2023年9月7日(木)から9月24日(日)まで新国立劇場中劇場で、9月29日(金)から10月1日(日)まで梅田芸術劇場メインホールで上演されるDaiwa House presentsミュージカル『生きる』で、小説家役をダブルキャストで演じる平方元基さんと上原理生さんのインタビュー後編です。「下」では、市村正親さんと鹿賀丈史さんのこと、『生きる』という作品のメッセージについて、作品の脚本や音楽のことについて伺った内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
――最初に市村さんと鹿賀さんのお話を少ししてくださいましたが、過去に共演した役者という目線と、その方が演じる『生きる』の渡辺勘治という視点でどう思うかを聞かせてください。
平方:僕は鹿賀さんとミュージカル『シラノ』で共演させていただきましたが、鹿賀さんは人に「これはこうだよ、ああだよ」と言葉で言わない人です。ご自身で、やるべきことを訥々(とつとつ)と、舞台上で150%でも200%でもやる人だから。逆に言うと、『生きる』に関しては、彼(渡辺勘治)が生きることで、それに生かされている人が後になって気づく物語になるといいなと思います。
――上原さんは、市村さんに対してどう思われますか?
上原:市村さんも優しいし、温かいですね。優しさの上での厳しさみたいなものがある人です。今はなかなかないですよね。
――コンプライアンス的なこととかを考えてしまって相手に入り込めなかったり、人とのコミュニケーションをちょっと考えちゃうところがありますよね。
上原:市村さんは芝居お化けだなと思うんですが、やっぱりいいものを作りたいからという思いがすごく強い方だと感じます。多分、どの現場に行っても、多分そうなんだろうなと。よりよいものを作りたいからこそ、「ここってこうしたらいいんじゃないか?」ということを、すっと言ってくれるし、ご自身も追求し続けるし。でも普段接してみると、気さくで朗らかで、優しくて温かい人で、とにかく居酒屋のシーンでどういう風に相対することができるか、とても楽しみですね。
――『生きる』という作品は、市村さんと鹿賀さんのおふたりだからこそ、というところがあるのでしょうか。
平方:お二方とも、誰かに何かをアドバイスする時も、すべては作品のためなんですよね。自分のためにそうやってほしいわけじゃない。それがすごく素敵だなと思います。自分のためにやってほしいことを言ってくる人に出会ったこともありますし、そういう時にはやっぱり違和感を感じます。鹿賀さんがそういうことをおっしゃっているのを見たことがないし、理生の話を聞いていて、市村さんに関しても、「そりゃそうでしょうね」と思う。作品がよくなるように、ついて行きます、という感じです。
上原:本当に!
――上原さんは初共演の鹿賀さんに向けて、楽しみにしていることはありますか?
上原:楽しみしかないですね。未知数です。ご挨拶だけさせていただいたことがありますが、舞台上でご一緒することがなかったから、どんな感じなのかを早く知りたいという思いがあります。
――共演されたおふたりだからこその組み合わせも観たいし、初共演の組み合わせはどうなんだろうという興味も湧きますね。
上原:そうですね。
平方:こっちもどきどきするもんね。
上原:自分もどう対応できるのかということがすごく楽しみですね。
――作品のテーマとして、残りの人生をどう生きていくかという問いかけが、観客に残るものだと思います。何でもいいのですが、お仕事でご一緒した方、もしくは偉人などでもいいのですが、そういう視点で、この人のこういう生き様などが自分の記憶に残る、影響を残したというような出会いやエピソードはありますか? そこから話を膨らませて、別の話でもかまいません。
平方:祖母が去年亡くなった際に、何度か生死の境を行ったり来たりしていたんですが、最後に「まだ死にたくない!」と言ったんです。言葉を吐くのもきついのに。いつでも毎日やりたいことをやり尽くして、日々そんなに後悔のない人だと僕は思っていたんです。僕はおばあちゃん子だったから、おばあちゃんのことをすごく知っているようだったけれど、「まだ生きたい」と言ったことに驚きました。だいぶ長生きして、まだ生きて、もっと何かやって、その先にあったのが僕の舞台を観るのもそうだろうし、うちの父親と母親のことをもっと見たいし、とか。やりたいことはいくらでもあると聞いた時に、生きる貪欲さ、僕にはそれがすごく衝撃で……本当に衝撃だった。こんなに苦しくてもいいの? って。
――体が辛い状況でも……ということですものね。
平方:それで、「どこに行きたいの?」と聞いたら、「二重橋」と言いました。僕としては、よく通っている場所だし、「近くで仕事してる!」と思うじゃないですか。亡くなっちゃったから、おばあちゃんの小さい遺影を連れて行くしかないんですが、人生の最後にも、行きたいところややりたいことを持ち続けていることは、すごく素晴らしいことだし豊かなことなんだとおばあちゃんが教えてくれました。僕はすごく短くその日その日を生きているけれど、もっと広く見ると、叶う叶わないじゃなくて、やってみたいことが、あのおばあちゃんの中に溢れているのが衝撃でした。
――上原さんはいかがですか?
