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来た観た書いた:(3)「死ぬっ程大変!」、『光射す場所へ歩く君たちへ』山本・三上対談(下)

筆者: 達花和月 更新日: 2016年6月7日
連載:来た観た書いた(3)

6月8日に開幕する「AUBE GIRL’S STAGE 第1回公演『光射す場所へ歩く君たちへ』」脚本担当の山本夢人さんと、演出担当の三上陽永さんの対談インタビュー、「下」をお届けします。(「上」は⇒こちら

三上陽永さん=撮影・達花和月

三上陽永さん=撮影・達花和月

――では、プロジェクトの土台のお話が聞けましたので、今…キャスト26名が合流して、お稽古が始まって一週間近く経ちますが、どんな感じですか?という大振りな質問をここで投げかけてみていいでしょうか?

三上:死ぬっ程大変ですよ! 26人ですよ。26人のWキャストで、やっぱり規模的にも…具体的な話をすると、まず稽古場も、もっと広くないと、ずっと全体ではとれないし。というか、そういう事も多分手探りでこれからやっていかないといけないんですよ。「やっぱこれだったらもっと、必要だね」とか、逆に「減らした方がいいね」っていうのを手探りでやっていく、とは思っているので、そこはいいんですけど、じゃ、どうか?っていったら、大変は大変です。それはやっぱり、(キャスト全員の)予定も中々合わないから、(稽古参加の)NGも出てくるし。言ってしまえば、役者のレベルも、すごく経験のある子も居れば、素材としては光るけれども、あまり経験が無いって子も居ますし。じゃあその経験の浅い子に教えてる時には、経験ある子は、何してればいいの?とか。26人全員、凄く有り難い事に皆やる気があるんですよね、今回。ものすごく。で、物凄くやる気があるって事は、26人のベクトルがあって!。

山本:ははははは。

三上:それを受け止めるっていうのは…。だから演助(演出助手)で入ってる杉浦とかも、もう、ヒーヒー言ってます。

山本:僕もそうなんですけど、(三上さんの演出は)例えば、「このAという役者さんは、こういうところが良いからこうしよう。Wキャストで同じ配役のBという役者さんは、こっちの面で良いからこうしよう。」っていって、そういうオーダーメイドな演出をするんですよ。そうすると、めっちゃ大変で!だから「俺について来い!」って言うだけの演出をする人が多いんだけど、でもそれは簡単だけれども「…ウン…」って言うところで。26人、それぞれの導き方を全部創り上げていくっていう事をやっているんで、それが凄いと思います。

■『役者の個性』は無限に面白いなと思います…大変ですけど!

――Wキャストで同じ脚本を使っているけれども、演じる役者の特性によって演出を変えていらっしゃると!

山本:そう。

三上:それ、でも僕凄く勉強になってて、苦しいんですけどね。もう、毎日多分「あと一週間、一週間あれば」って思いながらやってるんですけど。苦しいんですけど、ただすごい面白いのは、やっぱりこれだけ役者が違うと、芝居の見え方も違うし、関係性も違うし、ってなった時に、演劇の面白さをすごく僕は感じたんですね。普通、「代わりは誰でも居る」と言われつつも「でも、あなたの代わりは、やっぱりあなた以外には居ない」って言うのが。この人、この役者さんのこの『個性を活かす』っていう風な気持ちは(初めは)無いんですけれども、自然とやっぱり「役者Aさんと役者Bさんの二人の関係だと、こっちの同じW(キャスト)の役者Cさんと役者Dさんの関係と同じ訳が無い!」っていう方に自然に流れていく。そうすると、時間も無いし、ホントはそんな事したく無いのに、やっぱりそういう風に流れていくっていうのは、その『役者の個性』っていうのは、なんかすごく無限に面白いなとは思います。…大変ですけど! 首を絞めてますけど。

山本夢人さん=撮影・達花和月

山本夢人さん=撮影・達花和月

■「今回駄目だったら終わろう」ではなく、次もう1回、来年も3回、って

――お話を伺って、役者のテイストよって演出が変わるのであれば、Wキャストどっちも観たいな、という気になってきました。

山本:ふふふふふ。

三上:だから『Wキャストの意味』ですよ!

三上:普通、Wキャストでも演出は同じだから、二人の役者が頑張って同じ事を演るんですよ。それがすごい嫌で。でも普通Wキャストってそうなんです。だからそれを200%裏切りたい!もし(この作品を)間違って2回観ちゃった、って人が居たとしたら。「あれ?同じ作品か?コレ?」っていう感想が出る様にしたい。その代わり、すごく際どいところです。もうホント間に合うのかどうか、っていうとこもあるし、こんなに、絶対に成功目指しますけど、ただ、もし敗北したら。

三上:言いたくないですけど(笑)。でも、敗北するんだったらもう、ボロクソに敗北したいです。もう、皆にもやるとこまでやって貰って。だったらもう、皆も「悔しーーーっ!!!」って言う。だから、それが「今回駄目だったら終わろう」というのではなくて、もうガンとして今、(山本さんが)仰ってるみたいに、次もう1回やります。来年も3回やります、っていう。もう死ぬ気でいるので。

三上:それがなんか、そこは信用できるな、っていう。だから、勿論良い作品創る為にぶつかりもしますしね。でもその位、お互い血を流しながら、で、皆にも血を流して貰いながら、やれたらなぁとは思いますけどね。熱すぎて困るでしょ?

