ミュージカル『カラフル』が、2023年7月22日(土)に開幕しました。本作は8月6日(日)まで世田谷パブリックシアターで、8月12日(土)と13日(日)に兵庫県芸術文化センター阪急中ホールで、8月19日(土)と20日(日)に水戸芸術館ACM劇場で、8月26日(土)、27日(日)に春日井市民会館で上演されます。ミュージカル『カラフル』は、出版から20年以上たった今なお幅広い世代に愛されている、直木賞作家・森絵都さんによるベストセラー小説「カラフル」を原作に、小林香さんが脚本・作詞・演出を手がける新作のオリジナルミュージカルです。歌と踊りがふんだんに盛り込まれたミュージカルならではの新たな「カラフル」。“モノクロだった世界をカラフルに変える”ミュージカルの「魔法」を、いまを生きるすべての世代に向けてお届けします。
アイデアニュースでは、主人公の<ぼく>を演じる鈴木福さんと、<ぼく>を導く天使プラプラを演じる川平慈英さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、作品の印象や魅力、心が動いたキャラクターのこと、 ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』での共演を経てのお話などについて伺った内容を紹介します。「下」では、作品のキーとなる「絵」にちなみ、ご自身を表現できる表現方法について、中学生の頃の葛藤などについて伺った内容とお客さまへのメッセージを紹介します。
――作品の印象や魅力について教えてください。
川平:原作を読んだ時は、これが絵都さんの力かと、不覚にもと言っては失礼ですが、泣いてしまい、心が揺さぶられました。綺麗事ではない、生きるということの難しさもしっかり描いていて。人生は、自分が願えば、一歩一歩歩んでさえいれば、セカンドチャンスは必ず来るという力強いメッセージが込められています。
何よりも歌がキャッチ―でポップでいいんですよね。楽しんで歌稽古をしています。特に僕は冒頭のM1で、最初の右フックをお客さんに決めなきゃいけない、がっちりいいパンチを食らわせなきゃいけない状況になっています。少しの緊張と、やってやろうという、サッカーに喩えるとビッグマッチのキックオフ前の気持ちになりそうです。でも今はその緊張感を楽しんで、歌稽古をやっている最中です。
鈴木:台本を読んで、本当に曲がすごく多くて、僕としては原作の雰囲気よりもワントーン明るくなっている感じはしました。もちろんシリアスなところもあるんですけど、より受け入れやすくなっている部分もすごくあると思いましたし、曲数も多いですから、その分テンポ感がすごく早いんだろうなと。
川平:短いものも入れて、15曲以上あります。細かいキューがいっぱいあるもんね。
鈴木:M1の中でも、M1a、M1bとか複数の楽曲があるんです。それを数えると、覚えることは結構あります。
川平:なかなかミュージカルで15、16曲に携わることはないですよね。『レ・ミゼラブル』みたいな大きい作品だと、ひとり1曲ずつ歌って、最後に全員でみたいな法則があるじゃないですか。この作品は、またサッカーに喩えてしまいますが、全員守備、全員攻撃みたいな、「One for all , All for one」みたいところがありますね。
鈴木:そうですね、どの役も目指すポイントがそれぞれにありますし。
――結束力が高まりそうですね。
川平:高めないと沈没しますね。
――今、川平さんがおっしゃっていたセカンドチャンスという物語のテーマについて、鈴木さんはどう思われますか?
鈴木:見てくださっている人たちにとって、死ほど重いことはないじゃないですか。だから逆に今を大切にして、未来を見ることができるようになるというのが、すごく大事なんだろうなと感じました。そういうことに対する人それぞれの感じ方というのが、やっぱり作品を通して描かれているのだと思います。「どうしていったらいいかな」とか、「自分だったらどうしたいな」とか、そういうことを考えてもらえるような作品にできたらいいんだろうなと感じています。
――<ぼく>を中心に物語は進み、登場するキャラクターそれぞれに抱えているものがあるストーリーですが、誰に気持ちが動きましたか?
