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脱原発・農業振興・地域おこしが一体に 「ソーラーシェアリング」を学ぶ

筆者: 橋本正人 更新日: 2016年3月8日

2016年4月1日からの「電力の小売全面自由化」を前に、電力への注目度が高まっています。そんな中、神戸市内で「農業と環境をつなぐ学習会 ソーラーシェアリングってなぁに?」が開かれました。「ソーラーシェアリング」は、畑などの上空に太陽光発電パネルを設置して、パネルの下で農業を続けながら発電する仕組みです。脱原発、農業振興、そして「地域おこし」が一体となった先進的な取り組みの学習会の様子をレポートします。

2月21日に神戸市内の兵庫県学校厚生会館で開かれたこの学習会の講師は、ソーラーシェアリングに取り組んでいる「市民エネルギーちば 合同会社」(⇒http://www.energy-chiba.com/)の代表社員の東光弘(ひがし・みつひろ)さん。ここでは東さんの講演から、この記事の筆者(橋本正人)が「なるほど」と思った部分を中心に紹介します。

まずは、発電とは直接関係ありませんが、ソーラーパネルがあると「夏の農作業がラク!」という点。たしかに真夏のカンカン照りの日に農作業をすることは、暑がりの私などはとても耐えられそうにありませんが、ソーラーパネルが「日陰」を作ってくれるので、農作業がラクになるとのこと。しかも、それは作物も同じで、パネルの角度を変えることで作物に当たる光の量を適切な状態に調整できるので、パネルがない時よりも作物の収穫量が増えたということが、具体的な作物名や収穫量などで紹介されました。

「市民エネルギーちば合同会社」代表社員の東光弘さん=撮影・橋本正人

「市民エネルギーちば合同会社」代表社員の東光弘さん=撮影・橋本正人

ソーラーシェアリングのパネルを上空から見たところ=東さんが上映したスライドから、撮影・橋本正人

ソーラーシェアリングのパネルを上空から見たところ=東さんが上映したスライドから、撮影・橋本正人

パネルを地上から見たところ=東さんが上映したスライドから、撮影・橋本正人

パネルを地上から見たところ=東さんが上映したスライドから、撮影・橋本正人

農地の上空に太陽光発電設備を設置することは以前は正式には認められていませんでしたが、今から3年前の2013年3月31日、農水省は「設備下での営農継続」を条件として、農地での発電事業を認める通達を出しました。

2013年3月、水省が農地での発電事業を認める=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

2013年3月、水省が農地での発電事業を認める=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

ここで大事なのは「農地での発電事業」は、「営農継続」が条件になっているということです。逆に言えば、ソーラーシェアリングが実施されるということは、「農業が継続する」ということになるわけです。現在の日本の農家の最大の問題のひとつは「後継者不足」で、人手不足から「耕作放棄地」となる農地が続出しています。しかし、ソーラーシェアリングの導入によって、農業に加えて発電事業が行われて収入が増えることと、先進的取り組みに対して都会から見学者が来たり、発電とセットで「農業体験」などを提供することで若者の来訪が増え、収入増で農作業に従事する人を増やすことで耕作放棄地の再生につながることが計画されています。

耕作放棄地の再生計画=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

耕作放棄地の再生計画=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

ソラシェア&パークファーム構想(案)=東さんが紹介したスライドより、撮影・橋本正人

ソラシェア&パークファーム構想(案)=東さんが紹介したスライドより、撮影・橋本正人

でも、農地の上にソーラーパネルを設定して、農作物の成長に影響はないのでしょうか? それについても勉強会では詳しく解説されていました。作物が育つためには一定の光は必要ですが、光が多ければ多いほど作物が良く育つということではないということです。ソーラーパネルは、角度が調整できるので、農作物のために多くの光が必要な時はパネルを動かして光を農地にたくさん当てて、光が必要でない時は、パネルが太陽光をいっぱいに受ける角度にすれば良いということです。

