愛猫の4年間にわたる成長をつづった自費出版の写真集「Tito〜4年をめぐるストーリー」が、2015年7月26日に神戸市須磨区のエスパスフェリシモで開かれる「第2回 KOBEにゃんずフェスタ」で出展される。著者は宝塚市在住のイラストレーター、アロマセラピストの猿丸知桂さん。前回の「にゃんずフェスタ」でお話をお伺いしようとしたところ、ブースに人だかりができていたため断念したが、このほど猿丸さんへのインタビューが実現した。猿丸さんに写真のモデルになった猫・チトとの出会いから出版に至るまでのエピソードをうかがった。(この記事に使っている写真は、写真集には掲載されていない写真も入っていますが、ご了承ください)
猿丸さんが子猫と出会ったのは2009年11月30日。その日は母の納骨費用の支払いの帰り道で、普段は乗らないバスに何気なく乗車し、終点駅で下車すると、バス停から少しのぼったところの側溝の角に小さな段ボール箱が置かれており、中を覗くとそこには瀕死の子猫がいた。最初は死んでいると思ったそうだが、下唇をかすかに動かしたのでまた息があることがわかった。
セラピストもつとめている猿丸さんは、このまま死んで捨てられてしまうなら、せめて庭にお墓を作って土にかえしてあげたいと思い、看取る気持ちで自宅に連れて帰った。ペタンコで餓死寸前状態の子猫に、少し温めたミルクを、スポイドを使って口に運んであげると、ごくりと飲んだ。どうせ死んでしまうなら、最後にお腹いっぱいミルクを入れてあげようと、意識のない子猫にミルクを入れつづけた。ストーブの前に寝かせていると、4時間後に意識が戻った。
「それまではぐったりしていましたが、私を見た瞬間ビックリしたのか、小さな子猫は飛び上がりました。私も、生き返ってしまった。どうしよう!と知人に電話するほど驚きました」
そのときの猿丸さんには、病院に連れて行くという発想もなく、必死で看護した。翌日は、グッタリしたままカゴに入れて神戸の仕事場へ。お腹をすかせていた子猫は翌々日、パンとかつお節4パックを勢いよく食べた。壊死しかけていた顔面をホウ酸水でふくと、一週間ほどして目が開いた。子猫に「チト」と名づけ、右も左もわからないまま面倒を見続けた。
実は猿丸さんはもともと「犬派」。犬の育て方についてはある程度わかっていたが、猫についての知識はほとんど持ち合わせていなかったので、全てが手探り状態だった。
「初めての猫だからこそ、たくさん写真を撮って、猫に詳しい友人、知人に写メールを送り、相談しながら育てました。おそらく犬なら、こんなに写真をとらなかったと思います」
ある程度育てていく中で、自信がなくなった際には誰かに引き取ってもらおうと思ったこともあった。しかし、いざ誰かに里親になってもらおうと考えた時、チトは猿丸さんの膝の上に寄ってきて「ごめーん」と言葉を発し、鳴いたという。
「私と離れているのが不安みたいで。猫というよりも、まるで子供のようですね」
はじめはメス猫だと思っていたが、のちにオス猫だと知った。300グラムの子猫はやがて5キロの男子猫へと成長をとげてゆく。
2年目には、猿丸さんはチトのために出窓を作った。その際、工事業者が家に出入りするので、チトは自分の家と猿丸さんを守るかのように、家中をパトロールしたという。そんなけなげな様子にいつしか猿丸さんの中にも「チトがいるから大丈夫」という信頼感が芽生えてきた。
「写真集を見て癒されるという感想をくださる方が多いですが、写真の中にはお互いの信頼感があらわれていると思うんです」
3年経った頃、恩師である京都造形芸術大学名誉教授の久谷政樹氏より、猫の写真集を出してはどうかと勧められた。それまでにも恩師は猿丸さんの撮影するチトの仕草が魅力的で独特の雰囲気があると言い、写真を気に入っていた。
「それまでは撮った写真を自宅でプリントして、友人にプレゼントするようなことはしていましたが、先生に言われるまで写真集なんて発想はありませんでした」
驚いたことに、猿丸さんが撮ったチトの写真は、ほとんどガラケーで撮影したもの。光の陰影や微妙なコントラストがとても美しいので、どう見てもガラケーで撮影しているようには思えない。
最初は東京の出版社も考えたが、偶然書店で見つけて気に入った写真集「余命4カ月のダビデ」を出版しているMPミヤオビパブリッシング(宮帯出版社)に連絡し、ここで自費出版をすることに決めた。
