姿月あさと「THE PRAYER X」、ズ~ンと震えたライブの醍醐味 | アイデアニュース

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姿月あさと「THE PRAYER X」、ズ~ンと震えたライブの醍醐味

筆者: 橋本正人 更新日: 2015年12月8日

これまで数々のミュージカルや歌劇、コンサート、ライブなどを鑑賞してきましたが、今回ほど「ほんとに、来てよかったなぁ」と思ったことは、そうそうあるものではありません。歌はもちろんいいけれど、メンバーが良い。そしてトークと「楽器」がいい。ホール全体が、ズ~ン、ズ~ンと大きく震えた「ずんこさん」(姿月さんのニックネーム)のセルフ・プロデュース・ライブ「THE PRAYER X」ビルボードライブ大阪公演(2015年11月26日)の様子をお伝えします。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

セッティングを終えたバンドメンバーによる「オーシャンゼリゼ」の前奏開始とともに、ホール上手の通路から登場した姿月さん。あら、なんて素敵。白のワンピース姿なのですが、肩の部分がボレロのようにというか、鎧の肩当てのようにというか、脇の部分をくり抜いた形で肩を包み込んでいるのが、目立ちます。そして、ドレスのすその部分は外側から内側に巻き込んでいるような不思議な構造で、非日常感たっぷり。そして右耳を完全に出して、左に前髪を流し、左耳の横でフワッと膨らませたヘアスタイルのなんと優雅なこと。宝塚歌劇団宙組初代トップスターだった15年前と全く変わらない彫像のようなお顔にピッタリです。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

登場した姿月さんは、オーシャンゼリゼを軽やかに歌いながら、すぐにステージに進むことはせずに、まずはフロアに降りて、テーブル席の間を縫うようにしてお客さま1人1人に声をかけるように歌い続けました。観客は満面の笑みで姿月さんを迎え、手拍子。ステージに上がると、まずは「10回目THE PRAYER公演にようこそお越し下さいました」とあいさつ。姿月さんが「今回、THE PRAYERに初めていらしてくださった方は、いらっしゃいますか?」と会場に声をかけると、あちこちで手があがり、「ようこそお越しくださいました。お隣の方と、こんにちわ。お友達がたくさんできる時間になるといいなと思っております」と笑いを誘い、あっという間に初めての観客もリラックスムードとなります。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

そして「10回とも全部観たという方いらっしゃいますか?」とたずねると、何十人もがサッと手を上げ、「あらまあ、あららら~、ようこそ。お時間とお小遣いをかけていただき、ありがとうございました」。会場は笑い声に包まれ、「ずんこトーク」の世界が広がっていきました。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「THE PRAYER」は、姿月さんが自分で歌いたい曲を選んで、さまざまな趣向で続けてきた、セルフ・プロデュースの「自分(姿月さん)にとっても、楽しい楽しいライブ」。今回は、11月4日に3年ぶりのニューアルバム「Chante ~シャンテ~」をリリースした直後とあって、「ラ・メール」「約束の花束」「ジェラシー」などアルバム収録曲も披露。軽やかに、優しく、時に激しく、自在に歌い上げます。そして、驚いたのが、後半の「やつらの足音のバラード」でした。

「やつらの足音のバラード」は1970年代にテレビで放映されたアニメ「はじめ人間ギャートルズ」のエンディングテーマで、なんにもない星に草が生え、アンモナイトが生まれ、恐竜が栄えて滅び、山が火を噴き大地を氷河がおおい、マンモスのにおいとともに「やつら」がやってきたという歌。姿月さんはこの歌が大好きで、かつて「THE PRAYER」で取り上げたこともありますが、今回は、なんと姿月さんがマンモスの足音を担当。舞台上のマイクの横に置かれていた銀色のカバンを姿さんがポンと叩いたら、「ド~~~~~ン!」あるいは「ズ~~~~~ン!」という超重低音が会場中に響きわたったのです。とにかくとんでもなく大きくて低い音で、その音が出るたびに、ビルボードライブ大阪の客席テーブルの表面が、ビリビリと震えました。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

