2023年4月27日(木)にミュージカル『アルジャーノンに花束を』が開幕しました。5月7日(日)まで日本青年館ホールで、5月13日(土)から14日(日)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演されます。本作で、チャーリイ・ゴードン役を演じる浦井健治さんのインタビュー後編です。「下」では、この作品の見どころ、ニューアルバム『VARIOUS』のことについて伺った内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
――ミュージカル『アルジャーノンに花束を』を、初めて観る方もいらっしゃると思いますので、具体的に音楽や脚本など、ここは知っておいてほしいというところはありますか?
ダニエル・キイスさんの小説が原作なので、読んでいない方はぜひとも手に取っていただきたいですね。「経過報告」という日記のような形で、チャーリイ・ゴードンが、ある意味では変化していく過程を文字にして可視化することで、ものすごく見えてくる知識の変化がSFとして描かれています。
そこで浮き彫りにされるのは、群像劇的な人間の業だとか、劣等感にさいなまれて狂気じみていくとか、人間の愚かさ、そういったものに直面していく中で描かれる人間性を、ダニエル・キイスさんは書かれていると思うんです。そういう家族観、社会における闇というようなものは、原作の中でもいろいろな問題提起や、家族間の関係、ある意味では社会的に敏感になっている部分……。
意図せずに言葉だけが一人歩きしてしまうようなことを題材にしているので、とてもシビアに考えなきゃいけないこともありますけど、そのフィルターを外すと、「この作品は、人間を描いているんじゃないかな」と思っています。ちょっと質問からはずれてしまうかもしれませんが、そういう意味では人間の性(さが)が見て取れるような作品でもあると、自分は思っています。
――ミュージカルでは、特にチャーリイの知能が急激に上がっていく時のナンバーは、圧巻でしたね。
あの子にとってはそれが日常、普通で、友達や人とつながっていたい、認められたい、親に対して認めてほしいという気持ちなんです。そういう気持ちが、斉藤恒芳さん作曲の音楽によって紡がれ、完成していったミュージカルだと思います。歌うことで、実はチャーリイは変わっていなくて、変わっていったのは周りだということを、フレージングや難解な曲調、曲のニュアンスの変化で表現しています。
最初は粒がゆっくりだったリズムが、早口オペラのようになっていくことで、一見ダイナミックにも見えるけれども、実は内情は変わっていないという表現も同時にできる。それが、ミュージカルならではの強みだと思います。チャーリイの二重線じゃないですけど、自分は変わっていない。でも実はいろいろと周りが変わっていったということを音で表現できるのは、情報量として強いなと思います。
――ニューアルバム『VARIOUS』のお話も伺いたいです。タイトル通り、曲もいろいろですね。
2年越しにまたポニーキャニオンさんから出させていただきましたが、本当に夢は叶うんだなと毎回感謝しています。今回は、SOPHIAの松岡充さんがオリジナル曲を作ってくださって、しかもディレクションまでやってくれて。さらにはMVにも出てくださった。憧れの人が浦井健治という人間を理解して、かみ砕いて、あの曲を仕上げてくださった。すごいことが起きました。
また、「キャッチボール」というオリジナル曲は、植村花菜さんが詞も一緒に作ってくれました。亡き父親への想いや、残してくれた言葉、手帳に書かれた人生の教訓などを、とにかく書き出し、そこに植村さんが素敵なメロディーをのせてくれました。母もすごく喜んでくれたのが何よりですね。
あとは望海風斗さんと「闇が広がる」をデュエットしました。望海さんが、人生初だというコーラスと、今回は宝塚のキーでだったので、僕自身も新しいルドルフを残すことができた。相乗効果もある化学反応で格好いいことができたなと思います。
ジャケットのバルーンが象徴しているように、ミュージカルもポップスもオリジナルも全部含めて、元気になってもらえて、前を向いて未来へ飛んでいけるような気持ちになってもらえるアルバムになったと思っています。
――バラエティに富んでいますね。
カバー曲の「木蘭の涙」はちょっと異なるかもしれませんが、未来へ向けての曲になっていると思います。曲順も含めて全部つながっているというか。一枚通して聴いたら、ライブコンサートに行ったような気分になってくれてたら嬉しいですね。
――ミュージカル曲も、浦井さんご自身が出演されたものだけではありませんね。
StarSで歌った時の曲や、「民衆の歌」は女性キーも含めて全部自分の声なんです。「スパークル」も「365日」も、伝えたいメッセージを自分の声で入れました。「Go the Distance」なども含めて、全曲歌声を変えています。
――歌声が違うことを、すごく感じました。
「ミュージカル俳優ならでは」のカラーを楽しんでもらえたら僕としては幸せですね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、ニューアルバム『VARIOUS』のことについて伺った内容やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■女王蜂アヴちゃんと冠徹弥さんの発声法を学んだからこその、松岡さんの楽曲の声
■「Be the Hero」は、僕が歌うことで息子のウィルが歌っているニュアンスにも
■エドワードを演じていた、川平慈英さんのニュアンスもリスペクトとして入れられた
■『アルジャーノンに花束を』を楽しんで、『VARIOUS』で元気になっていただけたら
<ミュージカル『アルジャーノンに花束を』>
【東京公演】2023年4月27日(木)~5月7日(日) 日本青年館ホール
【大阪公演】2023年5月13日(土)~5月14日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
公式サイト
https://www.algernon-musical.com
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アルジャーノンに花束をの大千秋楽から1週間でVARIOUSのライブ。
まだまだチャーリイに浸っていたいし、でもライブも楽しみ!
充実のインタビューをありがとうございました。