漫画家・萩尾望都さんが、2011年の東日本大震災と福島の原発事故を題材として発表した短編漫画『なのはな』を、劇団スタジオライフが舞台化した作品『なのはな』 が、2019年2月27日(土)から東京と大阪で上演されます。作品には、福島県出身の作曲家・明石隼汰さんが「石田音寿役」でゲスト出演します。2018年11月15日に、萩尾望都さんと明石隼汰さん、劇作・演出を担当するスタジオライフの倉田淳さんらが登壇して開かれた製作発表のレポートが、劇団スタジオライフから届きましたので、一部をご紹介します。
『なのはな』は漫画家・萩尾望都が、2011年の東日本大震災および福島の原発事故を題材として同年に発表した短編作品。生まれた家を離れ避難先で暮らす福島の小学6年生・ナホは、津波で行方不明になったままの祖母と夢の中で再会。祖母のもとへ導いてくれたのは、人形を手にした西洋人の女の子で……。過酷な現実と幻想的なイメージがない交ぜになる日々の中、ナホが希望の糸口を見出していくまでが描かれる。
倉田が『なのはな』誕生までの経緯を尋ねると、萩尾は7年前の春の心情を丁寧に述懐。「テレビで震災や原発事故のニュースを見て、血の気が引くとともに作品を描く気力がザーッと引いてしまいました。『気持ちを明るくしなきゃ!』ということで親しい人たちと公園へお花見に行ったんですが、そこで『チェルノブイリでは汚染地域に菜の花を植えた』という話を聞きまして(※チェルノブイリ原発事故で汚染された農地では、放射性物質をよく吸収する菜の花によって土壌を再生しようという試みがある)。そこで初めて希望が見えた気がして、自分にとっての“お祓い”をするような気持ちで勢いのままに描きました。ただ、災害の渦中にいたら絶対描けなかった。私はちょっと離れていたから描けたんだと思います」。
一方、独自の作曲メソッドで数多くの有名CMソングを手掛けている明石は、子供の頃から萩尾作品の熱烈なファン。縁あって20年来“パソコンの師匠”という立場で萩尾と交流を重ねてきた。奇しくも福島県出身であり、この作品に対する思いもひとしおだ。そんな彼が今回、劇中に登場する『アララソング』の作曲を含めた劇伴をスタジオライフから依頼されたが、「この曲を歌う音寿という役を俺以上に演じられる人はないんじゃないか」との思いが募り、自ら出演を希望したのだという。
倉田は「スローガンのようにして声高に何かを叫ぶわけではないですが、ひしひしと、痛みや切なさが胸に迫ってくる作品。ページ数にすればたった24ページですが“たった”と言えない、ものすごい分量が詰め込まれています。これをどう芝居に起こすかと考えると頭が痛いんですけども(笑)、余計なことを足さず、シンプルにやりたいと思っています」と抱負を述べた。
(文・上甲薫)
<スタジオライフ『なのはな』>
【東京公演】2019年2月27日(土)~3月10日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
【大阪公演】2019年4月12日(金)~4月13日(土) ABCホール
http://www.studio-life.com/stage/nanohana2019/
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