P&Gとパンテーンの「自分らしさ」を強烈に印象づけた「#PrideHair」CM | アイデアニュース

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P&Gとパンテーンの「自分らしさ」を強烈に印象づけた「#PrideHair」CM

筆者: 橋本正人 更新日: 2020年10月24日

筆者は、これまでCMというものがあまり好きではありませんでしたが、この「パンテーン」の広告を見て、その認識が吹き飛びました。テレビや新聞のニュース報道より、映画より、舞台より、小説より、リアルに真実を伝える力をCMが持つ時もある。そう思った「パンテーン『#PrideHair』プロジェクト」のCM動画を紹介します。

PrideHair この髪が私です。「元就活生が、いま伝えたいこと。」 PANTENE (パンテーン) TVC60秒動画

このCMは、ヘアケアブランド「パンテーン」を展開するP&G(本社:神戸市)が、自分らしさを表現できる就職活動について考える「#PrideHair」プロジェクトの一環として作成したもので、ふたりのトランスジェンダーの元就活生が、体験談を語っています。

「いまがつらくても、頑張ってください。3年後とか5年後には、あなたは笑ってます」という部分、何度見ても涙が止まりません。

P&Gが発行したCMのニュースリリースによると、P&Gは自社の採用活動においても、役員・人事部門・面接官に対してLGBTQ+をはじめとする多様性への理解を深める研修を実施。2014年からエントリーシートの写真欄を削除し、2019年には性別欄に「その他」という選択肢を設定しています。2021年には生年月日情報も削除することで、年齢によるバイアスを排除することを明らかにしています。

<広告に出演した、おふたりのメッセージ>

トランスジェンダー男性:動画の中でもお話しましたが、男性として就職活動をしようか、女性として就職活動をしようか、結論が出なかったので 1 年遅らせてから就職活動をしました。悩むことは多かったのですが、人の温かみを感じることもあったし、今、自分らしく働くことができています。過去の私と同じように悩んでいる方やこれから就職活動する LGBTQ+、個性の表現で悩む多くの就職活動生にとって、今回のプロジェクトが何かのきっかけになれたら嬉しいです。

トランスジェンダー女性:「選考に不利に働くのではないか」「他の男の子みたいに髪を切ったほうがいいのではないか」といった不安を抱えていました。 周りに就職活動をする LGBTQ+当事者のロールモデルを見つけられず、孤独な日々が続きました。ただ、髪を切ることは自分のプライドを捨てることになると思ったから、ありのままの自分に自信を持つことにしました。あのとき逃げなかったからこそ、今では誰かのロールモデルになれるかもしれない。このプロジェクトを通じて、自分らしく就職活動をしたい方々が少しでも前向きになれたらと思っています。

今回の『#PrideHair』プロジェクトの背景について、P&Gインターナショナル オペレーションズ シンガポール APAC ヘアケア フォーカス・マーケット シニア ブランド ディレクター の大倉佳晃さんは、次のように説明しています。

大倉佳晃さん=ニュースリリースより
大倉佳晃さん=ニュースリリースより

パンテーンが独自に行った調査では、76%のLGBTQ+の元就活生が、「就職活動で、セクシュアル・マイノリティであることを選考企業に隠したことがある」と回答しました。その理由として最も多かったのが、「選考に影響があると思ったため」でした。また、82%の経営者・人事が、「セクシュアル・マイノリティにとってフレンドリーな就職活動のための配慮や取り組みを実施できていない」と回答しました。これらの背景を受け、LGBTQ+の元就活生の体験談をもとに、自分を偽らずに、自分らしさを表現できる就職活動について考える「#PrideHair」プロジェクトを 2020年9月30日より展開しています。本動画を通じて、すべての就活生が、自分をアピールしたいと願う就活という場面で、自分を自分らしく表現できるよう、また自分らしい髪で前向きな一歩を踏み出すきっかけになれたらと願っています。

LGBTQ+のいずれかに該当し過去就職活動をしたことがある20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
LGBTQ+のいずれかに該当し過去就職活動をしたことがある20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
経営者・人事担当者の20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
経営者・人事担当者の20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
経営者・人事担当者の20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
経営者・人事担当者の20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
LGBTQ+のいずれかに該当し過去就職活動をしたことがある20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)
LGBTQ+のいずれかに該当し過去就職活動をしたことがある20歳から59歳の男女300人にインターネット調査(2020年9月)

