「考える隙を与えてくれる」舞台『未来少年コナン』、加藤清史郎(下) | アイデアニュース

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「考える隙を与えてくれる」舞台『未来少年コナン』、加藤清史郎(下)

筆者: 岩村美佳 更新日: 2024年5月27日

2024年5月28日(火)から6月16日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスで、6月28日(金)から6月30日(日)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される、舞台『未来少年コナン』(宮崎駿さんの初監督アニメ)で、主人公のコナンを演じる加藤清史郎さんのインタビュー後編です。「下」では、本作の演出・振付・美術を手掛けられるインバル・ピントさんと何度もご一緒されている成河さんからのアドバイスや刺激を受けたこと、今回の舞台化ならではの魅力、コナンのような心を持ちたいというお話、「総合芸術」であり舞台化される意味を考えさせられる作品だというお話などを紹介します。

加藤清史郎さん=撮影・岩村美佳
加藤清史郎さん=撮影・岩村美佳

ーー成河さんや、ダンサーの方々など、インバル作品の世界観、表現方法を知っている方々からアドバイスなどはいただいたりしましたか?

「こういう動きをしたい」と思って相談したときに、「清ちゃん、こっちに足を送り続けてしまえば楽だよ」とか「この時点で肘を先に送ってあげたら楽に体が回るよ」とか、技術的なアドバイスはたくさんいただいています。インバル作品と向き合ってこられた先輩方でもあるので、インバルの稽古での向き合い方、立ち振る舞いにおいてのアドバイスもたくさんいただいています。

特に、成河さんはコナンとジムシーという関係で、稽古場での席も隣なので、本当にその都度「さっきのこういうとこだけど、こうしたらどう?」など、物事をまっすぐに伝えてくださるので、わからなかったこともわかりますし、わかっていたこともより深められるスパイスを頂いたりしています。成河さんは、『100万回生きたねこ』で初めてインバルとご一緒していて、今回初めてである僕が、何にどう悩んでいて、葛藤しているのかを、ご経験の中から似つかわしいものを持ってきて、話してくださっていると思うんです。「それはすっごいあかんのよ」とか。そう言われて、「そうなんです、でもやらなきゃいけないなと思っていてやるんですけど、できないことはできないんだなと思うのですが」というと「そんな簡単にできたらプロの人たちにもむしろ失礼だよ」みたいな。全部まっすぐなんです。

できないこともありますが、本当にできるかどうかわかるまではトライし続けなければなりません。ただ、トライする時間も、インバルさんはあまりくれません。「こうしてみて」と言った瞬間に、その動きだけでなく、テンションや中身の部分、ニュアンスが抜けていると、一気に「No」と言われてしまうんです。そのときに言われた変更点でも、初めての動きでも、即座に形が見たいから、しょっちゅう「Let’s see」と。僕はそこに「さっきはこの動きで、ここをこうすると言われたけど、今はこっちでこう言われたな。でも、あの人にはここをこうしたらやりやすいよと言われたし、どうしよう。ごめんなさい」となったりします。

ーー加藤さんはイギリスに留学されていましたよね。英語がわかることによるメリットや、技術面でプラスになっていることはありますか。

そうですね。ものすごくニュアンスも伝わります。インバルさんが「ん?」となった時に、通訳の方は訳さなかったりもするので。

ーーそうすると、英語がわかることで、インバルさんが欲していることを理解しやすかったりしますか?

プラスになっていると思います。インバルさんのムーブメントもそうですが、中身を主に担当しているダビッドさんと、自分のシーンだけ個別にやったりする稽古もあるんですが、やはり心がどう動くかという話なので、そこのニュアンスは英語が聞き取れるだけでわかることもありますし、あとは感覚的なところですね。ヨーロッパの人たちのマインドやリアクション、流れとか、ノリツッコミ、ボケは、日本とはやはり違うじゃないですか。

例えば、「多分、そうだよ…知らないけど」みたいな言葉だったら、ダビッドさんが今見たいのは、そういう間の取り方で、間があることで生まれる空気感だから、今のこの日本語のセリフだと、少しニュアンス的に断定が強いよね?みたいな。確証が掴めないからこそ、違う言葉があるかもしれない、というふうに気付けるんです。僕が海外の人と触れ合ってきた経験は、そういうところで生きているのかもしれないなと思いました。

ーー作っている過程について、いろいろとお話ししてくださいましたが、観客にとっての舞台化ならではの魅力を挙げるとしたらどんなところでしょうか?