上原:僕は2月の末にコンサートをやらせてもらいましたが、そこに市村さんがメッセージをくださったんです。
――それはこの共演を踏まえてでしょうか?
上原:そうなのかな?
平方:でも、元からすごく可愛がってもらっているよね。
――10年もご一緒されているんですものね。
上原:でも、本当に『ミス・サイゴン』で最後にご一緒させていただいた時に、いろんな話をさせてもらって、舞台の上で芝居するとはどういうことなのか、どうやって芝居をするか、その役として生きるかみたいな話をさせてもらったりとかしていたのもあって、メッセージをくださったんです。その時に、市村さんが、市村さんのお師匠さんから言われた、演技についてというお言葉をくださったんです。「僕はもう見つけたよ」って。
――市村さんは、お師匠さんからの言葉に、もう答えを見つけていらっしゃるんですか?
上原:はい。俺はこの答えを探さなきゃいけないと思っているんですが、そんな中、最近たまたまブルース・リーの「燃えよドラゴン」のワンシーンの動画を見たんです。そのワンシーンが、すごい興味深かったんですよ。ブルース・リーは武術家でもありアクション俳優でもありながら、哲学者でもあったんです。
すごくいろんな言葉を残していて、いろんな書物を読んでいて、老孟思想や陰陽思想、宮本武蔵の書を読んでいたり、かなり読書家で。彼の残した言葉をブルース・リーの娘さんがまとめて1冊の本を出したんです。その中で言われている言葉でものすごくきたのがあって、「心を空にしろ。型を捨てて形をなくせ。水のように。水はティーボトルに入れば、ティーボトルの形になる。コップに入れば、コップの形になる。ティーポットに入れば、ティーポットの形になる。水は穏やかに流れることもできれば、激しく打つこともできる。水になれ、友よ」という言葉を残しているんですが、これってもしかして、その答えにつながるのか? と思ったことがあります。
平方:つながると思う。俺も、その水のことなんだけど、YouTubeでいろんな動画を見ていたわけ。その時にその言葉たちがあって、「抗うな。抗わないで水の流れる方向に行けば、そちらに行く。頑張ってもそこに留まってしまう。そこの流れが広ければ広くなる、ティーポットに入ればティーポットになる」ということを言っていて、「まさしく!」と思った。
<取材協力>
■平方元基
スタイリスト:八木啓紀(Hironori Yagi)
ヘアメイク:真知子 (Machiko)
衣裳クレジット:ジャケット、カットソー、パンツ すべてVU(ヴウ)
他スタイリスト私物
問い合わせ先
JOYEUX(ジョワイユ)
107-0062港区南青山6-6-2 Luna Rossa 南青山3F 03-4361-4464
■上原理生
スタイリスト:岡本愛香 ( Aika Okamoto)
ヘアメイク:yuto
※アイデアニュース有料会員限定部分には、作品の脚本や音楽のことについて伺った内容と、お客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■平方:板の上って余計に、生きているというか、普通に存在していることが、難しい状況
■上原:全部を言葉で表現しようとしない作品。複雑な心境を、丁寧に楽曲で描いている
■平方:あの頃だって今だって女性の強さが、素敵なものとして変わらず光っているなと
■上原:世のお父さんたち、男性たち、企業戦士たちに、よければ来てもらいたい
<Daiwa House presents ミュージカル『生きる』>
【東京公演】2023年9月7日(木)~9月24日(日) 新国立劇場 中劇場
【大阪公演】2023年9月29日(金)〜10月1日(日) 梅田芸術劇場メインホール
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/ikiru2023/
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