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舞台の隅々で数々のドラマが脈動する「THE群像劇」 ミュージカル「グランドホテル」

筆者: 達花和月 更新日: 2016年4月14日

 

東京の赤坂ACTシアターで4月9日に開幕したミュージカル「グランドホテル」(東京公演は4/24まで、名古屋、大阪公演あり)。REDとGREENの2つのチームで、異なる演出、異なるエンディングで演じられるこの舞台。私はRED team公演についてレポートさせていただきます。

 

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

 

時は1928年。所は共和政権下、ドイツの首都ベルリンに在る”グランドホテル”。まずはオープニング「The Grand Parade」。セットは大きなシャンデリアがある豪奢なつくりのホテルのロビー。2階までの吹き抜け、1階の中央奥はホテルの玄関や二階への階段が回転式になっており、スピーディーに場面が切り替わります。ここではホテルの宿泊客たち、そして従業員たちと多くの人々がめまぐるしく行き交います。

 

客席の私達ひとりひとりが普通にそうであるように、登場人物達もそれぞれに人生のドラマを背負ってここに集います。

 

 

■共通点は「時間がない」ということ

 

ストーリーテラーはこのホテルの常連客らしい、オッテンシュラッグ医師(佐山陽規)。個々の人物が負う背景を簡潔に、時にシニカルに語り始めます。彼の紹介を受けた人々の、為人と現在の状況を切り取った短いドラマが次々と展開されて、オープニングが終わる頃には、私達観客は”グランドホテル”のそれなりの事情通になっています。

 

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

 

それぞれの人生を歩んでいる彼等の共通点は、ここ『”グランドホテル”に居る』という事と『時間がない』という状況。

 

重い病に侵され、医者からも見放されたユダヤ人の会計士、オットー・クリンゲライン(成河)。彼は人生最期の時間を”グランドホテル”で過ごしたいと、全貯金を叩いてホテルへやってきたところ、予約が入っていないと告げられ、必死に予約はした、ここに泊まりたいんだ、と訴えますが、半ば強引に追い出されようとしています。

 

そこへ、ホテルの常連客らしいフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵(伊礼彼方)が通りかかり、ホテルのフロントに都合をつけ、彼を宿泊できるように計らいます。この出会いをきっかけに、二人はお互いを「友よ!」と呼びあう間柄になります。

 

 

■残り少ない命の煌めきを伝える成河

 

自分の最期の時間を彩る場として”グランドホテル”の宿泊客の一員となれたことを喜び、オットーが歌う「At the Grand Hotel」。残り少ない命の瞬間の生気の煌めきを、成河さんののびやかな歌声は切々と伝えてきます。

 

成河さんは、グランドミュージカルはなんと初出演!ストレートプレイの舞台では、何度か拝見していますが、直近に観た池田有希子さんとの二人芝居「マクベス The Tragedy of Mr.&Mrs.Macbeth」は圧巻で、表現力・身体能力共に素晴らしい俳優さんです。その彼が演じる感情豊かなオットーからは、目が離せません!グランドミュージカル初出演にして主役をつとめ「エリザベート」でルキーニ役が決まっている、というのも頷けました。

 

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

 

 

■きっちりと「色男を魅せて」くれる伊礼

 

一方ハイソサエティながら、実情は借金まみれで首が回らず、ホテルへの支払いを7ヶ月も滞納しながら、”グランドホテル”へ滞在し続けているガイゲルン男爵は、美しい容姿に生来の優雅さと人好きのする性格で、ホテルの従業員達に人気があるようです。女性に相対する際の洗練された態度から、彼が色恋に関して百戦錬磨のナイスガイである事は想像に難くありません。

 

この辺り、端麗な容姿と洒落た所作、そして確かな演技力できっちりと「色男を魅せて」くれる、男爵役の伊礼彼方さんはまさにハマリ役です!

