雪山遭難の極限状態での物語、スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』 | アイデアニュース

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雪山遭難の極限状態での物語、スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』

筆者: アイデアニュース編集部 更新日: 2020年1月16日

雪山遭難の極限状態の中での少年たちと大人たちを描いた劇団スタジオライフの舞台『はみだしっ子~White Labyrinths~』が、2020年1月8日(水)から1月19 日(日)まで、新宿 シアターサンモールで上演されています。1975年から1981年に「花とゆめ」に連載され、多くの熱狂的な読者を生み出した三原順さんの漫画「はみだしっ子」を原作として、2017年に舞台『はみだしっ子』、2018年にその続編となる舞台『はみだしっ子~in their journey through life~』を上演した劇団スタジオライフ。今回の『はみだしっ子~White Labyrinths~』は、作品の中核を成す『山の上に吹く風は』パートを舞台化したものです。オフィシャルレポートと公演写真が届きましたので、ご紹介します。

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフの公演、『はみだしっ子~White Labyrinths~』がシアターサンモールにて開幕した。

1975年から1981年に花とゆめに連載され、数多くの熱狂的な読者を生み出した傑作漫画『はみだしっ子』。作者の三原順は本年、没後25年を迎える。スタジオライフはこれまで2017年に『はみだしっ子』、2018年にその続編となる『はみだしっ子~in their journey through life~』を舞台化。今回はいよいよ満を持して、作品の中核を成す『山の上に吹く風は』のパートを上演する。

グレアム、アンジー、サーニン、マックスの少年4人はそれぞれ複雑な家庭の事情により親元を離れ、心に闇を抱えたまま放浪生活を続けている。厳しい世間に傷つきながらも、ときにはぶつかり合い、ときには笑い合って、互いを頼りとして日々を送る4人。彼らの関係性に希望を感じさせるエンディングを迎えたのが前作だった。しかし、一転して本作では4人が大人の世界と向かい合わざるを得なくなる事件に巻き込まれる。4人が乗ったバスが雪山の中で遭難。バスで乗り合わせた大人たちといやおうなしに向かい合わなければいけなくなったのだ。

極限状態の中で、大人たちは心のうちに隠していた本音をあらわにする。4人は容赦ない“世間の風”を浴びせられる……。

雪山遭難という隔絶した状況のいわば、“密室劇”。初演、再演と同じく階段状の舞台に一本の街灯のみが立つというシンプルな美術(乗峯雅寛)だが、演劇的な効果で観客を雪山の世界へと誘う。観客は4人と一緒にバスに乗った気持ちになり、たどり着いた山での雪の白さも凍てつく空気も、ありありと想像できるのだ。

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

脚本・演出の倉田淳はアガサ・クリスティを連想させる筆致で4人の、そして大人たちのキャラクターや人間性を徹底的に浮かび上がらせる。スタジオライフは1996年の萩尾望都原作『トーマの心臓』初演以来、数多くの漫画作品を舞台化してきた。「2.5次元」という言葉が生まれるずっと以前から、作品を演劇として立ち上げ、人間ドラマを描くことに専念してきたのだ。その確かな歩みが、今回の作品に結実する。4人を取り巻く大人たちがそれぞれの持つ過去を彷彿とさせるキャラクターを描出することで、物語にリアリティをもたらした。

バスに乗り合わせた乗客の中で、物語のキーになる男、ジョイを演じる松本慎也が繊細に役柄にアプローチ。抗えぬ運命の中で生きていかねばならない男性の悲哀を浮き彫りにして、物語に奥行を与える。歌手の女性シャーリーを演じるのは石飛幸治。ミュージカル『レ・ミゼラブル』にも出演する石飛が乗客の心を慰めようと歌う歌声に深い癒しの響きがあった。

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

ダブルキャストでの公演で、筆者はCAPチームを観劇。今回初登場となる関戸博一(グレアム)と八島諒(マックス・客演)、前々作から続演となる宇佐見輝(アンジー)、澤井俊輝(サーニン)が演じるチームだ(もう一方のTBCチームは、仲原裕之のグレアム、松本慎也のアンジー、千葉健玖のサーニン、伊藤清之のマックス)。

社会へと目を向けなければいけなくなった4人。4人を襲う状況はあまりにも苛酷だ。そんな中でも、それぞれ懸命に生きる姿が胸を打つ。関戸は深い苦悩を抱え込み、虚無を漂わせるグレアムを真摯に演じて、胸を打つ演技。宇佐見は終盤の長台詞で、アンジーの強い意志を発露する。澤井は今回3度目のサーニン役で、まっすぐなキャラクターを体現。八島が最年少のマックスをピュアに演じてドラマ性を高めた。

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

劇団スタジオライフ『はみだしっ子~White Labyrinths~』CAPチーム公演より=写真提供・劇団スタジオライフ、(C)三原 順/白泉社

厳しすぎる“世間の風”に4人の絆が試される。つらい展開に心が痛むが、かすかな希望の光を感じさせるエンディングに心を揺さぶられた。人と人が結ぶ絆について、考えさせられる舞台化だった。倉田は製作発表で今回の舞台化について「心して向かい合わなければいけない」「この先を舞台化するのは、ちょっと時間をおかないとできないかもしれません」と語っていたが、4人の旅路をスタジオライフの舞台で見届けたいと願う。

上演時間は約2時間。濃密な時間だ。

劇団スタジオライフ公演、『はみだしっ子~White Labyrinths~』は1月19日(日)まで、シアターサンモールにて上演される。

(文/演劇ライター 大原 薫)

(C)三原 順/白泉社

<Studio Life 公演『はみだしっ子~White Labyrinths~』 >
【東京公演】2020年1月8日(水)~19 日(日) 新宿 シアターサンモール
「はみだしっ子~White Labyrinths~」公式ホームぺージ
http://www.studio-life.com/stage/hamidashi2020/
スタジオライフ公式ホームぺージ
http://www.studio-life.com/

<会場>
新宿 シアターサンモール
〒160-0022 新宿区新宿 1-19-10 サンモールクレスト B1
TEL 03-3352-5577
東京メトロ丸の内線「新宿御苑前」駅 大木戸門方面出口(出口 2)より 徒歩 3 分

<チケット>
【チケット料金】(前売・当日共)
一般 6,000 円
club LIFE 会員 5,700 円(club LIFE 優先予約 5,500 円)
学生 3,000 円
高校生以下 2,500 円
■当日券
各回開演の 60 分前から劇場入り口の受付にて販売。
【チケット取扱い】
■カンフェティ
http://www.confetti-web.com/hamidashi2020
0120-240-540(平日 10:00~18:00)
※オペレーター対応
■チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/studiolife/
TEL:0570-02-9999
P コード:498-396

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