「デマやフェイクが口を挟む余地のない事実を」、阿部岳記者インタビュー(下) | アイデアニュース

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「デマやフェイクが口を挟む余地のない事実を」、阿部岳記者インタビュー(下)

筆者: 松中みどり 更新日: 2017年10月1日

沖縄タイムスの記者阿部岳さんの本、『ルポ 沖縄 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実』の紹介とインタビューの後半をお送りします。筆者が辺野古で初めて抗議船に乗ったときにご一緒した阿部記者は、地元の人たちに信頼されるベテラン記者でした。一般の記事もコラムもこなす阿部さんだからこそ描けた高江の165日。インタビュー後半では、フェイクニュースやデマが拡散される今、新聞や書籍が果たす役割は何なのかなどについて阿部記者にうかがいました。アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、オスプレイについて阿部さんにうかがったインタビュー後半の全文などを掲載しています。

未明のオスプレイ墜落現場で、報道陣を締め出そうとする米兵。「下がれ!」と怒鳴る者もいた=2016年12月14日、名護市安部、撮影・阿部岳

未明のオスプレイ墜落現場で、報道陣を締め出そうとする米兵。「下がれ!」と怒鳴る者もいた=2016年12月14日、名護市安部、撮影・阿部岳

――この本は朝日新聞出版から出されたわけですが、沖縄以外の、それこそ本土の人たちの手に届くことを想定されていると思うんです。こういう人に届けばいいなあと思って書かれたというようなことはありますか?

そうですね、やっぱり私と同じ本土の人間、本土の人たちに少しでも多く読んで欲しいと思っていますね。その一念なんですけれども、まったく興味のない方に手に取ってもらうのは厳しいかもしれません。でも、うっすら気になっている方、少しでもひっかかったら手に取ってもらえたらいいなあと思っています。

――ニュースは、ネットやせいぜいテレビで見ているという人が多くなっていますよね。沖縄のことも、「いやあ、ネットで見てるよ、知ってるよ」なんて言われることもあって、がっかりすることもあるんですけど、丹念に現場で取材して、本の形で出されたというのには、そういう状況をこえたいというような思いもあったのかなあと。

ネットでもちゃんと事実に基づいて発信するメディアはたくさんあると思いますから、ネットのニュースがダメというわけではないんですけれどね。デマとかフェイクニュースに対抗するというか、ひとつひとつ事実とか細部とかにこだわって書くというのは意識して心がけました。現場に行かないで、「ネットの動画を見たから真実はそれで知っている」というのは危険だと思うし、だから僕たちみたいな仕事があって、見たものを整理して伝えているわけですね。ネットの動画だって編集されて、都合のいい部分がとりだされているのに、そこにはありのままが映っていて、僕らが書くものは偏向しているから信じられないっていうのは、すごく倒錯してる感じがします。プロとしての責任を持って、この本でも事実を伝えているつもりです。デマとかフェイクだとかが口を挟む余地がないような事実を、丹念に積み上げていくというのが大事かなあと思います。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、オスプレイについて阿部さんにうかがった内容などインタビュー後半の全文と解説(約2,400字)と、2017年6月16日にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で国連の特別報告者デービッド・ケイ氏と握手する山城博治氏の写真など、阿部さんが各地で撮影した写真3枚を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■オスプレイは北朝鮮とは何の関係もない輸送機。自民党まで反対しても、押し付けられた

■本土のどんな思想信条の人でも、あんな欠陥機が自分の上を飛ぶのはいやでしょう?

■沖縄が気の毒とか大変と言ってるうちに、自分も気の毒とか大変に絶対なってしまう

■沖縄のことを、本土の人にひとりでも多く知ってもらいたいと願っています

<『ルポ 沖縄 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実』>
定価1400円 208ページ 発売/朝日新聞出版 ISBN 978-4-02-251481-3

【目次】
第1章 暴力と抵抗
・戒厳令(500人派遣の衝撃/高まる緊張/連夜の低空飛行、など)
・現場封鎖(問答無用/別天地)
第2章 弾圧と人権
・逮捕続出(思想犯/「悪魔扱い」/重なる微罪/共謀罪先取り、など)
・暴力の嵐(食い込むロープ/県民同士の争い)
・記者拘束(すり替え/暴走の追認/写真家の問い)
第3章 断絶と罵倒
・土人発言(差別の系譜/死語の復権/驚きがない驚き、など)
・デマ拡散(嘲笑の暴力/特大スポンサー、など)
・沖縄シフト(茶番の配信/ネトウヨ化する権力/無関心の土壌、など)
第4章 無法と葛藤
・揺れる法治(自衛隊ヘリ投入/切り裂かれた秘境/資料流出、など)
・推進側の葛藤(作業員と社長)
第5章 破綻と隷従
・オスプレイ無残(報道陣の闘い/墜落と不時着、など)
・「完成」式典(焼け太る米軍/政治ショー/農家の覚悟、など)

【著者】阿部 岳(あべ たかし)
1974年東京都生まれ。沖縄タイムス記者。上智大学卒業後、97年沖縄タイムス社入社。政経部、社会部基地担当、フリーキャップなどを経て北部報道部長。著書に『観光再生――「テロ」からの出発』(沖縄タイムス社)

<関連リンク>
朝日新聞出版のページ
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=19289
沖縄タイムスプラスの記事
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/133017

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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