 

そんな男爵が、とある事から本人も想定外の「本当の恋」に落ちます。お相手はかつて一世を風靡した美しき孤高のプリマ、同じく”グランドホテル”の宿泊客で引退興行中のグルシンスカヤ(草刈民代)。ご存じの通り、草刈さんといえば元バレリーナ。グルシンスカヤがダンスやレッスンをするシーンなどは、その経歴が遺憾なく発揮されて、とても目を引く美しさです。

 

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

 

このお二人のシーンは、立ち姿だけでも一幅の絵のように美しいのですが、更には、恋に落ちたばかりの「恋人同士」。恋愛慣れしていなく、しかも不器用と思われる年上の女性であるグルシンスカヤの、男爵に対するなけなしの虚勢と戸惑いは、観ていてホントに可愛らしく、またそれを受けて男爵も彼女に情熱的にアプローチするので、このあたりの駆け引きは、まるでタカラヅカのそれのよう。美しくも情熱的な印象を受けました。

 

今迄数知れない浮名を流してきたであろうガイゲルン男爵が「運命の愛」として、グルシンスカヤと共に歌う「Love Can’t Happen」はとてもメロディアスで印象的な曲。彼女への想いを甘やかな声で抒情的に歌いあげる男爵の、サビでの高音のロングトーンには、客席から大きな拍手が起こりました。

 

男爵がグルシンスカヤを想って歌う、もう一つの曲「Roses at the Station」。この曲の場面は物語の頂点、必見です。まるで映画を観ているように流れるような演出、そして美しい描写。もしも二階席での観劇でしたら、きっと違う光景を見ることができると思います。

 

 

■超ド迫力の吉原と大山の掛け合い

 

長年にわたりグルシンスカヤを献身的に支える秘書のラファエラ(土井裕子)は、決して口に出来ない、ある「想い」を抱えてグルシンスカヤに尽くしていました。彼女が歌う「What You Need」は、内なる切なさとある覚悟を明確に感じさせます。

 

ホテルのアシスタント・コンシェルジュであるエリック(藤岡正明)は、妻が初産で12時間以上も苦しんでいる最中というのに、仕事を抜けられず、病院の妻の元に駆けつける事が出来ずにいました。最愛の妻とまだ見ぬ我が子の無事を案じつつも懸命に務めようとするエリックの姿には、男爵の台詞にもありますが、思わず「頑張れ、きっと大丈夫さ!」と、応援したくなります。

 

プライジングの私設秘書となる、タイピストのフレムシェン(真野恵里菜)は、ハリウッドでの銀幕デビューを夢見る可愛くてチャーミングな女の子。アメリカ人エンターテイナーのジミーズ(味方良介&木内健人)と歌い踊る「Maybe My Baby」等では、軽快で楽しいダンスを披露してくれます。物語の終盤では、彼女の抱える事情を理解したオットーとの絡みがありますが、このシーンにはジーンと来ました!

 

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

 

繊維工場の娘婿社長であるプライジング(吉原光夫)は、会社の経営に追い詰められ、彼の敏腕弁護士ズィノヴィッツ(大山真志)の、とある助言を受け入れます。この二人の経営を巡る緊迫した掛け合いシーンは超ド迫力です!

 

スペシャルダンサーの湖月わたるさんは「愛と死の化身」。気付くと、舞台上に影のように現れる彼女がクライマックスで踊るボレロ調のダンスは、とても雰囲気のある印象的なシーンでした。

 

 

■全体を彩る楽曲、複雑で繊細な構成が素晴らしい

 

これらの人物をそれぞれ次々と主役に押しだし、舞台中央ではないところでも、他の人物のドラマが展開している。物語全体がまるで生き物のように常に脈動している「THE群像劇」を生み出した、演出家のトム・サザーランド氏のプロの仕事にはひたすらの感動。

 

そして”グランドホテル”では常に音楽が流れている、と台詞にもある通り、全体を通して物語を彩る楽曲が、複雑で繊細な構成でとても素晴らしいでした。また、楽曲に負けないくらいのボリュームを持った、リー・プラウド氏振付によるダンスも見応えがあり、椅子を多用したパフォーマンスなどを、歌い踊りながらサラリとこなすキャスト陣の芸達者ぶりに目を奪われました。

 

まさしく、ストーリー、音楽、ダンスと三拍子揃ったミュージカル「グランドホテル」。見応えのあるドラマの連続に、眼も耳も心も楽しませてもらいました。

 

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

ミュージカル「グランドホテル」REDチーム公演より=撮影・岩村美佳

 

 

<ミュージカル「グランドホテル」>
【東京公演】2016/4/9(土)〜4/24(日) 赤坂ACTシアター
【名古屋公演】2016/4/27(水)、4/28(木) 愛知県芸術劇場大ホール
【大阪公演】2016/5/5(木・祝)〜5/8(日) 梅田芸術劇場メインホール

 

<関連サイト>
ミュージカル『グランドホテル』

 

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 二次元二次創作界の住人から、ひとりの俳優さんとの出会いをきっかけに演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、いろんな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。熱っぽく自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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