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100年の歴史を舞台上で凝縮 ひとり芝居「在日バイタルチェック」、沖縄で上演へ

筆者: 松中みどり 更新日: 2016年2月26日

 

沖縄・辺野古のゲート前で歌っていた きむきがん(김기강)さんのことは、こちらの記事で少しふれました。→  https://ideanews.jp/archives/16053 「なんでここまで抵抗するのか、わかる?」 座り込み555日の辺野古レポート(上) まっすぐなまなざしと力強い歌声が印象的だった彼女が、劇団石(トル)の代表で、ひとり芝居や演劇ワークショップをしていることを知り、2016年2月6日、その舞台を見に行ってきました。心から感動したお芝居「在日バイタルチェック」、ひとりでも多くの人に見てもらいたいと思います。3月には沖縄で上演されるというので、そちらのお知らせも含めて、ぜひお読みください。

 

2016年2月6日ピッコロシアターで上演された「在日バイタルチェック」満員御礼=撮影・松中みどり

2016年2月6日ピッコロシアターで上演された「在日バイタルチェック」満員御礼=撮影・松中みどり

 

開演してすぐ、舞台の上に、海女さんがあらわれました。躍動感あふれる動き、しぐさは10代の少女と思われました。植民地支配の時代、日本人に土地も海もとられて、海女の仕事ができないから「日本に出稼ぎにいくわ」と話す少女は、行くなとすがる妹に(その姿は実際にはありません。ひとり芝居ですから)「すぐ帰ってくるから」と約束します。でも、実際には、故郷の海を再び見るのは75年後のことでした。

 

舞台写真=きむきがんさんのFacebookページより

舞台写真=きむきがんさんのFacebookページより

 

この海女だった少女が、日本の植民地時代に済州島から海を渡ってきた在日1世のハルモ二(おばあさん)で、物語の主人公です。現代では、デイサービスセンター「ミンドゥルレ(タンポポ)」に通う90歳のウルセンハルモ二は、壮絶な歴史を生き抜いた女性です。この人を演じるきがんさんは、何かが降りてきたとしか思えないほど見事で、一瞬のうちに10代の海女さんから90歳のハルモ二になった場面、「ガラスの仮面」のマヤちゃんかと思いました。

 

ミンドゥルレには在日のハルモ二たちが多く集まっていて、元気で明るいデーサービス所長さんは在日2世、民族学校に通ったので朝鮮語が不自由なく使える3世の職員や、帰化していて、そのことをなかなか言い出せない新人職員もいます。ある日、90歳の誕生日を迎えるウルセンハルモニをお祝いしようと、デーサービスのみんなが集まり、ハルモ二の連れ合いのハラボジ(おじいさん)もやってきました。ふたりのなれそめを聞くうち、1世が過ごしてきた100年の歴史が、舞台の上で凝縮されます。

 

舞台写真=きむきがんさんのFacebookページより

舞台写真=きむきがんさんのFacebookページより

 

激しい労働に従事する1世の男たち、苦労して子どもを育てる女たち、貧しい暮らし、差別、阪神教育闘争、指紋押捺、ヘイトスピーチ……その場面場面で、鮮やかにすべての登場人物を演じ分けるきがんさんは、舞台の上でとても大きく、パワーにあふれていました。舞台に立つのはきがんさんひとりですが、きがんさんにつながるハルモ二の、その子どもの、その兄弟姉妹の、同胞の思いを背中にしょって、立っているからなのでしょうか。圧倒的な演技でした。

 

舞台写真=きむきがんさんのFacebookページより

舞台写真=きむきがんさんのFacebookページより

 

もっとも泣けたのは、川に飛び込むような危ない真似をした息子を叱り飛ばしたハルモ二が、いじめられていた妹をかばうためのケンカだったことを知って、友だちの家を一軒一軒訪ねていくシーンです。「うちの娘と仲良くしてやってください」と、朝鮮なまりの日本語で、体を二つ折りにして頼むその姿。冷たい言葉と態度で追い払われ(その憎々しい日本の母親を演じるのも、もちろんきがんさんです)、乏しい蓄えの中から、娘がバカにされないようにと文房具を買い求めるハルモニの淋しそうな、透明な悲しい表情。忘れられません。

 

私事ではありますが、フィリピンの先住民族アエタの若者たちと20年来のつきあいをし、応援してきた経験の中で出会った無理解や差別、理不尽さを重ね合わせてきがんさんの舞台を思い出すと泣けてきます。心の中に、心も体も固まったような辛い思い出がある人ほど、舞台のハルモ二と一緒に泣いて笑って、また立ち上がる元気と勇気がもらえるはずです。だから、私も、沖縄の舞台を見たいと思っています!

 

2016年1月11日 キャンプシュワブ前テントで歌うきむきがんさん=撮影・松中みどり

2016年1月11日 キャンプシュワブ前テントで歌うきむきがんさん=撮影・松中みどり

 

きがんさんは、こうした演劇活動を続けながら、辺野古の新基地建設反対の現場にずっと関わり続けています。歴史を知ることは今を知ることであるなら、この見事に凝縮された在日コリアンの歴史劇を、沖縄で上演するというのは、まことに時宜を得た企画と言えるでしょう。

 

きがんさんが、在日1世の強烈なハルモ二の姿を胸に抱いているとしたら、基本的な人権を踏みにじられ、奪われ、苦しんできた沖縄のオジー、オバーの姿を胸に座り込む辺野古ゲート前の沖縄の仲間たちは、きがんさんの演技を、在日同胞が感動して見るのに負けないくらい熱い思いで受け止めてくれるはず。そんな風に思っています。

 

沖縄公演の詳しいことは、下記までお問い合わせください。

 

2016年3月沖縄上演のチラシ

2016年3月沖縄上演のチラシ

 

<在日バイタルチェック 沖縄公演>
【3月25日(金)】18:30開演(18:00開場)
うるま市民芸術劇場 燈(あかり)ホール(098-973-4400) 2000円  問い合わせ 090-8291-7134(宜野座)
【3月26日(土)】15:30開演(15:00開場)
沖縄大学 同窓会館(098-832-3216) 2000円  問い合わせ 090-5410-4158(上間)
【3月27日(日)】14:00開演(13:30開場)
沖縄愛楽園 交流会館(098ー052-8331) カンパ2000円 問い合わせ 090-8796-5112(稲垣)
【主催】「在日バイタルチェック」沖縄実行委員会 (mail: eiko08730☆water.ocn.ne.jp  ☆は@に変えてください)

 

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■ほとんどの場面で笑うか泣くかしていたような気が
■マダン劇は、民衆が生きていくために欠かせない芸能の一つ
■沖縄の仲間たちは熱い思いで受け止めてくれるはず

 

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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