原稿の出稿はアナログ手法で手書きのものから始め、デザイナーと相談しながら自身のイラストを交え、わずか半年で2014年4月下旬に書籍化された。フルカラー、写真点数約350点。出版日の5月7日は、猿丸さんの兄の十年の命日だった。
書籍には、自らがデザインした読者ハガキを挿入し、誕生秘話を知りたい方には直接手紙を書いて交流してきた。今では、SNSを利用し猫仲間たちとの交流をはかっている。
なお、第2回 KOBEにゃんずフェスタでは、書籍の販売に加えて、チトの写真で作ったポストカードや、自分で描いた猫のイラストの絵葉書なども販売する予定だ。書籍1冊の代金1500円のうち、3分の1にあたる500円は、フェリシモ猫部・ワンニャン基金・神戸ノラネコTNR実行委員会に寄付する。
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<プレゼント> 「TIto」の写真と猿丸知桂さんが描いたイラストのポストカードを、アイデアニュースの読者4名さまに2枚1組でプレゼントします。どなたでも、ご応募いただけます。
下記フォームからご応募ください(応募締め切りは2015年7月31日)。当選の発表は発送をもってかえさせていただきます。(このプレゼントの募集は終了し、当選者に写真とイラストを発送しました)。ご応募くださったみなさま、ありがとうございました。
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「Tito〜4年をめぐるストーリー」のamazonでの購入はこちら → http://www.amazon.co.jp/dp/4863669364
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- <第2回 KOBEにゃんずフェスタ>
神戸ノラネコTNR実行委員会、神戸新聞ミントクラブ、株式会社フェリシモ 猫部 共催
とき: 2015年7月26日(日)10時~16時(入場は15時半まで)
ところ: エスパスフェリシモ(神戸市須磨区弥栄台2-7)
アクセス: 神戸市営地下鉄総合運動公園駅下車、徒歩約1分 - 詳しくはこちら → http://www.nekobu.com/blog/2015/07/post-645.html
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<読者の声(プレゼント応募から)>
チトちゃんのファンです。フェイスブックで拝見しています。猿丸さんのネコの絵も独特な雰囲気が大好きです。これからも応援いたします。頑張って下さいね。
Facebookでチトちゃんを知り、毎日楽しみに拝見しています。本も買って、可愛いねって、うちの猫に見せています。私がいるのに、他のねこにこころを奪われるのではないかと、チョット不機嫌になります。それがまた可愛いのですが。出会いからの日々を知り、益々愛しく思えます。うちの子も、400グラムで拾われた次の日に、偶然出会い我が家にやってきて、いまでは6キロの巨体です。素敵な写真集ありがとうございます。益々のご活躍をお祈りしています。
チィトちゃんとの出会いに感動しています。ますますファンになりました。
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<アイデアニュース 動物関連記事>
愛猫「Tito」との4年間をつづった写真集出版、猿丸知桂さんに聞く → https://ideanews.jp/archives/6470
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「しろさびとまっちゃん」福島原発20km圏内で生きる猫と松村さんの日々 → https://ideanews.jp/archives/1919
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<アイデアニュース有料会員向けおまけ的小文> 猿丸知桂さんの描く「チトちゃん」の原画をご紹介
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