舞台『未来少年コナン』が、2024年5月28日(火)から6月16日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスで、6月28日(金)から6月30日(日)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されます。ジムシーを演じる成河さんと、レプカを演じる今井朋彦さんのインタビュー後編です。「下」では、インバルさんの表現の中でキーになりそうだと考えている点、個人とは何か、劇中に役としてどう存在したいか、アニメーション作品と抽象性、抽象表現の魅力とはというお話などを紹介します。
ーー稽古場は美術が入っていないので、どんな風になるんだろうと想像を膨らませて帰ってきました。お客様にこの作品を提示する側として、作品の魅力となる部分をどう感じていらっしゃいますか?
成河:それは頼みますよ(笑)! 半分冗談だから、誤解しないでくださいね!? でも最近思っちゃうんですが、それって取材してくださる皆さんの仕事じゃないですかって。それをわかっておっしゃっているとは思うのですが、そういうことに俳優が背伸びをすることで、俳優が弱っているなという光景を最近よく目にするんです。僕たちは作っているし、専門性について考え続ける立場なので。観劇するうえでの魅力みたいなところを、いかに語れるかがプロの証明みたいな感じになっていますが、そこは役割が違うんじゃないかと思っています!
ーーいい言葉を出すことに力を入れすぎるということですかね?
成河:誰にでもわかるように伝えなければいけませんが、ものづくりの最初は決してそうではないので。そうではない段階で、誰にでも通じる言葉を探そうとすると、どうしてもそちらに寄っていってしまう。「誰にでもわかるものを作ること」が目的ではないと思うので。それで…魅力ですよね?
ーー作品を紐解く要素などについては、いかがでしょうか? まだ喋り足りないところですとか。
成河:山のようにありますが、誰に向けるか、ですよね。誰に向けて語るかは、本当に悩んでしまいます。インバル、インバルと言っていましたが、インバルを知らない人に対して、どういう言葉を選んでチョイスして、どういう投げ方をすべきか。どうすればいいんですかね。
今井:成河さんの言葉を後追いするわけではないですが、作り手はお客さんの視点には立てないんですよね。自分が出ていないシーンを見ることはできますが、それだけではおこがましい感じがするので。もちろん魅力もふんだんにあると自負できますが、ご覧いただいて、とにかく美術がすごかったと捉えられる方、なんていい音楽だったんだろうと思う方、物語自体が、なんていいお話なんだろうと思う方がいるかもしれない。
当然、自分の推しが出ていれば、⚪︎⚪︎さんはなんて素敵なんだろうとなる。僕は、それでいいと思うんです。インタビューでそういう質問は受けるので、もちろん僕も答えますが、お客様が自由に「ここがよかった」でいい。そうなれる要素がたくさんあると思います。楽しめる要素がこれしかないもの、1点豪華主義の作品もあるかもしれません。でも、本当に世界観が豊かということは、楽しめるポイントもたくさんあるわけですから、どうぞお好きなところをお味わいくださいみたいな感じですね。
ーーありがとうございます。おふたりの役はそれぞれ個性が強い役かと思いますが、インバルさんの表現の世界の中で、ここはキーになるだろうな、ここは大事にやろうと思っているという部分はありますか?
成河:インバルの作品に限らずですが、僕自身はフィジカルなものはキャラクターから作らないので、「全体の検証の中のパーツとしてありえるなら、ジムシー的にはこんなのありえないけど、ここが必要なんだとなったらやる」みたいな選択肢です。「ジムシーは、こんなことしないから僕はそこに関わりません」というスタンスも、もちろんありえるんですが、僕はあまりそういう創作が好きではなくて。
原作的にもどの役もすごく強烈な個性を持っています。ただ、それ以上に劇世界として成立しないと仕方がないので、必要なときに必要なパーツになれるような所作を探している最中ですね。「ジムシーはこうであるべき」「この部分は絶対に汚されたくない」みたいなものは、僕は創作の邪魔だと思います。今はそういう段階ですね。もちろん最終的に出来上がっていって、愛すべきキャラクターになって、皆さんにも愛していただけたらいいなと思いますけどね。原作が強いだけに、あまり決めつけたくないです。
ーーもともとが愛されるキャラクターですもんね。
成河:どのキャラも強いし、愛着が湧きやすいキャラクターだと思いますが、それだけに罠がたくさんあるので、我々は気をつけないといけない。囚われてしまうと、すごく表現が小さくなりますし、そうなってしまったら舞台でやる意味ないですから。
ーー今井さんはいかがですか?
今井:こんなことを言うと、また「今井さんは理屈っぽいですね」と言われるかもしれませんが(笑)。
成河:よ! 待ってました!
今井:アハハハ。あえて、またそこに首を突っ込みますが。最近、「個人とは何なのか」を考えて書かれた本をよく読んでるんです。もともと自分の中にそういう思考があるから、惹かれてるんでしょうね。
やはりこの物語を語るときに、タイトルが「未来少年コナン」で、コナン、ジムシー、ラナと、個人がひとりずつ配役されているわけですから、個人を個人と考えるのは当たり前なんです。でも今こうして皮膚に包まれて、実際に触れられる僕のこの身体は「今井さん」に違わないわけですが、実際の人間の存在って、例えば僕が「成河くん」という人間を、その存在を認識するときに、別に、この触れられる成河くんだけを認識しているわけではないじゃないですか。
インバルと話している成河くんのことはインバル込みで、清史郎くんと話している成河くんのことは清史郎くん込みで、他にもマネージャーさんだったり、制作さんだったり、話している相手、接している相手のことも全部込みで僕は成河くんを認識しているわけですよね。だから僕は、レプカ個人が、レプカだけの単体で存在していると思えないんです。
成河:深いねぇ……。
<取材協力>
衣裳:飯嶋久美子(POTESALA)、SHIRO.O
ヘアメイク:冨沢ノボル
※アイデアニュース有料会員限定部分には、個人とは何か、劇中に役としてどう存在したいか、アニメーション作品と抽象性、抽象表現の魅力とはというお話などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■今井:劇全体の中でパーツとして収まったときに、初めてお客さんの中に人物像が
■今井:ちゃんと埋没して、ちゃんと浮き立ちたい。劇の中に、機能して存在してこそ
■成河:「個であって、個でないもの」にたどり着くために、固有の肉体を使うしかない
■成河:その人が見たいものを見るから何に見えてもいい。そこが抽象表現の素晴らしさ
<舞台『未来少年コナン』>
【東京公演】2024年5月28日(火)~6月16日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪公演】2024年6月28日(金)~6月30日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/fbconan2024/
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