2015年10月、平等結婚式を挙げたおふたり、瓜本淳子さんと井上ひとみさん。女性同士のカップルで、職場も同じ、家族、友人、同僚に認められ祝福されているふたりのことをもっと知りたいとインタビューさせていただきました。
ひとみさんと淳子さんが暮らすお家を訪ねたのは、2018年3月9日、とても嬉しい再会でした。「レインボーフェスタ!2015×関西レインボーパレード」での平等結婚式の取材以来、一度ゆっくりお話したいと思っていたおふたりだったのです。動物病院の先生であるひとみさんと、同じ病院の看護師さんの淳子さん、とってもフレンドリーな歓迎大使・ラルクくんを始め、動物たちも一緒のご家族を訪ねてきました。インタビューは前後編でお送りします。結婚式の様子はこちらをどうぞ⇒最も大切な、最も短い言葉とは? 「レインボーフェスタ!2015」に参加して
――とにかくあの平等結婚式の姿がすごく印象に残っていたんです。おふたりは、出会った時から「結婚しよう」というふうに思っていたんですか?
淳子さん:結婚できるとは思ってませんでした。
ひとみさん:同性同士は結婚できないと思ってたし、もちろん式も挙げられないと思ってたので、全然考えていませんでした。ずっと一緒に住むんだなとは思ってましたけど。
――そうなんですね。出会いはいつ頃だったんですか?
淳子さん&ひとみさん:2011年です。
――平等結婚式は2015年ですよね。けっこう早い展開ですか?
ひとみさん:実は、平等結婚式の話が出るまで、まったく結婚のことは考えてなかったですね。
淳子さん:前の年(2014年)に、レインボーフェスタに遊びに行ったら、ゲイカップルの人たちが結婚式を挙げているのを見かけたんです。
ひとみさん:同性同士でも結婚式できるんやと思って。みんなからすごく祝福されてるふたりを見て、いいなあと思いました。そしたら、次の年はレズビアンカップルの結婚式をレインボーフェスタの方で企画しておられて、企画にかかわっていた友人から声をかけてもらったんです。「次はふたり、どう?」って。嬉しいけど、あそこに出るってことは、公開カミングアウトみたいなことですから。
――ですよね。
ひとみさん:そう。それで、その後のことがちょっと怖いなと思って。
淳子さん:動物病院のことがね。
ひとみさん:患者さんが何かで知って、嫌な方向で噂になったら病院に迷惑かけるかもしれないと思ったんです。でも、院長は友人でもあるんですけど、相談したら、「そんなん全然いいよ、そんなことで変な噂を言う人なんか、病院に来ていらんから」って言ってくれて。
――わー、すごい素敵!レインボーフラッグを掲げている動物病院ですよね。さっき前を通りかかって、夜だけど写真撮りました。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、カミングアウトのことや友人付き合いについてなどのインタビューを掲載しています。4月3日(火)掲載の後編には、出会いから、結婚式を経て、家族となった今の気持ちなどを掲載しています。
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■レインボーフラッグを掲げる動物病院
■母にカミングアウトをしてみたら
■ネガティブな反応はない
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■レインボーフラッグを掲げる動物病院
――じゃあ、おふたりは職場で出会ったということなんですか?獣医さんと看護師さんですもんね。
淳子さん:違うんです。私は全然違う仕事についてました。彼女が開業して、病院のお手伝いから始めて、だんだん人手も足りなくなってきたからということで、私が仕事を辞めたんです。
――そうだったんですか。
ひとみさん:働きながら、動物看護師の資格をとってくれたんですよ。
――全然関係ないお仕事だったのに、看護師さんになられたんですね、すごい!
淳子さん:今は看護師として同じ動物病院で一緒に働いています。
ひとみさん:動物病院を開業したのが2012年で、ふたりが出会ったのが2011年。病院で働いている人には、ふたりのことは知ってもらっていました。レインボーフラッグは当時から掲げていたので、それを見たLGBTの人たちは意味が分かるから、近辺のゲイやビアンのカップルさんたちが来て下さっています。
――なるほど。私も旗に反応しました。あ、ここがひとみさんと淳子さんの病院だなって(笑)。おふたりのカミングアウトについてもう少しお聞きしたいのですけど、いいですか?