演奏が終わってから、姿月さんがステージ上のトークで「種明かし」をしました。そのカバンは、ベースを演奏した森田晃平さんが自分のコードなどを入れるために使っているものなのだそうです(カバンには名前も書かれていました)。「これ、すごいでしょう? ただのカバンなんです」と姿月さんが説明すると、会場からは「え~~~!」という驚きの声が。この曲では恐竜の声などをバントのメンバーらがさまざまな形で表現しているのですが、マンモスの足音を出したいということになって、あれこれ試して、森田さんのバッグにスポンジとマイクを入れてリバーブ(残響効果)をかけると「ズ~~~~~ン!」というこの音が響きわたって採用になったのでした。本当に、ビルボードライブ大阪の壁を突き破って、巨大な恐竜などが出てきそうな、すさまじい音でした。これは、とても自宅で聴くことはできませんし、このメンバーでの、この日のライブでしか味わえない音。まさにライブの醍醐味でした。

この日のライブは、ボーカルが姿月さん、ピアノとキーボードが光田健一さん、ギターが長谷川友二さん、ベースが森田さん、フルートが沢野茜さんという編成。フルートが入るのは「THE PRAYER」では初めてとのことでしたが、前奏や間奏でフルートの柔らかな音が入ることで、女性コーラスが1人増えたような広がりが感じられました。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

また、姿月さんの真っ直ぐな美声に、光田さんの透明感のあるファルセットが重なり、長谷川さんのざらつき感のある男声が加わって、いったい何人が歌って、何人が演奏しているのかわからないくらいに重層的な、それでいてまとまりのある音が作られていました。

そしてアンコール曲は、姿月さんの代表曲となりつつある「夜明け」。この曲は、聴く人の、歌う人の、それぞれの「時」に合わせて内容が変化してゆく歌のように思えます。私の場合、アイデアニュースというウェブサイトを作って運営してゆくことについてあれこれ思い悩んできましたが、姿月さんに「思い悩んだことなど、ほんのちっぽけなことさ。いくつになっても、スタートライン」と言われているようで、思わず笑みがこぼれました。そして、「自分のことをもっと好きになれるように」という部分。この日の姿月さんの歌声は、「私は、今日、ここで、このTHE PRAYERで歌っている自分のことが、大好きだし、みなさんのことが大好きなんです」と語っているように聴こえました。

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

「姿月あさと Self-Produce Live THE PRAYER X」大阪公演より=写真提供・ビルボードライブ大阪

<ニューアルバム>
「姿月あさと Chante ~シャンテ~」(Victor Entertainment Web Site で一部試聴可能)
→ http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A025250/VICL-64432.html

<姿月あさとバースデーライブ>
【大阪公演】2016年3月16日(水) 逸翁美術館 マグノリアホール
→ 問い合わせは、逸翁美術館(072-751-3865)へ
【東京公演】2016年3月18日(金) 品川教会 グローリアチャペル
→ 問い合わせは、キャピタルヴィレッジ(03-3478-9999)か、アイズクルー(03-5405-2477)へ
チケット一般発売日(大阪・東京共通) 2016年1月25日(月)~

<姿月あさと オフィシャルWEBサイト>
→ http://www.shizukiasato.net/

<アイデアニュース、姿月あさとさん関連記事>

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ライブ終了後、姿月さんに、ほんの少しだけ、お話をうかがいました。

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<筆者プロフィール>橋本正人(はしもと・まさと) 産経新聞記者から朝日新聞記者となり、大阪本社整理部次長、デジタル事業本部サブマネジャーなどを歴任。宝塚歌劇などを扱うサイト「アサヒコム・スターファイル」の編集責任者を6年間つとめ、独立。アイデアニュース株式会社を設立し、編集長に。趣味は声楽(テノール)。 ⇒橋本正人さんの記事一覧はこちら

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