■オレノグラフィティは、音楽が役者にどれ程大事か解ってる

――いいですねー! では、その熱い想いを支えて下さる『三上組』の強力なスタッフについても少しお願いします。音楽は、オレノグラフィティさん(『劇団鹿殺し』所属)。

三上:僕は、オレノグラフィティはもう絶大な信頼を置いていて、オレノの創る曲も素晴らしくて、それはもうお客さんも知ってるんですけど、僕がでも本当に素晴らしいって思うのは、ホントに演出家に寄り添ってくれるんですよ。

――おぉ!

三上:もう、「僕の音楽がこういう音楽だから、いいでしょ?」っていう風な「僕はこういう価値観で創ったんで、これでいって下さい」っていうのが一切無いんです。例えば欲しい曲のイメージを、僕とかはすごく抽象的な言い方でしか説明出来ないんです。でもそれを僕の抽象的な言葉を、更に彼は彼で抽象的に汲み取って、彼の中のイメージ映像で僕に伝えて、っていう風なキャッチボールを、ここまで丁寧にしてくれるの?って位してくれる。

――嬉しいですね。

三上:『ぽこぽこクラブ』でお願いした時もそうでした。初日開いた時に「ごめんなさい、ちょっとここだけやっぱり全体通したの観たら、変えたい」って言って、その場で変えてくれたりとかするんですよ! それ位音楽に対して凄い情熱的な人だし、やっぱり彼は『役者』なので、音楽が役者にとってどれ程大事か解ってるから、そういう意味でも絶大な信頼を置いてます。

■振付の下司は天才、これからどんどん上に行く人

――振付の下司尚実さん(『泥棒対策ライト』主宰)については?

三上:振付の下司に関しては、僕はもう天才って言ってるんですけど、もう才能溢れる方で、僕の範疇じゃないところから弾が飛んでくるし。だから下司と組んでやると、僕が、違う世界へ連れていって貰えるから、そういう意味で、やっぱり下司が居てくれるだけで芝居自体も深く広がる。イヤ、彼女は天才ですよ。もう、絶対これからどんどん上に行く人だと思います。

――音楽、振付に関しては、山本さんからも何かオーダーがあったのでしょうか?

山本:音楽は今回創りたいな、っていうのは言ってて「やっぱオレノくんかなー」みたいな事はちょっと言ったかも。でも基本的には(三上さんに)任せてた、という感じで。

三上:そう(山本さんは)もう絶大な信頼を感じてくれてて、僕が薦めるスタッフを、「三上くんがいいんだったら、いいよ」って言ってくれるので。なので、もうそれに甘えて。でも彼等は一流だと思いますよ、僕は。

『光射す場所へ歩く君たちへ』に出演する夏組と宙組のみなさん

『光射す場所へ歩く君たちへ』に出演する夏組と宙組のみなさん

<AUBE GIRL’S STAGE第1回公演『光射す場所へ歩く君たちへ』>
【東京公演】2016年6月8日(水)~12日(日) テアトルBONBON
「AUBE GIRL’S STAGEオフィシャルサイト」は ⇒http://www.aube-girlsstage.com/next.html
チケットのウェブ予約は ⇒http://ticket.corich.jp/apply/71526/

<山本夢人>(やまもと・ゆめと) 演出家, 脚本家。演劇ユニット「レッドカンパニー」主宰。2006年より「㈱先駆舎」主催の即興イベント「アクトリーグ」に演出家として参加。2008年より2010年まで「㈱先駆舎」の演出家兼プロデューサーとして活動。2009年より、「JCM」(ジャパンクリエイティブマネージメント)に所属。2011年に演劇ユニット「レッドカンパニー」を立ち上げる。

<三上陽永>(みかみ・ようえい) 俳優。「サードステージ」所属。舞台をメインにテレビ、ラジオへの出演、近年では自ら演出も手掛ける。2008年より鴻上尚史主宰「虚構の劇団」に劇団員として参加。2011年よりNHK Eテレ「できた できた できた」健康・からだ編にレギュラー出演。2012年に「虚構の劇団」メンバーの杉浦一輝、渡辺芳博の3名で演劇ユニット「ぽこぽこクラブ」を立ち上げる。

<関連サイト>
⇒ 「光射す場所へ歩く君たちへ」のページ
⇒ AUBE GIRL’S STAGEオフィシャルサイト
⇒ AUBE GIRL’S STAGEのTwitter
⇒ 「光射す場所へ歩く君たちへ」出演者ブログ
⇒ 演劇ユニットレッドカンパニー
⇒ 虚構の劇団
⇒ ぽこぽこクラブ
⇒ 劇団鹿殺し
⇒ 泥棒対策ライト

連載:来た観た書いた(一覧)

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 遠方の友人を誘って観たお芝居との出会いをきっかけとして演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、さまざまな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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