことが起きます。ドラゴンの城に行くまでも、ドンキーの曲も、もうちょっと長くなります。前回はかなりカットになっていましたが、三重唱も二倍になります。あとは、2幕の冒頭の、フィオナのタップの曲。そして、フィオナを王様に渡して勘違いの末、「やっぱり俺は一人で生きていくんだ」とシュレックが決断するシーンに、“Build a wall”というソロ曲が1曲増えています。
ーー曲が増えるんですね。
曲は、全体的に増えます! 大枠は一緒なんですけど、描写がもっと深くなる感じですかね。
ーー物語のシーンが、より長く細かく描かれる感じでしょうか。
そうです。トライアウトでは多分、後半が駆け足になっていて。飛んでいって終わりみたいなところがもう少し描かれます。シュレックがフィオナに、「やっぱり僕が間違っていて君と一緒にいたいんだ」という曲がまるまる1曲しっかりとあるので、突然フィオナが決心してやっぱりシュレックのところに戻るみたいな感じにはならないです。
ーー演じる側としては、より表現は細かくグラデーションもある感じになりますか?
そうですね、無理なく、飛躍なくいけるはずです。全体的にわかりやすくなるはずです。
ーーオーディションで選ばれた、結束力を感じるカンパニーかと思うのですが、spiさん的にはどんな印象ですか?
実力で、引き出しの多さなどで選ばれている人が多いという印象ですね。岸本さんの選び方だと思いますが、最初は、そこまでできていなくていいんですよ。オーダーを出した時に、そのオーダーへの返しがハマるかどうか、コミュニケーションがとれるかどうかをすごく大事にしているのだと感じます。
ーー実際に稽古される中でも、対応力であったり、繋がり合う感覚みたいなものは感じますか?
話が早いです。見せたいものが「これですよ」って言ったら、みんなそれに向かって自分から動いて、「じゃあこうしましょう」という案をぼこぼこ出してくれるんです。岸本さんも作りやすいと思います。
ーーオーディションから本番までタイトなスケジュールでしたが、それを乗り越えられたのは、カンパニーの適応力でしょうか?
そうですね。このカンパニーだからこそだと思います。今回も、初めての方もいっぱいいらっしゃいますけど、全然大丈夫だと思っています。岸本さんに、腕がありますし。
ーー岸本さんの演出で印象に残っていることはありますか?
岸本さんと僕は、作り方が一緒というか。なので、とんでもなくやりやすいです。いろいろな俳優がいると思うんです。まずは気持ちでひとまず動いてみて、演出家がその姿を見て、調整しながらという進め方が普通らしいのですが、僕は、まず立ち位置を決めないとできないんです。観る人のためにやっているから、やっている側がどう動きたいかは、あんまり関係ないのでは?と思っていて。
演出の段階から、僕も一緒に見ながら、「このセリフでこっちにいてほしいな、この歌のこの節ではここにいて、ここでは前を向いてほしい」というのを、お客さん目線で、まず頭の中で描くんです。それを再現すると、岸本さんも「あ、その通りです」となったので、そこがハマるのが僕としてはすごくやりやすいんです。
「もうちょっと感情に任せて動いてみて」とか言われると、「うーん」ってなっちゃう。「それだったら(客席に)降りるよ。好き勝手やっていいんだったら、ハケるぜ俺」って。そういうところのすり合わせがうまくいったのがよかったですね。だから、すごく速かったです。
ーー皆さんへ、メッセージをお願いします。
お子さんがいらっしゃる方へは、ぜひ連れてきてください。ぐずっても全然大丈夫です。大人の方へは、ハブられた経験があるとか、自分って周りと違ってはみ出しているところもあるんだよな、社会にハマらないなという瞬間がある人に向けて作られているところもある作品なんですよ。もちろん、王道ラブロマンスだったりもしますし、ちょっと皮肉もあります。いろんな人にいろんな方向で刺さる作品だと思っています。最高の夏休みの思い出になると思うので、観に来てほしいなと思います。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、『ドリームガールズ』でディナ役を演じていた望海風斗さんの歌い方・歌声の魅力、ディナとカーティスのデュエットで互いに調整しながら「言葉をしっかり聴かせる」ことができていたというお話、それぞれの作品と「コラボレーション」している感覚だというお話などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■パワーと魔力とスピーチ力がある望海風斗さんの歌声。一つの言葉に様々なニュアンス
■望海さんとは、お互いに聴かせたい単語を立てたり、相手の歌詞を立てたりができた
■相手の歌詞を立てたりという歌い方には、技術も作品全体を俯瞰することも必要
■作品はどれも、現場の人とのコラボレーション。みんなとの化学反応に頼っている
<『シュレック・ザ・ミュージカル』フルバージョン公演>
【東京公演】2023年7月8日(土)~7月16日(日)、7月22日(土)~7月30日(日) 日本青年館ホール
公式サイト
https://www.shrek-musical.jp/index.html
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インタビューでspiくんと岸本さんの作品の作り方の考え方が素敵だなと思いました。
あと全部のお写真が素敵すぎる😍ありがとうございました!