■母にカミングアウトをしてみたら
淳子さん:私は、親友には早くから話してたんですが、親ですよね。ずっと打ち明けられなくて。フェスタの前日にカミングアウトしました。
――え、フェスタというと、平等結婚式の前日ですか!
淳子さん:はい。そしたら母が来てくれて、「写真が欲しい」と言って喜んでくれたんです。
――良かったですね!一大決心で話をされたんですよね。嬉しいですね。
淳子さん:そうですね。嬉しかったです。父はちょっと体調が悪くて、結婚式には来てなかったんですけど。
ひとみさん:来られなかったけど、お父さんの反応はどうやった?
淳子さん:お父さんもすごく喜んでくれてた。
――家族によっていろいろだと思いますけど、そんな風に喜んでもらえたら嬉しいですね。ひとみさんはどんな感じで周りに伝えたんですか?
ひとみさん:本当に親しい友だちにしか言ってなかったんです。今、動物病院を一緒にやってる友だちとかですね。結婚式を機に他のみんなにも知ってもらったんですけど、ほとんどの人が好意的な反応でしたね。「もっと早く言ってよ」みたいな人たちがほとんどで。
――ほんとですか、それは良かったですね。ご家族にはどうですか?
ひとみさん:うちは父は亡くなってるんで、母にだけ言ったんですけど、「あんた、レズビアンやったんか~!」って言われましたが、絶対母は知ってたと思います。それから「実は自分もFtXかもしれないと思ったことがある」と母親が言うのでびっくりしました。FtXって、えらい専門用語を使ってるなあって。
――FtXっておっしゃったんですか。お母さん、実はすごくいろいろ知ってたんだ。
*FtX-エフティエックスと読む。多様な性自認のひとつで、生物学的には女性(F=female)で、自身を特定の性別だと自認していないXジェンダー(女性か男性か定まり切らない流動的な性、中性、無性など様々な性のあり方)の状態のこと。
■ネガティブな反応はない
――友人や職場の知り合いなどとの関係で、カミングアウトの前後、何か困ったことはありましたか?
ひとみさん:カミングアウトしてからほとんどネガティブな反応はないです。ただ、ひとりだけ、大学の先輩から「本人はそれでいいかもしれないけど、ショックだ」と言った人がいましたね。どうショックなのか、ちゃんと話をしていませんけど。それから、前の動物病院で、休み時間に恋愛の話とか婚活とかの話になったら、その場に居られなくて困ったことがありました。動物病院は働く人の人数も限られて、狭い職場なので、ひとりに「気持ち悪い」と思われたらもう働けない、辞めざるを得なくなるから。
――レズビアンだと分かったら「ここで働けなくなる」とひとみさんが心配をしたということですね。でも言ってみたら案外大丈夫だったかもしれない?
ひとみさん:そうですね。カミングアウトの後に、「そうか、だから何か壁があるような気がしてたんだ」と言われました。早く話をしてくれてたら、休み時間に、相手が女性の恋愛であっても、恋話とか一緒に出来たのに、なんでもっと早く話してくれなかったんだって。もっと早く言ってよと怒られ気味なくらいですね。
淳子さん:今のこの時代、変な反応する人はいないよと言われましたね。
ひとみさん:そうやね。今時ひいたりする人、おらんよっていう感じでした。
――それは嬉しいですね。
ひとみさんと淳子さんのお宅は、暖かくウエルカムな雰囲気でした。駅から歩いて数分のところにある「トート動物病院」のレインボーフラッグに迎えられ、そこからまた数分のお家でも犬と猫の歓迎を受けて、幸せなインタビューとなりました。初めて会ったのときに、ふたりとも輝くようなウエディングドレス姿だったからか、セクマイ(セクシャルマイノリティ:性的少数者)のひとみさんと淳子さんにはネガティブな部分がほとんど感じられませんでした。笑顔の幸せカップルというイメージは、お話をうかがっても揺るぎませんでした。もちろん、将来への不安や、言葉にならない苦しみや悲しみも持っているおふたりは、だからこそ互いを信頼し、愛し合って暮らしていました。ふたりを祝福する人たちに囲まれて、あとに続くLGBTカップルの目標となるようなひとみさんと淳子さんでした。インタビューは後編へ。