原作世界を見事に再現、“よく知る登場人物”に再会したようなミュージカル「王家の紋章」 | アイデアニュース

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原作世界を見事に再現、“よく知る登場人物”に再会したようなミュージカル「王家の紋章」

筆者: 達花和月 更新日: 2016年9月22日

累計4000万部発行の歴史大作少女漫画「王家の紋章」が初めてミュージカル化され、2016年8月3日から8月27日まで、帝国劇場で上演されました。この公演のチケットは全日程が即日完売。絶大な人気を受けて、再演が2017年4月から5月にかけて帝国劇場と大阪の梅田芸術劇場メインホールで実施されることが決まりました。ここでは、熱気にあふれた8月のミュージカル「王家の紋章」の公演の様子をご紹介します。(※アイデアニュース編集部より:この舞台にメンフィス役で主演された浦井健治さんのインタビュー記事を、アイデアニュースに掲載します。王家の紋章の話はもちろん、目前に迫ったコンサートやデビュー15周年について、たっぷりうかがったお話を「上」「下」2回にわけて掲載します。「上」は9月23日、「下」は9月25日に公開し、抽選で有料会員3人に浦井さんのサイン色紙と写真をプレゼントします。ご期待ください)

ミュージカル「王家の紋章」公演より=写真提供:東宝演劇部

ミュージカル「王家の紋章」公演より=写真提供:東宝演劇部

「王家の紋章」といえば、細川智栄子 あんど芙~みん両先生著作の少女漫画。1976年に秋田書店発行「月刊プリンセス」で連載を開始し、今も絶賛連載中。今年は連載40周年にあたり、これまでに発行されたコミックスは61巻、累計発行部数4000万部を誇る、少女漫画界の金字塔的名作です。これ程世に知られた作品でありながら、今までアニメ化はおろか実写化もされず、今回初めてミュージカル化されるということで、私も小学生時代に作品の洗礼を受けた一人として、第一報を聞いて以来、あの超大作の何をどこまでどう表現?!と興味深々で観劇しました。

ワールドプレミアとなる今作のスタッフには、作曲・編曲に「エリザベート」、「モーツァルト!」などの作品で日本でもすっかりお馴染みの、ウィーンミュージカルの巨匠、シルヴェスター・リーヴァイさんを迎え、脚本・作詞・演出に宝塚歌劇団出身の演出家、荻田浩一さん。美術に二村周作さん。衣装に前田文子さんという布陣。そして気になるストーリーは、コミックスの4巻までを取り上げています。

■ターコイズ、コバルトブルー、染み入るような波の音、古代エジプトに紛れ込んだような心地

開演前の劇場内でまず目に飛び込んでくるのは、やわらかな碧い色調の照明に淡く照らし出された舞台。その上方にはターコイズとコバルトブルーの色合いも美しい、古代エジプトの遺跡から掘り出され、少し朽ちてしまった胸飾りを連想させる吊り物。波に揺らめき煌めくような、観客席を照らし出すやわらかな青と白の光。耳を澄ますと染み入るように聞こえてくる波の音。まるで水の中の世界でゆらゆら揺られながらまどろむような、不思議に美しい空間がそこに広がっていました。公式パンフレットに掲載された美術の二村さんのお話によれば、「ナイル河の水」が美術の大きなコンセプトなのだそう。

ミュージカル「王家の紋章」公演より=写真提供:東宝演劇部

ミュージカル「王家の紋章」公演より=写真提供:東宝演劇部

舞台の両袖には、ヒエログリフが装飾された黒っぽい壁のセット。ナイルの水を意識してか、その断面は鮮やかに青く、壁面の暗色とのコントラストがキリリと美しく舞台を引き締めています。更にその左右外側には、オベリスクにも見える、白が基調の双柱が並び立ち、まるで自分自身が古代エジプトの世界に紛れ込み、巨大な建造物を見上げているような心地。

やがて開演時間となり、若林裕治さん指揮のオーケストラが紡ぎだした音楽は、世界を支配していた朝靄が徐々に晴れ、やがて明るい太陽が昇っていくようなイメージで静謐にして繊細。音楽の醸し出す世界に同調して、それまで舞台を彩っていた碧の世界は去り、遠くにピラミッドを臨む、鮮らかなオレンジ色の暁の空を頂く風景が出現。そこに、はるか悠久の古代へと観客をいざなうように、古代エジプトの王(ファラオ)メンフィスの姿が現れて去り、再び場面は一転して、巨大な力を連想させる、重厚な音楽と低音のコーラスが重々しく響き渡り、古代エジプトの人々と黒いフードを頭からすっぽりと纏った、女王アイシスが登場。いよいよ壮大な物語が始まりました。

■エジプトに留学中の考古学が大好きな少女キャロルは、三千年前の古代エジプトへとタイムスリップし…

ここで、今回のあらすじをざっくりとご紹介しますと・・・

アメリカ人富豪リードコンツェルン令妹のキャロル・リード(新妻聖子さん/宮澤佐江さん Wキャスト)はエジプトへ留学中の考古学が大好きな元気で明るいバイタリティある少女。リードコンツェルン総帥の優しい兄ライアン(伊礼彼方さん)の庇護の下、大好きな考古学に没頭する生活をしています。リードコンツェルンが出資するエジプトの遺跡の発掘現場で未盗掘の墓が発見され、その玄室を開く瞬間に立ち会っていた彼女は、墓に埋葬されていたファラオの姉、現代に蘇った女王アイシス(濱田めぐみさん)によって、弟の墓を暴いた者として”王家の呪い”を受け、三千年前の古代エジプトへとタイムスリップしてしまいます。忽然と姿を消した妹、キャロルをライアンは必死で探し続けます。

