ミュージカル『天翔ける風に』が、2023年9月29日(金)から10月9日(月・祝)まで東京芸術劇場プレイハウスで、10月13日(金)から15日(日)まで兵庫県芸術文化センター阪急 中ホールで、10月19日(木)から22日(日)まで穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールで、上演されます。本作は、ドストエフスキーの小説『罪と罰』をもとに野田秀樹さんが幕末の日本を舞台に描いた『贋作・罪と罰』を謝珠栄さんがミュージカル化し、2001年に初演され、その後2003年、2009年、2013年に再演されました。今回の、10年ぶりとなる再演ではリニューアル上演されます。アイデアニュースでは、三条英役を演じる珠城りょうさんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。
「上」では、この作品への出演のきっかけが謝さんからのお声がけだったというお話、宝塚歌劇団で『激情ーホセとカルメンー』に出演された際の謝さんからの言葉のこと、三条英という役について、今回共演される剣幸さんにお会いした時のことなどについてお話ししてくださった内容を紹介します。「下」では、『マヌエラ』も手がけられていた玉麻尚一さんの楽曲への印象、宝塚歌劇団を退団後、しばらくはミュージカルに出るつもりがなかった理由、映像のドラマにも挑戦する中で感じている映像と舞台の違い、芝居の面白さを感じているというお話などを紹介します。
(※このインタビューは6月末に行いました)
――この作品に「出演したい」と思われた理由をお聞かせください。
実は、謝(珠栄)さんに「退団してから、もう一度あなたと仕事がしたい」とお声をかけていただいていたんです。
――宝塚時代にご出演された『激情ーホセとカルメンー』を経てということですか?
はい。私としてはコロナで延びたとはいえ、5年間トップを務めていたので、宝塚でのお仕事は十分やらせていただいたと思っていたのですが、謝さんは「なんでもう辞めちゃうの? あなたとやりたい作品や題材はもっといっぱいあったのに。あなたに何があったの!」と、すごく思いをかけてくださったんです。宝塚にもっと長くいるだろうから、まだまだ宝塚で一緒に仕事ができると思ってくださっていたみたいなんです。
――そうだったんですね。
謝さんにとっては、私が思いのほか早く辞めてしまったので、退団後に「もう舞台の仕事はやらないの? 退団後はどうするの?」と、気にかけてくださり、「あなたにすごくぴったりの役があるから、ぜひ一緒にやりたい」と伺いました。「もし先生とお仕事ができるんだったら」とお聞きしたら、この作品のことで、「三条英という役があって、きっとりょうにぴったりだから、やらない?」と言われました。『天翔ける風に』といったらミュージカルだよなと。ミュージカルは、自分にとっては少しハードルが高いというか、退団後に自分がミュージカルをやるというビジョンがありませんでしたので、初演を香寿たつきさんがやられていたこともあって、ちょっと悩みました。
でも、やはり先生の熱い想いにお応えしたいと思ったのと、野田さんの戯曲を謝先生がミュージカルにした、日本オリジナル作品でもあって、これだけの作品をやれる機会は多分、これを断ってしまったらもうないかもしれないと、「それなら頑張って挑戦しよう」と「ぜひやらせてください」とお答えしました。
――本作は、初演当時も評判が良くて、何度も再演されましたし、逆にしばらく上演されないのが不思議だなと思っていました。謝さんは、「三条英を演じてほしい方」が現れるのを待たれていたのかなと思ったりしました。
どうなんでしょう? 今まだ謝さんとお会いできていないので、「なぜ私にこの作品を?」というところは、稽古に入る時にじっくりお話できたらと思います。でも謝さんは、『激情』の時に、舞台への取り組み方などをすごく褒めてくださったんです。カンパニーの座長としての居方や、情熱的で真っ直ぐな部分を、「それがあなたの良いところだ」とすごく言ってくださったことを今でも覚えています。きっと、そういったところを好きでいてくださったんだろうなとは思うのですが。
――謝さんと『激情』で一緒に舞台を作るなかで、印象に残っている言葉はありますか?
