藤岡正明さんが企画・演出する『Musical Lovers2024』が、2024年10月26日(土)と27日(日)に、東京・玉川せせらぎホール(玉川区民会館)で開催されます。また、藤岡正明さんの3年ぶりとなるライブツアー『Voyager』が、11月2日(土)横浜・Yokohama mint hall、11月10日(日)福岡・ROOMS、11月16日(土)名古屋・名古屋 LION LIMITED、11月17日(日)大阪・Soap opera classics-Umeda-、11月23日(土)東京・浅草花劇場で開催されます。インタビュー前編では、藤岡さんと「Musical Lovers 2024ディーバ出演者オーディション」で選ばれた川嵜心蘭(かわさき みらん)さんの対談を、後編では『Voyager』についての藤岡さんのソロインタビューをお届けします。
今回が3回目の開催となる『Musical Lovers2024』は、自らもステージに立ち、音楽を愛する藤岡正明さんだからこその、各キャストの魅力を引き出せる唯一無二のミュージカルコンサートです。出演されるのは、川嵜心蘭さん、spiさん、ソニンさん、林翔太さん、東山義久さん、藤岡正明さん(50音順)です。前編の対談では、今回オーディションを開催された思い、オーディションの審査員として参加された伊礼彼方さんとソニンさんとのやりとり、川嵜さんがミュージカルの世界に進まれたきっかけ、川嵜さんが選ばれた理由、藤岡さんが19歳のときに出会った、ピーボ・ブライソンのエピソードについてのお話、『Musical Lovers2024』に向けての川嵜さんと藤岡さんの思いなどについて伺った内容を紹介します。
インタビュー後編では、2024年11月にライブツアー『Voyager』を開催される藤岡正明さんのソロインタビューをお届けします。アルバムのタイトル「Voyager」に込められた思い、アルバムに収録予定の新曲のこと、一人でアルバム制作を行う孤独、6月に行われた単独ライブ『ZERO Gravity』で感じたこと、ライブツアー『Voyager』に向けての思いなどについてお話ししてくださった内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
――3回目の『Musical Lovers』ですね。今回は女性キャストをオーディションで募集されましたが、以前から構想はありましたか?
藤岡:はい。昨年の『Musical Lovers』後、うちの社長に「オーディションをやりたい」と話したんです。今後、僕自身も違う動きをしたいと考える中で、既に活躍されている俳優さんというより、本当にこれから世に出ていく新しい才能にすごく興味があったことと、自分自身も新たな成長というか、新たな扉を開けられる気がしたんです。そんな僕の想いをソニンさんや伊礼彼方くんに相談して、参加してもらうことになったんです。
彼らも「これからのミュージカル業界を、どうしていくべきなのか?」という意識を持っている仲間なので、すごく力になってくれました。成河くんや、井上芳雄くんもそうなんですけど、同じようにミュージカル業界や舞台業界に「自分自身の仕事さえあればそれで良し」とは思っていない人たちなので、「次に繋げる運動」をやっていきたいと思ったのがきっかけです。
――川嵜さんは、オーディションの情報をどこで見つけられたんですか?
川嵜:母が見つけて教えてくれたんです。私は今までプロの舞台に出たことがないので、「本当にできるのかな?」と思いました。夢みたいな話でもあり、疑いながらオーディションを受けました(笑)。
藤岡:「疑ってた」って言ってたもんね。オーディション会場の部屋のドアを開けるまで。「本当にこの部屋にいるのかな?」って(笑)。
川嵜:本当にびっくりするような内容だったので、「詐欺なんじゃ?」と思っていました(笑)。
――川嵜さんは、「松風ミュージカル21」にいらしたそうですね。きっかけはなんだったのでしょう?
川嵜:元々はピアノを習っていて、歌のコンクールにも出ていました。そんな中、何か音楽系の習い事をやりたいと思って、地元を探していたら、たまたま「ミュージカル教室」を見つけたんです。当時は小6で、本当に何もわからない状態でした。ミュージカルを知ったのも「松風」に入ってからでしたが、「なんか楽しそうだから、やってみたい」と思いました。
――そこで学ばれて、今年高校を卒業して上京されて。周りにミュージカルが好きになる環境があったのではなく、ご自身で飛び込まれたミュージカルの世界だったんですね。
川嵜:そうです。ただ「好き」という気持ちだけですね。学校も普通の高校でした。
――『THEカラオケ☆バトル』や『歌唱王』も、ご自身で応募されたんですか?
川嵜:最初に出演したのが、2021年12月の『歌唱王』です。高校一年生の時でした。自分で動画を送って、オーディションを受けました。出演後は「ライブ出ませんか?」とお声がけいただくことも結構あって。『THEカラオケ☆バトル』も、『歌唱王』を見てくださった方から、「カラオケバトルのオーディション行かない?」と声をかけていただいたのがきっかけです。
――そんな中、本格的に「ミュージカルの世界で活躍したい」と思ったきっかけはありましたか?
