芝居のAチームと、心のBチーム 『クララ-愛の物語-』2チーム公演を観て | アイデアニュース

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芝居のAチームと、心のBチーム 『クララ-愛の物語-』2チーム公演を観て

筆者: 村岡侑紀 更新日: 2021年8月2日

シューマンとブラームスを愛し支えたピアニスト・クララの生涯を、生演奏と朗読で綴るストーリー・コンサート『クララ-愛の物語-』が、2021年7月14日(水)と7月15日(木)に、彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールで上演されました。本作は、読売日本交響楽団のチェリストである渡部玄一さんが作・演出を手掛けられ、2018年に長野県上田市で初演、2019年に東京でクララ生誕200周年を記念して再演されています。今回は、クララ役とシューマン/ブラームス役がWキャスト。伊波杏樹さんと渡辺大輔さんのAチーム、水夏希さんと佐賀龍彦さん(LE VELVETS)のBチームと、チームごとの魅力も楽しめる2日間となりました。岡田愛(ソプラノ)さん、枝並千花(ヴァイオリン)さん、渡部玄一(チェロ)さん、島田彩乃(ピアノ)さんによるクラシック音楽の生演奏と、両チームの朗読はいかに融合し、いかに響き合ったのか。公演の様子を紹介します。(写真は、7月15日に上演されたBチームのものだけとなっていますが、どうかご了承ください)

(写真左から)島田彩乃さん、佐賀龍彦さん、渡部玄一さん、水夏希さん、岡田愛さん
(写真左から)島田彩乃さん、佐賀龍彦さん、渡部玄一さん、水夏希さん、岡田愛さん

「クラシック音楽の本格的な演奏と実力派俳優陣による朗読が融合する朗読音楽劇」(公演リーフレットより)という紹介文からは、さまざまな想像が広がります。以前観たことがある朗読劇の様子なども思い出しながらホールに入ると、まず目に入ったのは舞台の真ん中のグランドピアノでした。ピアノの前には譜面台が数台。ピアノと譜面台を挟んだ左右両サイドにはそれぞれ、椅子と小さなテーブルと、スタンドマイクが用意されています。そして天井からはスクリーン。

まだ演者が誰もいないステージを見ながら、彼らの姿を想像しました。開演まであと10分ほど。席に配布されていたパンフレットを開き、クララがショパンやリストと肩を並べるピアニストであったことを改めて思い出しました。実際、ピアニストを目指し、クララの父親に弟子入りしたことで、シューマンはクララと出会います。また、ブラームスは、シューマン夫妻に会ったとき、自分の曲をピアノで弾いています。開演前、舞台中央に位置するピアノを眺めていると、そんな3人の姿が呼び起こされるのでした。

上手にクララ、下手にシューマン/ブラームス、中央にソプラノ、ヴァイオリン、チェロ、ピアノという配置で、ストーリー・コンサートは始まりました。開幕前のインタビューで佐賀さんがおっしゃっていた「朗読と音楽とでは、感じる心の動きの角度が違うと思うので、多角的になるのではないでしょうか。朗読と音楽を合わせたら、思っていた以上に両者がくっきりとしたんです」という言葉の通り、交互に登場する音楽と朗読は、それぞれを単独で楽しむよりも、はるかに心を揺さぶるものとなりました。どれほど素晴らしい演奏でも、どれほど素晴らしい朗読であっても、演奏だけ、朗読だけでは作り出せない空間がそこにあったのです。

プロローグの音楽は、ブラームスのヴァイオリンソナタ第二番第二楽章。時は19世紀。スクリーンにテキストが投影され、時代背景や場所、クララとロベルトの年齢が示されます。「19世紀」という文字と、奏でられる音楽、そしてソプラノで歌われる「あなたに初めてお会いして以来」(シューマン)によって、さっきまで2021年7月の埼玉にいたはずの私は、たちまち19世期のヨーロッパへと誘われるのでした。ここで注目したいのは、プロローグにおける楽器のみの演奏と、朗読との間に「歌」があることです。歌は、音楽と言葉で成り立っています。美しい歌声とピアノ演奏は、演奏から朗読の世界へと誘ってくれる役割をも果たしていたように感じました。

