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「この芝居ヤバイっしょ!」と声を大にして言いたい、舞台『BLUE/ORANGE』ルポ

筆者: 達花和月 更新日: 2019年4月16日

2010年の日本初演から9年。イギリスの劇作家Joe Penhall作『BLUE/ORANGE』が、2019年4月28(日)日まで、東京・DDD青山クロスシアターにて上演中です。ロンドンの精神病院を舞台とした、ワンシュチュエーションの丁々発止の会話劇。2人の精神科医、ブルースとロバート、患者のアフリカ系の青年、クリストファー。議論に次ぐ議論の中、己が基本的価値観さえも足元から揺らいでゆく白熱の芝居をレポートします。

≪STORY≫(『BLUE/ORANGE』公式サイトより)
ロンドンの精神病院。境界性人格障害のために入院していたアフリカ系の青年クリストファー(章平)は、研修医ブルース(成河)による治療を終えて退院を迎えようとしている。しかしブルースには気がかりなことがあり、退院させるのは危険だと主張していた。上司のロバート医師(千葉哲也)はそれに強く反対し、高圧的な態度で彼をなじる。納得のいかないブルースはクリストファーへの査定を続け、器に盛られたオレンジの色を問う。彼はそのオレンジを「ブルー」と答えた……。

『BLUE/ORANGE』より=撮影:岡千里

『BLUE/ORANGE』より=撮影:岡千里

約200人を収容する密な劇場空間は、3つのエリアに分けられており、真ん中に細長い舞台、舞台を挟んで相対する形で設けられた客席があり、観客は舞台を観ながら、同時に演者越しに対面に座っている観客の姿・表情が見え、目の前で起きる事件と、それに対する「世間」の反応を、同時に体感できる仕掛けになっていた。

セットは病院らしくほぼ白の配色。中央にテーブルと椅子を配した、カジュアルなミーティングルームといった風情。テーブルの上には、ガラスのボウルに盛られた色鮮やかなオレンジが数個。

天井は(通常では舞台向かって右手にある)劇場入り口側から徐々に斜めに低くなり、劇場入り口とロビーを部屋の出入り口と病院のロビーに見立てていて、劇場入り口側はクリストファーが帰りたがる「外」その反対側は低い天井故に「閉ざされた閉塞空間」を思わせる。

その閉じた空間である劇場入り口反対側には、掃除用バケツとベンチと空気清浄機、そしてなみなみと水を湛えた大きなボトルを頂く給水サーバー。セットとしての「病院の設備」の一部という役割と、怒涛のような台詞の応酬の芝居のため、文字通り「給水」を兼ねて設置されたものと思われるが、上演中に演者が給水するたび、ボトルの中で沸き上がる気泡の形と音が、ある時は場の空気感を助長して不安定さを煽り、またある時は、「おいおいしっかりしろ、正気に戻れ」と言わんばかりに、劇中の議論の洪水に溺れそうになっている意識の気付け役になったりと、なかなかに面白い効果を出していたように感じられた。

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<有料会員限定部分の小見出し>

■一見非日常的。しかし話のそこかしこに、じっとりと、知っている感覚が登場する

■成河さんのブルースはとても自然体。細やかな演技が劇場隅々まで伝わってくる

■千葉さんのロバートは、独特の間合いが絶妙で「何考えてんだ、このおっさん!?」と

■章平さんのクリストファーは、客席に与えるギャップが凄まじい。スケールの大きさを感じた

■「この芝居ヤバイっしょ!」と声を大にして言いたい、とても見ごたえのある面白い芝居

<舞台『BLUE/ORANGE』>
【東京公演】2019年3月29日(金)~4月28日(日) DDD青山クロスシアター
http://www.ddd-hall.com/
作:Joe Penhall、翻訳:小川絵梨子、演出:千葉哲也
出演:成河、千葉哲也、章平
公式サイト
https://www.stagegate.jp/

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『BLUE/ORANGE』より=撮影:岡千里

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 遠方の友人を誘って観たお芝居との出会いをきっかけとして演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、さまざまな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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