音楽劇『空中ブランコのりのキキ』が、2024年8月6日(火)から8月18日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターで、8月31日(土)に兵庫・アクリエひめじで上演されます。劇作家・童話作家として数々の名作を生みだしてこられた別役実さんの傑作と言われる不条理でどこか不思議な作品数点を、一本の音楽劇としてストーリーを再構する本作は、世田谷パブリックシアターの夏のアートフェスティバル「せたがやアートファーム」メインプログラムとして届けられます。原作は、中学校の国語の教科書にも掲載されていた「空中ブランコのりのキキ」、童話集「山猫理髪店」より「愛のサーカス」などサーカスをテーマとした作品数本と、「丘の上の人殺しの家」です。
構成と演出は、劇団「快快」の俳優・振付家・演出家であり、ファッション、ダンスなど幅広く活躍されている鬼才・野上絹代さん。そして脚本は、同じく「快快」の脚本家・演出家であり、第57回岸田國士戯曲賞・最終候補となった気鋭の北川陽子さんです。音楽を手掛けられるのは、バンドサウンド・ワールドミュージック・雅楽・エレクトロ・打ち込みなどジャンルを逸脱した特異なセンスを持ち、多くのアーティストやメディアに音楽・リミックス提供し活躍するオオルタイチさんです。また、「ながめくらしつ」主宰の目黒陽介さんをサーカス演出監修に迎え、日本サーカス界を牽引するサーカスアーティストのみなさんも出演されます。演劇・歌・音楽・サーカス・ダンス・アクロバットが融合された、楽しくも切ない作品が誕生します。
別役作品に登場する、少し不思議で、可笑しくも愛おしいキャラクターを演じるのは、咲妃みゆさん、松岡広大さん、瀬奈じゅんさん、玉置孝匡さん、永島敬三さん、田中美希恵さん、谷本充弘さん、馬場亮成さん、山下麗奈さんです。サーカスアーティストとしては、吉田亜希さん(エアリアル)、サカトモコさん(ブランコ)、長谷川愛実さん(エアリアル)、吉川健斗さん(ジャグリング、タイトロープ)、目黒宏次郎さん(テトラ)が出演されます。
アイデアニュースでは、ロロと象を演じる松岡広大さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、咲妃みゆさんが演じる主人公のキキと、松岡さんが演じるロロの関係について、その中から浮かび上がる「自分自身と世間のイメージについての葛藤」についてどう考えているかなどのお話を紹介します。「下」では、「象」役のこと、作品の舞台になるサーカスというものについて、『ニュージーズ』でも共演した咲妃みゆさんについて、演出の白井晃さんのことについてのお話や、学生時代から通っている世田谷パブリックシアターの舞台に立つことへの思いなどを紹介します。
ーーこの作品についてどんな印象を持っていらっしゃいますか?
率直に今、こういう作品が必要なのではと思いました。色々な事が起きている現代で、それがどういうことなのかということが如実かつ顕著に描かれているので、自分たちの足元を照らしてくれる作品なのではと思います。
ーーその要素について、具体的に伺えますか?
主人公のキキは、自分自身と世間のイメージに対してすごく葛藤がある子だと思うんです。空中ブランコに乗ってお客様から拍手をもらいたいけれど、自分にしか出来ない三回宙がえりをどこかの誰かが出来るようになってしまったらと心配したり。それは自分自身を見つめる作業だと思うのですが、同時に自分自身から逃げているとも言えると思うんです。
三回宙がえりが自分だけの技でなくなると自分の価値もなくなるとキキは思っているのですが、実際に今、手に職をつけていないといけない、スキルがないと生きていけないと思っている人も多いなと感じていて。目的のためにというより、手段を優先しているというか、「⚪︎⚪︎になりたい」以上に、「⚪︎⚪︎をしている自分」が目的になってしまって、逆転しているのを目にする機会があります。
ーー本来は目的があって手段があるべきなのに、逆だということですね。
そうですね。「手段のために目的を選んでいないかな?」と考えた時に、自分自身もどうなんだろうなと思いました。思慮深くやっていけばできると思うのですが、時代の潮流に流されてしまっていないかなと。理想の自分と、今の自分を認めることができない。まさにキキがその状況なのではと思いました。
ーーそれでも、ご自身がそういう何かに、引っ張られそうになるときはありますか?
21歳頃は、世間のイメージにどうにか応えようと奮闘していましたが、うまくいかず、迎合するのをやめました。
ーーどのように転換されたんですか?
自分自身の時間が増えたタイミングだったので、色々な本を読んで偉人、先人の言葉をたくさん収集して解釈して、自分なりの哲学を作りました。
ーー意図的に自分の時間を作られたんですか?
はい。それまでは人と一緒にいることが多くて、意思決定を他人に任せすぎたなと思って。
ーー松岡さんは読書も思考もたくさんされていて、同年代の方よりも大人なイメージがありますが、そんなに早い段階で気づけるというか、止まれたことがすごいですよね。
もしかすると、僕が11歳からこの仕事をしていることに起因しているのかもしれないです。
ーー子どものころに、大人の世界を早くのぞいたからということでしょうか?
芝居をする、踊りで表現するなど、すべてが評価の対象になる仕事なので、同世代はもちろん、事務所の中にもライバルがいたり。自分で望んだことではありますが、結局消費されてしまうんだとか、だんだん苦しくなる時もあって。ものづくりをしている人は、結局は、そんなことにすぎないんだと、どこかで一回気づくと思うんです。この物語の登場人物もそうかもしれないですよね。
※アイデアニュース有料会員限定部分では、松岡さんが意図的に自分の時間を作られてきた意味と、この作品で松岡さんが演じるロロについて話してくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。6月27日掲載予定のインタビュー「下」では、「象」役のこと、作品の舞台になるサーカスというものについて、『ニュージーズ』でも共演した咲妃みゆさんについて、演出の白井晃さんのことについてのお話や、学生時代から通っている世田谷パブリックシアターの舞台に立つことへの思いなどについてお話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■人に流されることも、自分で考えることも両方大事。どちらかだけでは、生きていけない
■ロロは、お客さんが思っていることを代弁する。ピエロという表現が本当にしっくりくる
■キキとロロ。「お互いがお互いの一番のお客さん」という言葉が、言い得て妙な表現
■ロロはやはり真面目だから、ふざけているときも、どこか仮面をかぶっていると思う
<せたがやアートファーム2024 音楽劇『空中ブランコのりのキキ』>
【東京公演】2024年8月6日(火)〜8月18日(日) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2024年8月31日(土) アクリエひめじ
公式サイト
https://setagaya-pt.jp/stage/15937/
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柔らかく、鋭く、寄り添うようなインタビュー。
NORIさんによる写真の暖かみと相まって、心地のよい温度を感じる記事でした。
松岡さんは特に、インタビューの機会を大切にしていらっしゃる人という印象があります。
今回の記事では、作品について、そして松岡さん自身について、絶妙なバランスで構成されていて嬉しかったです。
私は原作未読のまま観劇する予定なので、観劇後、この記事にもう一度訪れて、答え合わせをする日が楽しみでなりません。
岩村美佳さん。
読み返したいと思えるインタビューを届けてくださり、ありがとうございました。