さあ、この舞台の上にクララとシューマン、ブラームスが現れても、何ら不思議なことはないでしょう。とはいえ、まだこの時点では、クララの「水さん」「伊波さん」、シューマンの「佐賀さん」「渡辺さん」です。「ねえ、ロベルト、また何かお話をして」「おや、クララ。もうお稽古はいいのかい?」。朗読はクララとシューマンの、このやり取りで始まります。この場面が終わると、シューマンの「ピアノ三重奏曲第2番第2楽章」が演奏されます。楽器による演奏から歌、そして朗読から、再び楽器による演奏へ。取材時に渡辺さんは、「演者として、目でお客さまを引き込み、音楽への橋渡しとなるような朗読にしたい」とおっしゃっていました。AチームとBチームそれぞれの朗読を聴かせていただきながら、その言葉を思い出しました。気づけば感じ方の重心は逆転し、「水さん」「伊波さん」のクララ、「佐賀さん」「渡辺さん」のシューマン、やがてブラームスとなっていました。

音楽が奏でられ、言葉が語られる。そして次第に、音楽が語り、言葉が奏でて、物語となって響くのでした。主語と動詞が入れ替わり、組み合わせが変わるように、音楽と歌と言葉が混ざり合って呼応し、共鳴し合う空間。物理的には、両日ともに同じ空間にいたわけですが、響き方はかくも違うのかと驚きました。その響きの違いを紹介しましょう。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、AチームとBチームそれぞれの魅力や、作中に登場する音楽について感じたこと、ストーリー・コンサートという形式について感じたことなどを掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■チャーミングな伊波クララ。シューマンとブラームスのメリハリが光った渡辺

■類まれなる存在そのものだった水クララ。佐賀ブラームスの激白と独白は圧巻

■クララの生涯を振り返っているようなブラームス「ヴァイオリンソナタ第二番」

■最後にブラームス「ピアノ三重奏第1番」を聞きながら、はっと気づいたのは…

■歴史的音楽家と交わるストーリー・コンサート。9月には『ショパン物語』開催

<ストーリー・コンサート『クララ-愛の物語-』>
【埼玉公演】2021年7月14日(水)~7月15日(木) 彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール(この公演は終了しています)
2021年7月14日(水) 14:00開演(Aチーム)/18:00開演(Aチーム)
2021年7月15日(木) 14:00開演(Bチーム)/18:00開演(Bチーム)
*Aチーム(クララ役:伊波杏樹/シューマン・ブラームス役:渡辺大輔)
*Bチーム(クララ役:水夏希/シューマン・ブラームス役:佐賀龍彦)
公式サイト
http://www.tokyo-eg.com/

<キャスト>
水夏希/佐賀龍彦(LE VELVETS)
伊波杏樹/渡辺大輔

<作・演出>
渡部玄一(読売日本交響楽団)

<演奏>
岡田愛(ソプラノ)
枝並千花(ヴァイオリン)
渡部玄一(チェロ)
島田彩乃(ピアノ)

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<筆者プロフィール>村岡侑紀(むらおか・ゆき) ライター 広告制作会社に入社し、コピーライターとしてキャリアをスタート。その後、化粧品メーカーのマーケティング担当として多くのブランドを育成。現在は、ベンチャー企業で広報を担当している。さまざまなフィールドに立ってきたが、共通するのは「誰かや何かの魅力を伝える」こと。趣味は、舞台鑑賞や美術館巡り。作品はもちろん、そこに携わる方々の魅力を伝えたいという思いで、ライターに。 ⇒村岡侑紀さんの記事一覧はこちら

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最近のコメント

  1. シトラス より:

    Aチームしか拝見出来ませんでしたが、ここに書かれているように、まさに声での演じ分けが見事でした。
    伊波さんの年齢による声の演じ分けはお見事で、とても、魅力的で、シューマン、ブラームスが引き込まれていくのが解る気がしました。
    また、渡辺さんの二役、劇中でのお話をしてあげる声等、何役も声で演じ分けられて、決して、混同する事はありませんでしたし、且つ、状況と年齢に合った演じ分けも見事でした。
    朗読劇は想像力が勝負な気がします。その想像力を膨らませてくれるのが音楽だと思いました。
    声、お芝居、音楽が絶妙にマッチした素敵な空間の舞台でした。

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