かなり前のことなので、どちらだったか忘れてしまったのですが、初日か千秋楽に、謝さんが、ポストカードに書いたメッセージと、見たら元気になるような、ワンちゃんのエッセイというか写真の本を下さったんですよ。「今のまま、曇ることなく真っ直ぐ、すくすく育っていってほしい」というようなことを書いてくださったのが、すごく嬉しかったです。密にご一緒したのは『激情』という作品だけでしたが、とても思いをかけてくださいました。早い学年でトップになったということもあったので、激励してくださったというか、「頑張れ」と背中を押してくださったんです。それが私としてはとても嬉しくて、「頑張ろう」と思った記憶がありますね。それ以降も、月組公演をずっと観に来てくださっていて、絶えず気にかけてくださったんです。
――『天翔ける風に』の三条英役を、珠城さんが演じられると知って、すごくぴったりだろうなと思いました。
この作品をご覧になった方は、皆さんが「ぴったりですね」と言ってくださいます(笑)。
――三条英役については、どう考えていますか?
私は在団中から、「珠城さんって太陽みたいですね」と言っていただくことはあるのですが、意外と陰(かげ)がある役をやったほうが評判が良い俳優でして…(笑)。今回、やってみなければわからないのですが。
(一同笑)
それこそ、『グランドホテル』の男爵をはじめ、遡れば『月雲の皇子(みこ)』、『エリザベート』『赤と黒』『桜嵐記』など、何か苦悩していたり、陰があったり何かを抱えていたりと、なぜかそういう役をやっている時のほうが評判が良いんですよね。なぜなのかわかりませんが…。
ーー「底抜けに明るい役よりは」ということですよね。
そうなんです。むしろ、底抜けに明るい役が苦手で(苦笑)。コメディーや明るい役って、実はすごく難しかったりするんです。私自身が結構ヘビーな作品が好きなので、そういうところも相まってとは思うのですが。
――なるほど。三条英は、飛び抜けて抱えているものが大きいと思います。
そうですね。ここまで抱えている役は、初めてかもしれないです。
――演じるという意味で、三条英という人物についてどう感じますか?
今、分析中です。『罪と罰』という原作がありますが、ロシア文学って、ひもとくのが難しいなと。「言いたいのはこれだよね」というところに辿り着くまでに、数ページあったりするんですよね。「こうでこうで…え、ここ要らなくない?」って、ちょっと思ったりもするのですが。小説を読むのは大変なので、まずは台本から読み解いていけたらいいなと思っています。英はとても自尊心の強い女性なのですが、「女である」ということや自分の弱い部分を必死に抑えて、男社会で食らいついて生きているのかなという気はしたので、そういうところを出していけたらいいのかなと、今ざっくりとは思っています。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、三条英という役について、今回共演される剣幸さんにお会いした時のことなどについてお話ししてくださった内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。「下」では、『マヌエラ』も手がけられていた玉麻尚一さんの楽曲への印象、宝塚歌劇団を退団後、しばらくはミュージカルに出るつもりがなかった理由、映像のドラマにも挑戦する中で感じている映像と舞台の違い、芝居の面白さを感じているというお話などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■三条英は「選ばれた人間である」と思っている天才。そこに至るまでの過去があるはず
■すごく力強くエネルギッシュな作品。常に、役者や登場人物の魂の叫びみたいなものが
■『マヌエラ』で5分半踊るだけで「めちゃくちゃしんどい」と。今回はそれを越えそう
■「ミュージカルは退団後初の新参者」とお話したら、ウタコさん(剣幸)が「大丈夫」と
<ミュージカル『天翔ける風に』>
【東京公演】2023年9月29日(金) ~10月9日(月・祝) 東京芸術劇場 プレイハウス
【兵庫公演】2023年10月13日(金)~10月15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【豊橋公演】2023年10月19日(木)~10月22日(日) 穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール
公式サイト
https://www.amakake2023.jp
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「天翔ける風に」三条英、珠城さんにぴったりでした。謝珠栄さんとの信頼関係と大先輩剣幸さんの存在に支えられて、素晴らしい共演者と並々ならぬ覚悟で作り上げられて舞台。いろいろな葛藤がおありだったのでしょうが、前向きに歩んでくださってありがとうございますという気持ちで謹んで拝見いたしました。
深く切り込んでインタビューしてくださりありがとうございます。