川平:とにかくやられたなと思うのは、お母さんですね。息子の真との絆が切れそうなんだけど、何とかしてつなぎとめているあの生き様。あれがキーポイントとなっていますね。原作でも台本でも、お母さんの手紙がグッときちゃうんだよな。
鈴木:あの曲もすごくいいですよね。
川平:そうなんですよ。みんな負の部分を抱えて生きているじゃないですか。誰でも大抵そうです。そういうことが、隠すことなくストレートに、原作でもしっかり描かれている。だからこそ、あえてふざけようかなと思っているんです。原作や、原作を元に作られたアニメや実写の映像作品には、それぞれプラプラのイメージがあるんですけど、僕は僕なりに、めちゃくちゃファンキーな、“うざいおっさん”でやれたらなと。それなのに実は、一番<ぼく>に心を寄せていたんじゃん、となれば面白いじゃないですか。
鈴木:僕は、お兄ちゃんがすごく好きかなぁ。僕自身が家族の中で長男だからということもあるんですが、やっぱり弟妹たちがつらい状況にあって、そこから新しく何かをしようとしていた時に、自分ができることをやろうと思うのは、すごく大事なことだと思うし。それを形にしようとするお兄ちゃんの感情はすごく素敵だなと思いました。
――兄弟だからこそ届くところと届かないところはありますよね。
鈴木:僕自身は、下の弟妹は小さいですし、話もすごくするし、男女の違いもありますね。一番年齢が近いのが妹で、その下は9歳下と11歳下で、だいぶ離れています。この作品は男兄弟で、歳も3つくらいしか変わらないから、結構話すに話せないところもあるんだろうなと思います。それでもお兄ちゃんが何かしたいという気持ちがあるということは、素敵だなと思います。
――それぞれの役を演じるにあたり、大事にしたいところをお聞かせください。
鈴木:鈴木福と似ているようで似ていないところが結構あるので、その違いを僕自身が楽しめたらと思っています。
――「似ているようで似ていないところ」は、具体的にどのあたりですか?
鈴木:一人ひとりと関わろうとしているところや、コミュニケーションの取り方などです。それぞれにいろいろとあるからこそですが、<ぼく>はみんなに結構強く当たるんです。僕自身は、そういうことはあまりなかったんです。母に対して、がーっと言う時はありましたけど、友達や周りに対してはそういうことがなくて。人に対してそういう態度を取るというのは違うなと自分の中で思っていたこともありますし。
僕自身はノリがいいところもすごくありますので、曲の雰囲気に合わせて歌うのも今回楽しめたらいいなと思っています。原作の<ぼく>よりももうちょっとライトな感じで、明るく軽やかにと思っているので、そこをどうしようかと模索中です。
――川平さんはファンキーにとおっしゃっていましたが、天使の役についてはどのように考えていますか?
川平:最初天使の役と聞いて、この歳で天使なんて……と思ったのですが、あえて、「おもしろいじゃないか、おれにこの役をやらせるのか」と(笑)。でも、基本的に天使に年齢はないので。あえて皆さんのイメージとは真逆のものを作れるという楽しみはありますよね。それが強みかな。「こんな天使いねぇよ」と思われたほうが、演劇的にもショー的にも面白い。「ほんとだ、天使っぽい!」だと何も面白くないじゃないですか。もちろん、いろんな人の見方があると思いますけど。
ある少年のエキセントリックな人生のガイド役で、「次は何をするんだろう、この天使は?」という興味を持続してもらえるようなプラプラにはしたいですけどね。結末を考えると、本当に思っていたことと実際にやっていることのギャップの面白さを出せたらいいなと思っています。お客さんの予想の上を行く、「このおっさん、面白い。次は何をやるんだろう」といようなプラプラができたらなと。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、『ビッグ・フィッシュ』での共演を経てのお話について伺った内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。25日掲載予定のインタビュー「下」では、作品のキーとなる「絵」にちなみ、ご自身を表現できる表現方法について、中学生の頃の葛藤などについて伺った内容やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■川平:ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』の大ぼら吹きの父ちゃんからヒントを
■川平:「永遠の中2」という言葉がすごく好き(笑)。逆に<ぼく>が大人な感じに
■鈴木:一緒にお芝居している方に、「レベルアップしてる」と思ってもらえるように
■鈴木:「今いらっしゃった!」とわかるくらいに、川平さんの元気な「おはよう」
<ミュージカル『カラフル』>
【東京公演】2023年7月22日(土)~ 2023年8月6日(日) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2023年8月12日(土)、8月13日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【茨城公演】2023年8月19日(土)、8月20日(日) 水戸芸術館ACM劇場
【愛知公演】2023年8月26日(土)、8月27日(日) 春日井市民会館
公式サイト
https://setagaya-pt.jp/stage/1858/
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