どのぐらいの光があると作物は育つのかの説明=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

どのぐらいの光があると作物は育つのかの説明=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

夏場などで、太陽光が当たりすぎると土地がカラカラに乾いてしまって作物がダメになる時はパネルで太陽光を減らすことができますし、雨が降り続いて農地を乾かす必要がある時はパネルを開いて土地に光を多く当てることができる。冬場の寒い時には、パネルが屋根代わりになって地面が冷えるのを防ぐ効果もあるとのことでした。

パネルの設置位置は、最低でも高さ2メートル以上と農水省通達で決められており、東さんの「市民エネルギーちば合同会社」では2メートル80センチぐらいに設置しているそうです。この高さならトラクターがラクラク通れるし、クワを振り上げても大丈夫なので、ちょうど良いとのことでした。

パネルには高さがあり、ポールの間も広く、トラクターが通れるようになっています=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

パネルには高さがあり、ポールの間も広く、トラクターが通れるようになっています=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

なるほど!と思ったのは、大規模なメガソーラーなどは太陽光パネルを南向きに設置するものが多いのに対して、東さんのところではパネルを東向きあるいは西向きにできるように設置するパターンがあるということでした。発電パネルの下に農作業をする人がいるからこそできる細かな配慮で、1日のうち太陽光が降り注ぐ角度にピッタリ合わせた発電ができるというのは、さすがだなと思いました。

パネルは太陽の位置に合わせて東から西に向きを変えられるタイプが登場しました=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

パネルは太陽の位置に合わせて東から西に向きを変えられるタイプが登場しました=東さんが上映したスライドより、撮影・橋本正人

また、従来の大規模な「メガソーラー」は設置するために広大な土地が必要なので、山を切り崩して設置したり除草のために農薬を使ったりと、環境に優しくない部分もあるけれど、「農地の上に設置するソーラーシェアリング」は、農地で作物を育てることと発電が一体になるので、有機農業とセットにすれば環境のためにとても良いシステムになります。


(東さんから当日上演した動画のオリジナル版を記事に掲載しても良いという許可をいただきましたので、紹介します)

この日の勉強会では、東さんの講演のあと、兵庫県宝塚市内でエネルギーの地産地消に取り組んでいる市民発電所「非営利型 株式会社 宝塚すみれ発電」(⇒http://takarazuka-sumire.com/)の代表取締役、井上保子さんが宝塚での発電についても少し説明しました。宝塚はアイデアニュースの本社所在地でもありますので、「宝塚すみれ発電」の取り組みについては、あらためて詳しくアイデアニュースで紹介したいと思います。

「非営利型株式会社 宝塚すみれ発電」代表取締役の井上保子さん=撮影・橋本正人

「非営利型株式会社 宝塚すみれ発電」代表取締役の井上保子さん=撮影・橋本正人

宝塚でのソーラーシェアリングの様子=「宝塚すみれ発電」のスライドより、撮影・橋本正人

宝塚でのソーラーシェアリングの様子=「宝塚すみれ発電」のスライドより、撮影・橋本正人

会場内には、宝塚市でのソーラーシェアリングを説明したパネルなどが展示されていました=撮影・橋本正人

会場内には、宝塚市でのソーラーシェアリングを説明したパネルなどが展示されていました=撮影・橋本正人

この日の勉強会は、「NPO法人 新エネルギーをすすめる宝塚の会(REPT)」(⇒http://rept.or.jp/)と、「コープ自然派兵庫 ビジョン食/農業チーム」(⇒http://www.shizenha.ne.jp/hyogo/)が共催したもので、約60人が参加。講演のあとには熱心な質疑応答もありました。

学習会には約60人が参加しました=撮影・橋本正人

学習会には約60人が参加しました=撮影・橋本正人

質疑応答の部分は、アイデアニュース有料会員限定とさせていただきます。4月1日から始まる「電力小売自由化」についての質問と回答を、東さんと井上さんの生の言葉で紹介します。

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<関連記事> 電力小売自由化についてのアイデアニュースの記事一覧は ⇒ここをクリック

<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 産経新聞記者から朝日新聞記者となり、大阪本社整理部次長、デジタル事業本部サブマネジャーなどを歴任。宝塚歌劇などを扱うサイト「アサヒコム・スターファイル」の編集責任者を6年間つとめ、独立。アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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