ミュージカル『ラフヘスト~残されたもの』が、2024年7月18日(木)から7月28日(日)まで、東京芸術劇場シアターイーストで上演されます。2024年1月に開催された第8回韓国ミュージカルアワードで作品賞、脚本賞、音楽賞の主要3部門を受賞した作品で、日本初演となります。韓国を代表する天才芸術家と称された実在の二人の男性、鬼才と言われた詩人イ・サンと韓国抽象美術の先駆者キム・ファンギを夫にもち、そして自身もエッセイストで評論家で西洋画家でもあったキム・ヒャンアンの人生を、史実に基づいて描いたオリジナル・ミュージカルです。
主演として韓国と縁の深いソニンさんが初めて韓国ミュージカルに出演します。今回ソニンさんは俳優としてキム・ヒャンアンを演じるだけでなく、訳詞も手がけられています。ファンギ役は古屋敬多(Lead)さん、イ・サン役は相葉裕樹さん、イ・サンと恋に落ちる若き日のヒャンアンであるトンリム役は山口乃々華さんが演じます。また、2022年の読売演劇大賞で優秀演出家に選出された稲葉賀恵さんが初ミュージカル演出を担います。
アイデアニュースでは、ソニンさんと、稲葉賀恵さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、ソニンさんが20代から80代までを演じるというお話、その表現のこと、訳詞についてのお話などを紹介します。「下」では、作品の魅力、作品における歌の役割、作品が問いかけるものなどについてのお話と、読者の方へのメッセージを紹介します。
――ソニンさんはたくさんの作品に出演されていますが、この作品でしか見られないようなところはありますか?
ソニン:80代から20代までを演じるのは初めてです。
――80代まで演じるんですね!
ソニン:最初が80代です。しかも、韓国では扮装で表現していたりするところを、『歳をとった扮装はさせない』と稲葉さんからもいただいているので、メイクや髪や服装に頼らず、どのように80代から20代までを演じるようかなと思っています。でも80代、70代、50代のリアリティを見せるというよりも、ひとりの人間が人生を振り返った時の、頭の中の妄想や幻想で時間を動かしていくので、それぞれの年代をどう芝居で見せるかが大事ですね。
今までの私は服やメイクに頼ってきたので。外見に頼らず、かつ稲葉さんの演出のマジックで、どこまで説得力を持ってその年代を演じられるか。映画や舞台でも、おばあちゃんを演じる若い方はいますが、そうではない切り口でどう表現するかということは、今までやったことがありません。そもそも80代を演じたことがありませんしね。
――稲葉さんは、その見せ方をどのように考えていらっしゃいますか?
ソニン:どうかそこをクリアによろしくお願いします(笑)。
稲葉:そうですよね(笑)。確かに分かりやすさで言うと、扮装するとか白髪が混じっているなどの方法があると思います。基本的に私は俳優を見るのが好きなんです。その場で体が変わっていったり、若くなっていったりとか、すごいと思いますし、舞台で、ひとりの人間が、テキストを借りたり、歌を借りたりして、変容している様を見ることが好きなんです。だから、表現として付け足すというよりは、若い時からお年を召したところまで演じている、ひとりの人間が見える時が好きです。
結果、それはその人の魂みたいなものじゃないですか。だから、役をまとっているけれど、「AがBになっている」瞬間はなくて、「Aという人が、Bという役を借りて、Cになっている」と思っています。Cという人がBをずっと纏わなければいけないということではなく、「Cになっている状態」というのが、変容したりとか、あまり(扮装などを)足さないでやっていることの演劇的な面白さだと思っているので、そこに挑戦したいと思っています。
――ソニンさんは、韓国語も日本語も理解できる方ですが、言葉による質感の違いや、表現の仕方の違いなど、今回訳詞をされていて感じたことはありますか?
ソニン:あります。多くはないけれど、少なくもないというか。言葉のニュアンスだけではなく、文化の違いもあるじゃないですか。韓国人はこういう風に思ってこういう風に表現しているだろうなというところでも、そのまま日本に持ってきた時に、日本人にはいまいちピンと来ないところもあるので、そこはすごく気を遣いました。
「日本人の感覚で、韓国語に近いニュアンスを表現するにはどうする?」と、なるべく似たようなニュアンスにできるようにと最初は考えていましたが、最終的には、「日本人にとって、この表現はもしかしたらピンと来ないし、こちらのほうが日本の方の琴線に触れやすいフレーズだよね」みたいなことを意識して紡ぎました。
――文化の違い、人の違い、国の違いというのが、やっぱり言葉にもあるんですね。
ソニン:特に今回は芸術を扱っているからこそというのもありますし、詩をそのまま引用するところもあったりします。ヒャンアンよりもトンリムのほうが詩っぽいフレーズを並べることが多かったりするんですが、割と詩っぽいところや美しい表現というのは、「日本語だとこっちのほうが美しいよね」とか、日本語の美しさみたいなものも意識して作りました。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、訳詞についてのお話などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。インタビュー「下」では、作品の魅力、作品における歌の役割、作品が問いかけるものなどについてのお話と、読者の方へのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■稲葉:日本語の語感で表現することがすごく難しい。何を大事にするか、最優先するか
■稲葉:「3つとも入れたい」となったら、すべてを網羅できる日本語をひとつ抽出したり
■ソニン:ミュージカルは、音の中で制限がある。すごく多角的に見なければいけない部分が
■ソニン:訳詞のミーティングは、キム・ヒャンアンを演じる上でもすごく助けになる時間に
<ミュージカル『ラフヘスト~残されたもの』>
【東京公演】2024年7月18日(木)~7月28日(日) 東京芸術劇場シアターイースト
公式サイト
https://bellewaves.jp/lart-reste/
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