2022年11月16日(水)から22 日(火)まで「Cinema Connection」と「French Connection」の2バージョンで、東京・博品館劇場で上演される『Dramatic Musical Collection 2022』で、久しぶりの共演となる、東山義久さんと、東山光明さんご兄弟のインタビュー、後編です。「下」では、義久さんには、エンジニア役についてのお話を、光明さんには、『SMOKE』『BLUE RAIN』に続いて出演された音楽劇『刻』のこと、この3作品の作曲を手がけたホ・スヒョンさんとお話しされたことなどについて伺いました。また、ご兄弟ならではの、子どもの頃のエピソードや、お互いを舞台人としてどのようにご覧になっているかということなどについて伺った内容を紹介します。
(※このインタビューは9月末に実施しました)
――義久さんは今、ミュージカル『ミス・サイゴン』に、2年越しの「エンジニア」役で出演されていますね。
義久:オーディションからだと、2018年の暮れくらいから始まったので4年越しです。
――帝劇のセンターから見えた景色はいかがでしたか?
義久:本当にすごく特別で「宇宙」みたいでした。特に「アメリカン・ドリーム」はセットもなく、舞台上に1人で、照明もサイドサスと前からのピンスポットだけ。さらに「何してもいいよ」って言われていることの恐ろしさというか(笑)。
――「アメリカン・ドリーム」では、演出からのオーダーはなかったんですか?
義久:あそこは全部自由なんです。「この歌詞のときはセンター」というような、立ち位置の決まりだけはあって。でもそこに行く過程はもう「ご自由にどうぞ」だから、結構腕の見せ所。演出そのものは、すごく細かく入るんです。例えば、「アメリカン・ドリームが見えてきた」、というところでも、「なんだこの香り。なんだこの香り。なんだこの香り」みたいにどんどん音が上っていって、バァーっとショーが始まるわけです。あそこまでいくと、もう余裕というか、ただ楽しいんですが、そこにいくまでに、すごく緊張感があるんです。演出家からは最初、「踊るな」って言われたんですよ。「嫌味っぽい」と言われて。
光明:踊れるから?
義久:そうそう。だから「踊っちゃ駄目」って言われていたんですけど、ゲネプロのときに演出の許可を貰って、フルMAXで踊ってみたんです。そしたら、終わった後に演出家がバッと来て「これは今回のエンジニアのサプライズにしよう! 」って言ってくれて、踊りをフルMAXで全部やっていいってことになったんです。
光明:ゲネプロで禁止令が解禁されたんだ。
義久:特にあのシーンでは、本当に1対1897なので、舞台から見える景色が、最初はとんでもなく怖かったんです。でも2ヶ月半リハを積んで、最後は「早く見せたいな、見てもらいたいな」と変わりました。ですからすごく特別ですし、本当にあの景色は財産になりました。
――拝見したのですが、「アメリカン・ドリーム」のシーンと、キムの自死に際してショックを受けている表現が、特に印象に残りました。
義久:あそこも、四者四様です。崩れ落ちる方もいれば、うなだれて天を仰ぐ方とか。表現については、特に演出がついていなくて、「このあたりのサスで最後は終わる」だけなんです。ただし、演出家から唯一のオーダーがあったのは、「キムもクリスもエンジニアも、エレンもジョンも、全員が絶望で終わってほしい」と。そして、「ただひとつの薄い希望は、何も知らない子供のタムだけ」というふうに見せたいと言われていました。ですから、カーテンコールが一番緊張しました。
――カーテンコールが一番緊張されたんですか?