こちらはパンテーン「#PrideHair」のページに掲載されているLGBTQ+の元就活生の体験談の抜粋です。

【ノンバイナリー・30 代・小説家】就活でまず初めに戸惑ったのは、履歴書等の性別欄。「男」と「女」しかないので、毎回仕方なく「女」に〇をつけました。でもそのとたん自分が消えていく感じがする。ハローワークの面接セミナーでは手の置き方まで、女性らしくするように注意される。些細なことばかりですが、悔しい思いをしていました。(中略)今は外国語学者として、作家や翻訳者の英語の文章に潜んでいる LGBTQ+・障害・人種等に対する差別的な言葉遣いを直す仕事をしています。この仕事ができる幸せを感じているし、髪や服装も自由。「今日は何言われるだろう」と心配したり、「何を言われてもキレるな」と自分をなだめることもない。それもまた、泣きたくなるくらい幸せなことです。

【レズビアン・31 歳・建設系会社勤務】就活は「女性=スカート、ヒール」というイメージが非常に強く、スカートには抵抗があってパンツスーツにしたものの、普段履かないヒールを履きました。髪もいつもはショートヘアのことが多く、その方が自分らしいと感じますが、就活の際は伸ばし黒に染めました。自分らしくいることより、周りから浮かないよう意識を強く持っていたと思います。(中略)今まだセクシュアリティについては会社の人に伝えてはいませんが、服装や髪型を自分らしくしていて、少しずつではありますが私自身も前へ進んでいる気がしています。

【バイセクシュアル女性・27 歳・コンサルティング会社勤務】入社直後、不安はありましたが、上司含め、何人かの同僚にカミングアウトしました。差別されることもなく安心した一方、差別のない環境づくりを企業の規則や理念に含めるというのが理想だと思います。LGBTQ+の皆さんにはいろいろ不安があると思いますが、徐々にでもいいので、勇気を持って、自分らしくいる努力を忘れないようにしてほしいと思います。自分らしく他の人と向き合うことで、自分らしいあなたと向き合ってくれる人たちが増えていくと思います。

【トランスジェンダー女性・30 代・飲食店店長/司会業】初めての職場だけは男性を装っていました。運送業でしたが、男女で仕事内容が違ったり男性だけ残業があったり。残業をしないと「男なのに」と言われて、休みがちになりその後辞めました。次は傷つかなくてすむ職場にしたかった。高齢者が相手なら優しい人が多いのではないかと、老人ホームを選びました。事前にジェンダーのことを伝えてあったので、初日からみんなが「ちゃん」づけで呼んでくれた。その気持ちが嬉しかったです。(中略)LGBTQ+アライ(理解し支援する人)のレインボーのフラッグを壁に大きく掲げてくれている大企業もあります。パッと目に入るだけで、味方がいるんだ、と生きていく希望になります。私は身長が 185cm あって靴のサイズも大きいけれど、大きい女性用靴を展開している企業もあります。LGBTQ+への理解はこれからどんどん進んでいって、もっと過ごしやすい世の中になるんだと思います。未来を信じてもいいかな、未来に期待かなと思い始めています。

こちらは「パンテーン『#PrideHair』プロジェクト」フルバージョンのCM動画です。

CMの中で、トランスジェンダーの男性が「あなたは誰かのロールモデルになる」と語る場面がありますが、P&Gという会社の「自分らしさ」を強烈にアピールしたこのCMが、日本の、世界の、CMのロールモデルになって欲しいものです。

<パンテーン『#PrideHair』プロジェクト>
期間:2020年9月30日(水)~
公式サイト
https://pantene.jp/ja-jp/hair-we-go/pride-hair

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<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 産経新聞記者から朝日新聞記者となり、大阪本社整理部次長、デジタル事業本部サブマネジャーなどを歴任。宝塚歌劇などを扱うサイト「アサヒコム・スターファイル」の編集責任者を6年間つとめ、独立。アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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