川嵜:「松風」で、元々宝塚歌劇団にいらっしゃった鈴木良枝先生(松風都巳さん)が、「声と歌が良いね」とすごく褒めてくださったんです。教室のみんなも「すごーい!」と言ってくれたりしたので「嬉しいなー!」と思って、ミュージカル部門のあるコンクールを受けて。そこからいろんな評価をいただいて、本格的にやりたいと思いました。
――今回のオーディションは「プロアマ問わず、経験不問」と、広めに募集されていたイメージですが、手応えはいかがでしたか?
藤岡:本当にありがたいことに、200人ぐらいのエントリーがありました。驚いたのは、かなりレベルが高かったということです。(川嵜さんに)…動画観た?
川嵜:観ました。
藤岡:上手い人、いたでしょう?
川嵜:本当にたくさん…。
藤岡:その中から28人に絞って、対面でオーディションしました。
――28人の方のオーディションを、対面でされたんですか!?
藤岡:なるべく直接見たいと思いましたし、グループオーディションにしたくなかったんです。短い時間ではありましたが、我々(審査員のソニンさん、伊礼彼方さんと)で見させてもらったので、1対3という状態だったんですけど、かなりレベルが高くてびっくりしました。オーディションを受けてもらってから、2、3回のボイスレッスンを僕自身が担当、もしくは誰かボイストレーナーに入ってもらうのもありかなと思っていたんですけど、「その必要なさそうだな」って感じで(笑)。動画を観ていただいたらわかりますが、MARIA-Eさんや須藤香菜さんも来てくださっていて。僕らが共演しているプロの人たちで、上手いのはもうわかってるわけです。だから本当に困りましたね(笑)。
――原石を見つけて磨くところからと思っていたら…。
藤岡:プロアマ問わずにした理由は、「ミュージカルのプロの世界で戦っていて、とても魅力もあって才能も力もあるのに、機会を得られずにくすぶっている人たちにも参加してもらって、そこをしっかりフィーチャーできるようなもの」ということも考えていたんです。結果として、本当に素晴らしい才能がたくさんエントリーしてくださったので、審査が大変でした(笑)。
――対面審査のダイジェスト映像を拝見しましたが、本当に上手な方々ばかりでした。
藤岡:そうなんですよ。川嵜さんみたいに「全く舞台経験がないです」という人もいましたし、プロとなると、普通に東宝とか梅田芸術劇場とかホリプロとかの大作のミュージカルをたくさんやっているような、大きな制作会社で立っている人たちより上手い人もたくさんいて…。でも「ミュージカル」って、芝居と歌とダンスだから、歌だけ上手くても駄目ということもありますから。
――そうですね。
藤岡:(川嵜さんに)ぜひ覚えておいて。ミュージカルに出ている人が全員、本当に歌も芝居もダンスも上手いわけじゃないから。野球のイチロー選手みたいな「攻走守」全部揃っているのが「ミュージカル俳優」だと思うでしょ。もう俺なんか、わかりやすくダンス全くできなくて、自慢のように「日本のミュージカル界で、5本の指に入るぐらいダンス踊れません!」って堂々と言ってるぐらいだから。それでも何とかなっちゃうから大丈夫!
川嵜:はい!
藤岡:「芝居・歌・ダンス」3つのうち、2つ潰せば何とかなるかなと思ったんですけどね(笑)。そういう意味では、逆にこの28名が揃ったら、「“歌のミュージカル”は、できちゃうんだろうな」というぐらいでしたね。
――審査員として伊礼彼方さんとソニンさんが参加されましたが、どんなやりとりがありましたか?
藤岡:まず一番最初にソニンと彼方に「審査員をやってくれないか」と連絡をしました。ソニンは「今、そういうことを意識している時期だから、ぜひやらせてもらう」と。彼方からは「藤岡がそういうことを考えていることを、俺は本当に買っているから、力になるつもりではいるけど、ひとつだけ聞きたいことがある。どこをゴールにしたい?」と言われました。例えば一人を選んだとして、その一人にミュージカルのコンサートに出演してもらうというところで終わらせたいのか、その先も見据えているのか、どっちなんだと。そう問われたときに、「正直、そこは何とも言えない」って答えたんです。
プロでやってる人は事務所に入っていたりするので、「こちらがどれだけ介入するか」という話にもなってくる。もしアマチュアの人が選ばれたとしても、その人の意思があるじゃないですか。だから「今すぐには決められない」と伝えたんです。その代わり、我々がやるべきこと、僕が目指しているところを2人に伝えました。
一点目はもちろん、『Musical Lovers』のコンサートの成功ですね。そしてこの成功のためには「舞台・ミュージカル業界で、長く様々な役をやってきた我々キャストと混ざっても、お客さまから見て納得してもらえる、説得力のある表現者を選ぶべきだ」と。二点目は「我々が選んだ表現者を、ミュージカルの世界に自信を持って送り込んでいきたい」ということ。「この人がオーディションに残ったとしたら、どういう役に向いてるんだろう」とか、声質や年齢などのさまざまな観点で、3人の共通見解を持ちたいということを伝えました。
――今回の公演だけではなく、その先も見通せる人材を選ばれたということですね。
藤岡:そうです。今だと「元々入りたいと思っていた事務所はある?」と話を聞いたり、それなら繋げてあげたいとか、これから本当にミュージカルの世界で戦っていくための、一番最初のちょっとしたサポートをやらせてもらえたらと考えています。他のプロジェクトで会ったり、一緒に企画することがあるかもしれないですし、逆に僕自身が何か別の現場でオファーするとか、あるいはどこかの制作会社に紹介をするとか。そういったことも含めて「できる限り、できる範囲のサポート」をさせてもらおうと思っています。
――もう、今後のお話もされているんですね。
藤岡:ちょっと伝えたよね。「このコンサートだけじゃなく、できる範囲でいろいろサポートできたらと思ってます」って。
川嵜:はい。
――審査側の思いを聞かれて、いかがですか?
