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「新しい判断基準に」『TOKYO〜the city of music and love〜』、城田優(下)

筆者: 岩村美佳 更新日: 2024年5月15日

城田優さんがプロデュースする歌とダンスのオリジナル・エンターテインメントショー
『TOKYO~the city of music and love~』が、2024年5月14日(火)に開幕しました。5月19日(日)まで東急シアターオーブで、6月22日(土)にシンガポールのEsplanade-Theatres on the bayで上演されます。

城田さんのインタビュー後編となる「下」の無料部分では、「物を見る目」のこと、エンターテインメントへの思いなどについてお話ししてくださった合同取材後半の内容を紹介します。有料部分では、ミュージカルでもショーでも、「没入感」をいつも大切にしているというお話などについて伺った独自取材後半の内容を紹介します。

城田優さん=撮影・岩村美佳
城田優さん=撮影・岩村美佳

(※インタビューは2月末に実施しました)

ーー日本では宝塚のレビューくらいで、ショーはあまりないかと思います。コンサートではなく「ショーとして見せる」という上で、どのようなことを考えていらっしゃいますか?

おっしゃる通りで、ショーは難しいんですよ。僕もあまり観たことがないので「こういう感じ」とは、今の段階では言いづらいですが、コンサート形式のショーでは観たことがないスタイルになると思います。特定のジャンルにハマらず、見たことのない歌、ちょっとした芝居みたいな雰囲気、ダンス、音楽、そこに映像や照明などクリエイターの要素が混ざって、最終的に、今回のショーになるイメージです。

ストーリー性はまだ固まっていないですが、ひとつ言えることは、シアターオーブを出たあとに、渋谷の街を歩くのが楽しくなるような、日本や東京っていいなと誇りに思ってもらえるようなコンセプトのものにしようと思っています。「誰も見たことがないものを作ろう」という思いが先行したわけではなく、いろいろなクリエイターたちと面白いものを作っていこうと思った結果、あまり見たことのないものになっているという感じです。

ーー東急シアターオーブには、これまでにも立たれているかと思いますが、劇場の印象をお聞かせいただけますか。

僕にとっては、ホームのような劇場です。『ロミオ&ジュリエット』、『キンキーブーツ』、『ピピン』、『SHOWTIME』、ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』など、とにかくたくさん立たせていただいていますし、まず、アクセスがいいです(笑)。有楽町よりも、ポスターを貼られているのを見て、若者が「面白そう」と行きやすいエリアかなと思います。海外は、家族で劇場に行くんです。日本では、誰かのファンの方が友達と行く、ということはあるでしょうが、「ミュージカル行こうよ」とデートに誘ったり、家族全員でミュージカルを観に行くなんてことも、あまりないと思うんです。

今後は学割を作ってみたり、何歳以下の親子プランとか、カップルプランとかを作っていきたいと思っています。特に若い世代、これからの日本を担っていく子たちには、目を肥やしてもらうというか、いいものに触れてほしいです。劇場に足を運んでくださる人口を増やしたいです。

ーー「本物を届けたい」と一貫してお話しされていますが、ご自身の「物を見る目」はどのように育てていらっしゃいますか?

見るしかないですよね。最初は分からないものですが、興味を持つことで、何がすごいのか、ここのシーンでこんな演出をしていたんだ、ここの芝居はこういうふうになっているんだとか、この脚本はこうなっていたんだとか、完成形のパズルが好きというところから始まって、パズルを自分でやってみてハメていって、物がわかっていくというか。

僕は、演出、照明、役者さんのお芝居、劇場の使い方などに、興味があるから自然と目を向けるようになりました。映画でもドラマでもなんでもいいんですが、「この撮り方、この音楽の入れ方かっこいいな」とか、その逆もしかりで、「なんでここでこの人の表情を見せないのだろうか、意図があるのか、それにしても俺は好きじゃないな」とか。エンターテインメントは、結局好みだと思うんです。 

ーーその見方において特に意識されていることはありますか? ご自身の感性を磨くという視点ではいかがでしょうか。

たくさん触れることだと思います。いいか悪いかは比べてみないと分からないじゃないですか。数が増えれば増えるほど何のどこが好きか、どこが嫌いなのか、自ずと出てきます。僕は、そうやろうと思ったわけでも、演出家になるためにやったわけでもなく、ミュージカルの現場で自然と、自分が出ていないシーンを横から見ているときに、「そこでそういう芝居になるのか。ここでこういう転換になるのか」と、考えるようになりました。「演出をしたいんだな」と思ったきっかけは、ロミジュリへの出演でした。いつどこに、自分が何に取り組みたいと思うきっかけが眠っているかは、皆さんも含めて年齢もキャリアも関係なくて、僕の場合は単純に「好き」という思いから、気づいたらここまで話せるくらいの経験をしました。

