「演じることで切れそうな糸をつなぎとめる」、『恋とボルバキア』小野さやか監督インタビュー(上) | アイデアニュース

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「演じることで切れそうな糸をつなぎとめる」、『恋とボルバキア』小野さやか監督インタビュー(上)

筆者: 森田 のり子 更新日: 2018年4月5日

新作ドキュメンタリー映画『恋とボルバキア』が全国で順次公開されているなか、監督の小野さやかさんのインタビューを2回に分けてお届けします。(上)では、作品全体の構想や、「演じ合うことは愛すること」というキーワード、さらに撮影方法について聞きました。

小野さやかさん=撮影・伊藤華織

小野さやかさん=撮影・伊藤華織

——この作品を見た一番の感想は、LGBTQという要素を社会問題として強調するのではなく、撮影対象の方々の恋愛や家族にまつわる苦悩や喜びという普遍的な視点を打ち出していることの新鮮さでした。この方向性は、どのようにして定まったのでしょうか?

出演者たちに対してLGBTQというカテゴライズをしないことは、映画にする最初の段階で、ある程度決めていました。(映画の元になった)テレビ番組の時には、「女装」をテーマにした企画書を書く必要があったので、出演者の方々もタイプ別に割り振っていました。でも、テレビ番組を作った後も撮影を続けていくなかで、みんな「女装」という枠に収まらなくなっていったんです。当初は社会的にも「女装」がブームでしたが、徐々に空気が変わっていって、代わりにLGBTQという言葉が広まるようになっていきました。でも、その言葉を出演者たちに当てはめようとするとしっくりこなかったんです。

——小野監督が出演者の方々と親しくなったことで、そうしたカテゴリで判断することに違和感を持つようになったということですか?

映画って、イメージや感情を言葉で整理して計算的に作っていくものだと思っていますが、今回の出演者たちのことはうまく言語化できなかったんです。とくに、LGBTQという要素を図鑑のようにして並べるつもりはありませんでした。

みんな撮影対象として、こだわって選んでいる方々なのですが、実際のところ、安易には言語化できない要素もありました。たとえば、出演者の王子は東京での劇場公開が終わった後、自身がクラインフェルター症候群であることを公表しましたが、映画の中ではそれに触れていません。王子自身が公にする覚悟を持つまでは、その言葉だけが一人歩きすることを避けたかったからです。

——出演者の方々はこだわって選んだということですが、その決め手になったのはどういう点だったのですか?

多くの女装者たちは自分の美しさを見て欲しいというアピールをするのですが、出演してもらった人たちは「女装」をツールにして、自分のためだけではない居場所を作っている側でした。ドキュメンタリーを撮るには「場」が大事なので、彼ら/彼女らの「場」を借りることで、自由な表現ができるのではないかと考えました。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、撮影開始から3年くらい経ったころに、いろいろな問題が起きて出演NGになった方があり、一時は映画にならないんじゃないかとも思ったという今回の映画製作の状況などについて話してくださったインタビュー前半の詳細と写真を掲載しています。6日掲載予定のインタビュー「下」では、出演者との具体的な関係性や、制作を支えた動機とその価値観の変化、さらに今後の計画などについて伺ったインタビューの後半の詳細を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■もう映画にならないんじゃないかとも思いました

■「演じ合うことは愛すること」という言葉の意味は……

■出演者たちとディスカッションを重ねる撮影方法

こちらは公式ページに掲載されている予告編動画です。

<映画『恋とボルバキア』>2018年4月5日以降の上映劇場
【京都】3月17日(土)~終映未定 出町座
【新潟】3月31日(土)~4月6日(金) シネ・ウインド
【北海道】4月6日(金) シアターキノ
【兵庫】5月26日(土)~6月8日(金) 元町映画館
【福岡】6月12日(火) KBCシネマ1・2
劇場情報はこちらでご確認下さい
http://koi-wol.com/theater/

<関連リンク>
映画『恋とボルバキア』公式サイト
http://koi-wol.com/
映画『恋とボルバキア』公式ツイッター
https://twitter.com/koi_wol
小野さやかブログ「Blue Berry Bird」
http://sayaka-ono.jugem.jp/
小野さやかツイッター
https://twitter.com/ducklingahiru

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映画『恋とボルバキア』より=(C)2017「恋とボルバキア」製作委員会

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<筆者プロフィール> 森田 のり子(もりた・のりこ)/産業系新聞社勤務のかたわら、大好きなドキュメンタリー映画の批評、ドキュメンタリー専門雑誌「neoneo」の編集、ドキュメンタリーの上映イベント企画などに携わってきました。さらにドキュメンタリーの世界を究めようと決意し、新聞社を退職して東京大学大学院学際情報学府に入学。現在は同大学院博士課程に在籍し、日本のドキュメンタリー映画史について研究しています。⇒森田 のり子さんの記事一覧

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