川嵜:今回のこの『Musical Lovers』というオーディションだからこそだと思います。そこまでは他ではやってくれないので、そこもちょっと期待して受けたところもあります。母と相談して「このオーディションだったら、もしかしたら自分の進みたい道に近づけるかもしれない」と思っていたので、受けて本当によかったです。
藤岡:ソニンと彼方と話していたのは、ミュージカル業界の活性化であったり、より市民権を高めていくことであったりで、いちミュージカル俳優、舞台俳優として、そこに少しでも貢献できる人間でいたいと思うんです。今の日本の舞台業界、特にミュージカルは作品のファンではなく、俳優のファンが多くて。その俳優がいなくなった途端に、全く集客ができなくなってしまうとか…。例えば読売演劇大賞のノミネートを受けるような素晴らしい作品があったとします。その場合、作品として評価されているわけですが、再演でキャストが変わって、そのキャストに知名度や集客力がなかったりすると、それだけでもうチケットが売れない。そういう現象ってあるじゃないですか。
――そうですね。
藤岡:それが日本の現状だと思うので、別に否定しているわけじゃないんです。でも例えば、韓国はどんどん変化しているんです。ブロードウェイやウエストエンドみたいなシステムを導入しているし、国の助成がすごいので、舞台業界が活性化し、大きな産業になっているんです。「じゃあ、日本はどうするんだろう?」と思ったときに、もちろん自治体にも入ってもらわなきゃいけないだろうと思うんですけど、今はその前の段階であるというか…。だからもっと活性化させて、「どんどん若い人が出てきて、いい作品が生まれている」という状況の一端を担わないといけないと思いました。そのためには、「Musical Lovers」は、いちコンサートで終わっちゃいけなかったんです。だからソニンや彼方と「何ができるのか?」という話をしました。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、川嵜さんが選ばれた理由、藤岡さんが19歳のときに出会った、ピーボ・ブライソンのエピソードについてのお話、『Musical Lovers2024』に向けての川嵜さんと藤岡さんの思いなど対談の全文と写真を掲載しています。18日には、2024年11月に開催されるライブツアー『Voyager』についての、藤岡さんソロインタビューをお届けします。アルバムのタイトル「Voyager」に込められた思い、アルバムに収録予定の新曲のこと、一人でアルバム制作を行う孤独、6月に行われた単独ライブ『ZERO Gravity』で感じたこと、ツアーに向けての思いなどについてお話ししてくださった内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■藤岡:動画審査より、オーディションで上を行った川嵜さん。生で聴く魅力の強さ
■藤岡:圧倒的に上手いピーボ・ブライソン。周波数単位でピッチが合っていて…
■川嵜:大学のテストの日と重なった対面オーディション。受かったのは夢じゃないかと
■藤岡:「起承転結」の「結」。奇跡の『レ・ミゼラブル』メドレーは、今年まで
<『Musical Lovers2024』>
【東京公演】2024年10月26日(土)〜10月27日(日) 玉川せせらぎホール(玉川区民会館)
公式サイト
https://musical-lovers.bitfan.id
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愛がたくさん詰まった素晴らしいコンサートでした。
インタビューでは語らなかった、もう一つのミューラバ開催の意味を会場で語ってくれた藤岡くんの思いを聞き、涙が止まらなかった。
やはり彼は日本の演劇界、音楽業界を背負って立つべき人だと確信しました。
人に希望を与えることのできる、このコンサートを企画した藤岡くんに最大の賛辞を贈りたい。
にしても、川嵜心蘭ちゃんの肝の座った歌いっぷりに感服した。
歌声の演技力が素晴らしかった。
藤岡くんとのA Whole New Worldは、絶対聴くべき1曲です。