「キム」が亡くなって絶望で終わるので、もうカーテンコールは毎回どんな顔して出ていいかわからなくて。あまりこう「華やかに出てくるのも……」という感じもあるので。
光明:まぁねぇ。
――「エンジニア」役はクワトロキャストで、出番と出番の間が数日空くことがありますね。
義久:しょっちゅうあります。僕は次が札幌公演で来月の10日なんですが、前回が大阪公演の9月18日だったから、22日空くんです。それだけ空くのは「エンジニア」役だけなので。アンサンブルの人たちは出来上がりまくっていて、たまにカンパニーに帰ると、いい意味で動きが全然違うんです。全然違うから「あれっ!?」って。
――それは焦りますね。
義久:焦ります。寝れないです、もうガチガチですよ。
光明:そうなるよね。
義久:確認していると本番が終わってしまうので、熟していけないから、もったいないなと思って。
光明:なるほどね。
――光明さんは、浅草九劇の音楽劇『刻』で、「高峰」と「横山」という、真逆の役所を役替わりで演じられました。演じる際に工夫されたことはありますか?
光明:同じ作品で、役替わりで毎回変わるというのは僕も初めてで、稽古も手探りの状態からやりました。そして心がけたのは「高峰をやるときは、横山は忘れよう」と。一冊の台本に、二役の駄目出しを書いたらぐちゃぐちゃになるので、台本も二つ用意しました。「高峰のときは高峰しかやらない」という感じの切り替えでやっていました。同じ日の公演で、昼は「高峰」、夜は「横山」ということもありましたが、稽古のときからその切り替えはやっていたので、本番でもすぐに切り替えできました。
――役替わりもありつつ、ストーリーもショッキングで、深さと重さを感じる作品でした。
光明:70分の短い作品ですが、本当に消耗しました。舞台袖でのスタンバイのときに、一番帰りたくなるぐらい疲れるんです。自分の中では、「本当に前のめりでいかないと倒れるんじゃないか? 」ぐらいの気持ちで毎回臨んでいました。
――舞台からはけることもほぼなく、終始ピーンと緊張感が張りつめていましたね。
光明:かなり重たいテーマでしたし、「これが、お客さまにどう伝わるか? 」ということも、幕が開かないとわからなくて、不安な部分もありました。でもあのテーマが大好きな方もいらっしゃると思います。怪談話じゃないですけど、「夏に怖い話」みたいな感じで楽しめたらいいなと思ったんです。話があまりに重いので、重くなりすぎて欲しくないという気持ちはずっとありましたね。「音楽劇」で、歌があったのが救いだったかと思います。
※アイデアニュース有料会員限定部分では、『SMOKE』『BLUE RAIN』に続いて出演された音楽劇『刻』のこと、この3作品の作曲を手がけたホ・スヒョンさんとお話しされたことなどを東山光明さんに伺った内容を、また、ご兄弟ならではの、子どもの頃のエピソードや、お互いを舞台人としてどのようにご覧になっているかということなどを紹介し、インタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■ 光明:ホ・スヒョンさんが、「熱く歌ってくれたのがすごく良かった」と
■ 光明:「こんなん出来ンねんで、オレ!」みたいな 義久:花火が口の中にポッと
■ 光明:帝劇のど真ん中から兄貴が最後に出てくる瞬間、「やっぱスゲェな」って
■ 義久:「あれを思い出したら、こういう感情になれる」という引き出しが多い光明
<Dramatic Musical Collection 2022>
【東京公演】2022年11月16日(水)~22日(火) 博品館劇場
公式サイト
https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/pr_2022_11_16
<アフタートーク開催決定>
・2022年11月17日(木)18:30公演終演後
DIAMOND☆DOGS、MC:和田泰右
・2022年11月21日(月)14:00公演終演後
東山義久 北翔海莉 木村花代 東山光明 常川藍里/音楽監督 宮﨑誠、MC:中塚皓平
※各出演者や作品の見どころ、お稽古中のエピソードなどを紹介。当日の公演チケットをお持ちのお客様は、終演後そのままお席でご覧いただけます。
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ご兄弟揃っての写真やインタビューはレアなので凄く嬉しかったです。
「ミス・サイゴン」のアメリカンドリームダンス解禁のお話や、とても難しい2役に挑戦された「刻」のお話などとても興味深く拝見しました。これから始まる《Dramatic Musical Collection」も開演前にこのインタビュー記事を読むことができて公演への期待がますます膨らみ今からワクワクしています。素敵なインタビュー記事と写真をありがとうございました。