公民権運動の時代、バスに乗り合わせた人々は… ミュージカル『VIOLET』開幕 | アイデアニュース

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公民権運動の時代、バスに乗り合わせた人々は… ミュージカル『VIOLET』開幕

筆者: 達花和月 更新日: 2020年9月4日

梅田芸術劇場と英国チャリングクロス劇場の日英共同プロジェクトによるミュージカル『VIOLET』日本キャスト版が、2020年9月4日(金)に東京芸術劇場プレイハウスで開幕しました。コロナ禍の影響で、9月6日までの3日間だけの上演です。出演は、唯月ふうか/優河(Wキャスト)、成河、吉原光夫、spi、横田龍儀、岡本悠紀、エリアンナ、谷口ゆうな、稲田ほのか/モリス・ソフィア(Wキャスト)、畠中洋、島田歌穂のみなさんで、演出は藤田俊太郎さん。『ファン・ホーム』で2015年のトニー賞最優秀オリジナル楽曲賞を受賞したジニーン・テソーリさんの軽快にして繊細なハーモニーが耳と心に心地よい作品を、開幕直前に行われた公開舞台稽古の様子からご紹介します。

ミュージカル『VIOLET』より=撮影:花井智子
ミュージカル『VIOLET』より=撮影:花井智子

開演前の舞台でまず目に飛び込むのは、木箱の上に置かれた木製の桶。その桶に向かって、『蜘蛛の糸』を連想させる白い1本のロープが天井から吊り下ろされ、「つるべ」のような形になっています。これらを自らの空洞に収めるように置かれた中央に穴の開いた円盤状の台座。この円盤は、序盤で一気に天井に吊り上げられ、シャンデリアのように物語を終始見守ります。吊られることで露わになった円盤下の水紋のような文様と、その下で、つるべの桶を持って立つヴァイオレットの存在で、舞台上のイメージは光の届かない井戸の底へと変わって行きます。

ほかに大掛かりなセットはなく、組み合せるとナッシュビルでの休憩場所のバーのカウンターや、メンフィスのモーテルのベッドに変化する長方形の箱が2つと、バスの座席でもある様々なデザインの木製の椅子が置かれているのみで、限りなく素舞台に近いステージ。

コロナ禍で中止になった2020年4月の上演で予定されていた“シアター・オン・ステージ”形式(舞台の四方を客席が囲む)の客席は、舞台の上下奥に配置され、演者のスタンバイ席として使用されます。そこに設置された三台のカメラが、物語の要所要所で、それぞれの角度から人物をズームしてみせる。このシンプルなセットで、ノースカロライナ~ナッシュビル~メンフィス~そして、タルサまでのヴァイオレットのグレイハウンドバスの旅の情景が綴られていきます。

ヴァイオレット(唯月ふうかさん/優河さんとのWキャスト)は、13歳の頃、薪を割っていた父親の持つ斧が偶然飛んできて顔を切り裂かれて以来、見るも無残に変わってしまった自分の容姿に凄まじいコンプレックスを持ち続けて生きてきました。

25歳になった彼女の望みはただひとつ。現代医療では綺麗に整える事ができない自分の顔を、神の力を伝えるテレビ伝道師(畠中洋さん)によって、銀幕の美しい女優たちのそれぞれに秀でたパーツを持ち寄ったような、美しい顔にしてもらうこと。容姿のために周囲からの好奇心に曝され、同情や不当な差別を受け続けた彼女の、自身の自我を他人に踏み荒らされないための処世術は、おそらくほとんどの方が暗に共感するだろうもので、観ていてチリリと胸を焼きます。

時代は1960年代のアメリカ。冒頭に流れるキング牧師の映像が示すとおりの、公民権運動渦中の時代。物語はヴァイオレットの「なりたい自分になる」ための旅で出会う人々との出来事が主軸ですが、その中に人種差別の厳しい現実が随所に織り込まれ、展開します。

ミュージカル『VIOLET』より=撮影:花井智子
ミュージカル『VIOLET』より=撮影:花井智子

※アイデアニュース有料会員限定部分には、公開舞台稽古レポートの全文と写真を掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■アフリカ系と欧州系の兵士、老婦人…、会話が変化を生み

■亡き父親とヴァイオレットの心象風景に、思わず涙腺が

■エリアンナ・谷口ゆうな・横田龍儀・岡本悠紀の華麗な歌声

■井戸を象徴していた天井の円盤が、ラストで変化し…

<ミュージカル『VIOLET』日本キャスト版 >
【東京公演】2020年9月4日(金)~9月6日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
9月4日(金)13:00/18:30
9月5日(土)13:00/18:30
9月6日(日)13:00
公式サイト
https://www.umegei.com/violet/

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 遠方の友人を誘って観たお芝居との出会いがきっかけで、演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、さまざまな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。熱っぽく自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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