1人古代エジプトへ迷い込んだキャロルは、奴隷の少年セチ(工藤広夢さん)とその母セフォラに助けられ、そこで即位したばかりの時のファラオ、メンフィス(浦井健治さん)と出会います。金の髪と透けるような白い肌を持つ彼女を、”珍しい娘”として気に入ったメンフィスは、彼女を着飾らせ、奴隷として宮殿に軟禁します。

ミュージカル「王家の紋章」公演より=写真提供:東宝演劇部

ミュージカル「王家の紋章」公演より=写真提供:東宝演劇部

キャロルは、そこで王の姉、下エジプトの女王アイシス、エジプトの賢者にして宰相イムホテップ(山口祐一郎さん)、メンフィスの乳母で女官長のナフテラ(出雲綾さん)その子息であり、王の信頼厚い側近ミヌーエ将軍(川口竜也さん)王に忠誠を誓う武官ウナス(小暮真一郎さん)等と出会います。

さらには客人として滞在中の、隣国ヒッタイトの王女ミタムン(愛加あゆさん)。彼女はメンフィスの男ぶりに心惹かれ、エジプト王妃となることを強く望みます。そして水面下ではミタムン王女の兄、ヒッタイトの王子イズミル(宮野真守さん/平方元基さん Wキャスト)と配下のルカ(矢田悠祐さん)が隠密裏にエジプトを訪問しており、今は同盟国であるエジプトをいずれは攻め滅ぼさんとして諜報活動をしていました。

当時のエジプトでは、王家の血の純粋性を護るために、兄妹、親子間の近親婚が通例で、幼い頃から弟メンフィスを愛してきたアイシスは、メンフィスに懸想したミタムン王女を邪魔に思い、秘密裏に王女を落としいれ、焼き殺してしまいます。

一方、メンフィスとキャロルは、互いの育った時代と文化が異なることによる価値観の違いから反発と衝突を繰り返しますが、徐々に二人の距離は縮まり惹かれあっていきます。キャロルは”21世紀の人間”として持つ知識のために、未来を語り、奇跡を起こす『ナイルの女神ハピの生みし黄金の娘』として、メンフィスの側近達だけでなく、エジプトの民からも絶大な信頼を得るようになっていきます。

妹ミタムン王女がエジプト滞在中に暗殺されたと察したイズミル王子は、その復讐のために、メンフィス王の弱点としてキャロルをヒッタイトへ連れ去ります。彼女を妃にと望んでいたメンフィスは激怒し、キャロル奪還のために、ヒッタイトとの戦端が開かれて・・・。

漫画や小説の作品がアニメ化や実写化となると、原作を愛すればこその何らかの違和感は、人それぞれに感じてしまうものと思います。しかし今年5月の制作発表で披露された、主要キャストの原作の雰囲気そのままのビジュアルは折り紙つき。こうして舞台になってみると、原作世界の再現ぶりは本当に見事で、エジプトの宮殿に集う人々などは、どの登場人物か遠目に見てもその立ち姿でわかる程!原作ファンとしては、自分が“よく知る登場人物”に再会したような慕わしさを覚えて、一気に舞台との距離が縮まりました。

<ミュージカル「王家の紋章」>
【東京公演】2016年8月5日~27日 帝国劇場
http://www.tohostage.com/ouke/

<ミュージカル「王家の紋章」 再演決定>
【東京公演】2017年4月 帝国劇場
【大阪公演】2017年5月 梅田芸術劇場メインホール
【出演】浦井健治、新妻聖子/宮澤佐江、宮野真守/平方元基、伊礼彼方、濱田めぐみ、山口祐一郎、愛加あゆ、出雲綾、矢田悠祐、木暮真一郎 ほか
http://www.tohostage.com/ouke/2017.html

<ここからアイデアニュース有料会員限定部分の見出しです>

■濱田めぐみさん、高貴で妖艶ながら恐ろしい一面も持つアイシスそのものの圧倒的存在感

■浦井健治さんが初めて言葉を発した瞬間、「ああ!メンフィスってこういう人だったんだ!」と納得

■キャロルを演じられる喜びが役作りに反映され、キラキラ、パチパチとはじけた新妻聖子さん

■悩み、考え、行動する、等身大の女の子。ギュッと抱きしめたくなる宮澤佐江さんのキャロル

■咆哮にも似た熱唱が素晴らしく、聴く者の臓腑を引きずり出しそうな、宮野真守さんのイズミル

■高貴にして孤高な印象の正統派王子。器の大きさを感じさせる歌唱の平方元基さんのイズミル

■現代パートを一身に担い、兄の深い情愛が感じられて胸に迫る、伊礼彼方さんのライアン

■流石の安定感と存在感で、物語を引き締めた山口祐一郎さんのイムホテップ

■“戦の女神”の如く舞い踊るダンスが素晴らしかった、愛加あゆさんのミタムン

■印象に残るダンス・演技、工藤広夢さん、出雲綾さん、川口竜也さん、小暮真一郎さん、矢田悠祐さん

■映像を使用しない演出で、独特な物語世界『場』を創り、説得力を与えたアンサンブルの皆さん

■胸をなでおろしたのもつかの間、シリーズ化への呼び水に違いない!と、期待が高まるエンディング

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 遠方の友人を誘って観たお芝居との出会いをきっかけとして演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、さまざまな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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