一番大きかったのはニューヨークに行ったことだと思います。ブロードウェイで、20歳のときに初めて4日か5日間で7本くらい観て、「日本のミュージカルとは違う」と思いました。もちろんブロードウェイの全部がいいわけではないのですが、「日本の方がいいな」と思うことが少ないのです。ブロードウェイでは選ばれた人たちが出ていて、日本とは選ばれ方が違うと感じています。そこが、自分の中で引っかかっていた何か、ハーフであること、過去のことも含めて、「何クソ」というマインドに影響していると思うんですよね。

僕には、向上心があるのですが、逆に人に評価される、指を指されるというコンプレックスもあって、結果的に考えすぎる癖があるんです。ですが、それがいい方向に向かっているのが、エンタメです。 エンターテインメントが好きということと、自分の小さい頃からのコンプレックスが、いい意味で混ざって、たくさん考えて、いいところ、悪いところ、好きなこと、嫌いなことを意識的に見るようにしてきたんです。

ーーこの公演に限らず、演出またはプロデューサーとして城田さんがやりたいことを教えてください。

今回に限らず、演出やプロデュースをする上で大事にしたいのは、まず一番はお客さまです。高いチケット代を払って劇場に足を運んでくださって、遠方からはるばる、もちろん近場でもお金と労力をかけて観に来てくださる方たちに、僕目線ではありますが、なるべくいいものを観ていただきたい。僕のこのショーだけに限らず、良し悪しをちゃんと判断していただきたい。例えば、レストランで食べたときに、いろいろな種類のメニューがある中で、「全部おいしい」で終わっちゃうのはもったいないと思うんです。

何でもかんでも「おいしい」ではなく、「好みはなんなんだ」と言うのを皆さんに感じてほしいんです。そのためには、僕たちはすごくいいものを作らなくてはいけないんです。

僕自身、ラスベガス、ニューヨーク、ウエストエンドなど、たくさんショーを観てきています。やはり甲乙つけますし、よくないものはすぐ終わるし、いいなと思ったものは日本に入ってきます。実力主義、クオリティ主義なのが世界なんです。僕は自分がつまらないと思う作品には立ちません。

僕はダンスは下手だと思っています。でも、限られた時間の中で、与えられたものの価値をどれだけ上げられるかという努力はしています。例えば、オリンピックにウサインボルト選手が出ていたら、他の方たちは絶対に打ち勝ってやろうと走るわけです。エンターテインメントを愛しているからこそ、本物が評価されるべきだと思っています。

情熱があったり、センスが優れていたり、この 子はおもしろいというものだったり、ユニークな、いろいろな色鉛筆があってもいいと思っているんだけれども、そこにはやはり、何かしら 光るものがなければダメだよねと思います。僕がプロデュース、演出するときは、なるべくそういうところを目指していきたいんです。

戦うことをもうやめようかなと思ってしまうこともありますが、とりあえずできるところまで歯向かおうと挑んでいます。エンターテインメントの箱の中のクオリティをとにかく僕は上げたい。そして、それによって、同じような仲間も含め、第一線でやっている人たちに、「もっと頑張らないと」と思ってもらいたい。

僕は、アンサンブルでやっていた人を主演クラスにキャスティングすることもあるんですが、「この子いいじゃん!なんで埋もれているの?」とか、「新人だから起用されないなんて」と思っています。スポーツは強い人が出てきたら勝って、評価されますよね。「競争社会はそうであれ」と思うんですが、今のエンタメは、競争社会とは違うと感じています。

いろいろな興行主、演出家、プロデューサーがいるのに、どうしてこうも同じようなキャスティングになってしまうんだろうと思ってしまうんです。もちろんシンプルに人材不足ということもあるので、やはり作り手側がどんどん新たな才能を発掘していかなければならないと思っています。そういうところを変えていきたいですし、お客さまにも変わってほしいです。

そして、これだけ話すからには、「さあ、どれくらいのものを見せてくれるのか」と言われることを覚悟の上で話しています(笑)。僕がプロデューサーであり、演出家であり、出演しているからこそ、出演者にもだいぶプレッシャーがかかってしまっていると思うんですが(笑)。ただ、それを引いても、出演してくれる皆さんは素晴らしい。観ていただけたら分かります。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ミュージカルでもショーでも、「没入感」をいつも大切にしているというお話などについて伺った独自取材後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■ミュージカルでもショーでも、演出するプロジェクト全てに共通するのは「没入感」

■「いい悪い、好き嫌い」の新しい基準、新しいジャンルを持ってもらえるショーに

<『TOKYO~the city of music and love~』>
【東京公演】2024年5月14日(火)~5月19日(日) 東急シアターオーブ
【シンガポール公演】2024年6月22日(土) Esplanade- Theatres on the Bay 
日本公演公式サイト
https://tokyoshow24.jp/
シンガポール公演公式サイト
https://tokyoshowsg.com/

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城田優さん=撮影・岩村美佳
城田優さん=撮影・岩村美佳

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<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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最近のコメント

  1. ぽっぽ より:

    読み応えのあるインタビューありがとうございました。見方だけでなく生き方や考え方をエンタメを通して教えてくれる城田さんをこれからも応援したいなと思います。

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