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「大切な花を心にひとつ」 かっこちゃんの「星の王子さま」のひみつ

筆者: 松中みどり 更新日: 2015年4月7日
"かっこちゃん"こと山元加津子さんの本「大切な花をこころにひとつ」

“かっこちゃん”こと山元加津子さんの本「大切な花をこころにひとつ」

この本の著者”かっこちゃん”こと山元加津子さんは、石川県の特別支援学校の教員として30年以上勤務してきました。泣き虫で、握力がなくて、重たいものが持てないし、縄跳びも下手っぴだし、方向音痴だし・・・生徒はみんなそんなかっこちゃんが大好きで、自分たちがかっこちゃんを助けてあげなくちゃと思っていました。かっこちゃんもみんなのことが大好きで、可愛くて仕方がありません。みんなのことが好き好き、大好きと思って過ごした教員生活を終えたかっこちゃんが書いた本は、名作「星の王子さま」の案内書でした。なぜなら、かっこちゃんが出会ったたくさんのこどもたちが、もうひとりの「星の王子さま」だったから。

「これまで出会うことのできた子どもたちとの時間は、『星の王子さま』を読んでいるようでした。その時間は、まるで砂漠の中で突然声をかけられたかのように、いつも驚きに満ちていて、宇宙の中の一人と一人の、運命的にも感じられる出会いだったと思います」と話すかっこちゃんです。

この本ではフランス語で書かれた原作と照らし合わせることで、日本語訳だけではわからなかった箇所を読み解いていきます。その作業を通して、子どもたちと星の王子さまが教えてくれた「本当に大切なこと」が鮮やかに浮かんでくる・・・そんな素敵な本なのです。

星の王子さまの小さな星に、ある時美しいバラの花が咲きます。その時は、この花が「バラ」だということも知らなかった王子さまは、お水をあげたりガラスの覆いをかぶせたりして、一生懸命世話をします。でもあんまり花がわがままばかり言うので、だんだんうんざりして、花を信じられなくなって、とうとう王子さまは星を出てしまうのです。かっこちゃんは、この部分を読みながら「子どもたちと親御さん」のことを考えていました。子どもたちを育てるというのは簡単なことではなく、いろいろ時間をかけて世話をしないといけません。障がいがあるお子さんならなおさらのこと、食事やトイレや着替えや、そばにいて手伝わないといけない。ときには、ひどく疲れてしまったり、病気になったりしてお母さんもお父さんも不安になる・・・かっこちゃんに電話で「自分の子なのに、可愛いと思えないの。自分を責めて責めて、苦しいの」と泣きながら話されるおうちの方もいたそうです。「自閉症のわが子を妻に押し付けて、自分だけ逃げて、家を出てしまった日を何度も夢に見る。僕は逃げるべきじゃなかった」と語るお父さん。あるお母さんは、いつもとても可愛がっている子どもなのに、その子の障がいを持っていないお兄さんが事故で怪我をしたとき、一瞬だけだけれど「事故にあったのがお兄ちゃんじゃなくて次郎だったらよかったのに、代われるものなら代わってくれたらいいのにと思ってしまった」と泣かれたそうです。

筆者は、ここを読んで、老健施設へショートステイに出かける義父のことを思いました。頚椎損傷で要介護5となり、首から下の自由を失った義父と同居して8年。リハビリが出来るとかお風呂に入れるということもあるけど、毎週ショートステイに出る本当の理由は、介護をしている私たちが休憩したり、自由に出かけたりするためなのです。先日、施設滞在中に発熱し、予定より早めに家に帰りたそうだった義父。電話で知らせてきた職員の方に「もう少し様子を見てください」とお願いしてしまいました。体力が落ちて嚥下状態も悪い義父は、咳が出たり熱が出ると不安でたまらないことでしょう。いろんな用事がたまっていたので、自分のことを優先してしましました。申し訳ない気持ちになった時、本の中のこんな一節が胸に響きます。

障がいのある孫が生まれたとき、その親になって苦労する自分の息子のことを思って、赤ん坊が死んでくれたら・・・と思ってしまったおばあちゃんのことです。「そのときそんなふうに考えたことをずっと覚えているから、この子がなおいとおしいと思うんやわ。確かに死んでくれたほうがいいというのは、とてもひどいことだけど、そんなふうに思ったからこそ、私は『優ごめんね、優ごめんね』とこれだけ優を可愛がるんやわ」

友だちの”宮ぷー”が脳幹出血で倒れて以来、生活を一変させて宮ぷーの病院に毎日通ったかっこちゃん。必ず会いにくるかっこちゃんを、意識がないと思われていた宮ぷーは待っていたのでしょう。そうした時間の積み重ねが、キツネと王子さまのように、かっこちゃんと宮ぷーとの特別な関係を築いたのです。ふたりはいっそう特別な友になり、いっそう愛しい家族のような存在になったのです。その人のために時間を費やし、一緒にいる時が積み重なって、その人はただひとりのユニークな存在になる。どこにでもいるキツネが、たった一匹の大切なキツネに、どこにでも咲いているバラが、たったひとつの大切な花になる。

このキツネの場面では、かっこちゃんがフランス語の原作にあたったことで、はっきりと分かったことが書かれています。地球にやってきた王子さまがキツネに「友だちになろう」と言うと、それはできない、「飼い慣らされていないから」とうところです。友だちになることが「飼い慣らす」ってどういうことだろうと思ったかっこちゃんがフランス語を見ると、それはapprivoiser という言葉で「時間をかけて慣れ親しむ」という訳があったのでした。やっぱり、何度も出会って、お互いをわかりあって、特別に大好きになることなんだと嬉しくなるかっこちゃんなのでした。

教員生活で出会った子どもたちとかっこちゃんも、長い時間をかけて、互いに大切な存在になっていったのでしょう。筆者にとっても、義父は特別な、apprivoiserしあった存在だと思います。

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<関連リンク>

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<筆者プロフィール>松中みどり(まつなか・みどり) フィリピン支援ボランティア/英語講師/ライター 初めて行った外国がフィリピンで、以来かの国の人々の明るさ温かさに魅せられ、様々なNGOや支援活動に関わる。1994年からは山岳先住民アエタの教育支援主宰。コミュニケーションツールとしての英語を各地で教えている。動物好きの自称「ケモノバカ」。飼い猫は黒猫で親バカ度も加速中。 ⇒松中みどりさんの記事一覧はこちら

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