多分、今回の魅力、醍醐味という意味では、やはり「未来少年コナン」を舞台化しますというところではなく、「未来少年コナン」をインバルさんとダビットさんの演出で、舞台化をしますというところが一番じゃないかと思っています。

先日、日比谷フェスティバルでも少しお話ししましたが、原作をさらに噛み砕いていて、ある種具体的に描かない部分も出てきます。抽象的だからこそ、起きている出来事を届けながらも、その出来事の本質や、「未来少年コナン」というアニメーションが伝えたいメッセージは何かということがよく分かります。

具体化しないことによって、より入りやすいものになってきているんです。そこで起こっていることは、昨日の母親とのケンカに少し似ているのかもとか、お客様がこれまでに経験してきたこと、観てきたこと、聞いてきたこと、実際に経験したことはないけれどニュースで見聞きしてきたこととか、そういうところにリンクして、そういう中で、自分はどうすればいいのかと考えたりします。自分はどうしたいという気持ちがあって、その気持ちはいいものなのか、悪いものなのか、もはやいいとか悪いとかの話ではないのか、でも、これにいい悪いをつけなかったら、どういう争いが生まれて……みたいな、考えさせる隙を与えてくれていると思うんです。

この『未来少年コナン』の最大のメッセージは、多分そこだと僕は思っています。もちろん素敵なキャラクターが出てきて、超人的な能力を持った人がいたり、今の世界にはない幾何学的な何かがあったりするんですが、その冒険活劇みたいなところではなくて、みんなの心の中に絶対にどこかに存在するものを持った人たちがポンポン現れてきます。

世界の状況だって、そこに行き着くまでの経緯だって、全部が、自分ではなくても「そういう人がいたな」「自分もそうだったかもしれない」とか、そういうふうに考えられることが『未来少年コナン』の作品の良さだと思います。キャラクターとしては、コナンとレプカが対立しているんですが、コナンのような考えを持った人と、レプカのような考えを持った人たちが対立しているから、こういうことが生まれていると、広義に考えられる。それが今回の一番の魅力なんじゃないかと思います。


<取材協力>
スタイリスト:古舘謙介
ヘアメイク:Ken Nagasaka

<衣裳クレジット>
・ブルゾン ¥41,800/Barbour
・ジャケット ¥38,500
・ネクタイ ¥8,580
・パンツ 参考商品
/ともにKent Ave.
・シャツ ¥14,300/SENTINEL
・靴 ¥44,000/42ND ROYAL HIGHLAND Navy Collection(42ND ROYAL HIGHLAND)
・眼鏡 ¥48,400/金子眼鏡(オプティシァンロイド)
・時計 ¥41,800/BRISTON(UNBY GENERAL GOODS STORE)
・サスペンダー/スタイリスト私物

※アイデアニュース有料会員限定部分には、コナンのような心を持ちたいという思い、「総合芸術」であり舞台化される意味を考えさせられる作品だというお話などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■コナンのようにまっすぐな心を持つということは、ひとつの夢かもしれない

■いい刺激を与えられる人間にはなりたい。役者としては、それができたら無敵だと

■70年代の作品「未来少年コナン」が、なぜ今舞台化されるのかを感じられると思う

■「総合芸術とはこういうことをいうんだな」と。舞台化する意味も考えさせられる

<舞台『未来少年コナン』>
【東京公演】2024年5月28日(火)~6月16日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪公演】2024年6月28日(金)~6月30日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/fbconan2024/

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加藤清史郎さん=撮影・岩村美佳
加藤清史郎さん=撮影・岩村美佳

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<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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