病気や事故のために意識が無い「植物状態」と言われてきた人たちが意思を伝えられるようになるための支援活動をしている「白雪姫プロジェクト」。この活動の中心になっている元特別支援学校教諭の山元加津子さんの講演会が、2015年4月11日、大阪市北区の大淀コミュニティーセンターで開かれました。講演の後半には、指のかすかな動きを使って意思を伝える「指談」の実演も行われました。(取材・撮影、橋本正人)
この催しは、ボクシングを通して「白雪姫プロジェクト」を応援している田中雅晴さんが主催して開いたもので、講演会の冒頭では、田中さんが山元さんと知り合うきっかけになった「般若心経」についてのエピソードも披露されました。
山元さんは、般若心経のなかの「色即是空」について「すべてのものは空(くう)でできているという考えですが、わたしはすべてのものというのは遺伝子=DNAからできていて、そのDNA情報には重さがないということが空ということなのだと思います。宇宙にとっては自分は1つの細胞。だから自分はどんな役割をすべきか、心の耳を澄ませば、自分の役割はわかるはずなんです」と説明。「世の中には悲しいこともいっぱいあるけれど、それはいつも、いいことのためになるから、全部大丈夫」ということが般若心経には書かれていると解説しました。
山元さんは、特別支援学校での長年の教諭の経験から「脳幹を活発にすれば脳は回復する」と考えており、同僚の宮田俊也さんが脳幹出血で倒れた時は「一生『植物状態』で、意識も戻りません」と言われたけれども、回復を信じて支え続け、宮田さんが目を開き、意思を伝え、支えられて立つまでに回復した経験を説明しました。
後半の「指談実演」では、神戸市内に住む、小学校3年生の木津陽葵(ひなた)さんが、母親の美沙さんと一緒に登壇。陽葵さんは脳性麻痺などで、はっきりと話すことはできない状態ですが、大阪・茨木市内の牧野順子さんが、かすかな指の動き読み取って会話する「指談」で陽葵さんの思いを読み上げました。
「陽葵ちゃんは最近、ずいぶん上手に歩けるようになったけれど、なにか教えてもらったこととかあるんですか?」と牧野さんが聞くと、陽葵さんは指を動かして会話。「みんなと同じように歩けるなら、やりたいと思っています。言葉が出せるくらいなら、歩く方が簡単と、ふっと気が付いたことがありました。それで、お母さんに気持ちを言うと支えてくれるし、練習時間も増えたよ。そしたらいっぱい歩けるようになったよ。秘密は、ない」と答えました。この後、母親の美沙さんも指談で陽葵さんとの会話を披露しました。
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