「こんな素晴らしい本があったのねと」『ハッピーバースデー ~命の唄~』土居裕子(上) | アイデアニュース

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「こんな素晴らしい本があったのねと」『ハッピーバースデー ~命の唄~』土居裕子(上)

筆者: 岩村美佳 更新日: 2023年10月23日

Entertainment Human Theater『ハッピーバースデー ~命の唄~』が、2023年10月25日(水)から29日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールで上演されます。原作の「ハッピーバースデー」は児童書としては異例の累計150万部を売上げ、ドラマ化やアニメ化もされ話題となり、全国の小中学校で愛読されました。その本作の原作者である吉富多美さんと、ミュージカル俳優の土居裕子さんが企画をし、30年以上オリジナルコメディーに拘り製作し続けた水木英昭プロデュースとタッグを組み舞台化されます。軸となる子供たちのキャスティングは夏休みの全国オーディションにて決定しました。イジメや虐待という難しくもあり、教育的、もはや社会的テーマである題材が、高い音楽性とエンターテイメント性豊かに舞台化されます。本作品の音楽を担当するのは、水木英昭プロデュースの音楽を長年創り続けている髙木茂治さん、テーマ音楽を作曲するのは主演の亜季緒さんです。

アイデアニュースでは、土居さんにインタビューしました。上下に分けてお届けします。「上」では、原作との出会いや舞台化に至ったプロセスや想い、子供たちのオーディションのこと、静代役(お母さん)の亜季緒さんのことなどについてお話ししてくださった内容を紹介します。「下」では、物語の軸となる直人役(お兄ちゃん)の川口調さんのこと、ご自身の仕事への想い、舞台としてのこの作品の魅力、子供との関係性について一人の大人として思うことなどについてお話ししてくださった内容を紹介します。

土居裕子さん=撮影・岩村美佳
土居裕子さん=撮影・岩村美佳

――原作を読んだのですが、今回取材の機会をいただいていなければ、出会わなかった本だと思いました。特に後半は涙が止まらなかったのですが、読むことができて良かったです。

結構ショッキングだけど、素晴らしい本ですよね。児童書として売り出されているので、大人は出会う機会が少ないかもしれませんが、全国の学校の図書館には置いているそうです。子供役のオーディションの時にも、ほとんどの子が読んだと言っていました。もちろん「受けに来たから」というのもあるんでしょうけれど、「好きな本でした」という子がすごく多くて。

――土居さんは、ご友人に勧められてこの作品に出会われたんですよね。

勧めてくれた友達は、高校の同級生で、中学校の先生なんです。私も年を重ねてきて、「私になにかできることはないだろうか?」と思っていました。そんな時にその友達が、「私が副校長をしていた特別支援学校を覗いてみる?」と言ってくれて、「行く!」と。

――それは、この本に出会う前ですか?

はい。もう5年以上前ですね。「そこで歌ったりすることで、子供たちにプレゼントできるよ」と言われて連れて行ってもらったんですが、打ちのめされました。子供たちの障害の程度も様々なので先生方はほぼマンツーマンでみていらっしゃるんですね。 子供たちのことをすごく大切になさっていて。 

私が歌をうたうなんていうことはおこがましいというくらい、先生方は毎月いろんなイベントを考えて、子供たちにプレゼントをしていたんです。子供たち自身が歌いたい、踊りたいという気持ちがすごく高いので、それを助長させるようなイベントを組んでいて自分の勉強不足さを痛感しました。

その子たちの美しいまなざしと笑顔と、先生たちの本当に献身的な優しさに触れて、「ああ、こんなあたたかい世界があるんだ」と感動しました。親御さんも大切なお子さんをそこに預けられたという愛が見えると言いますか。

――そうだったんですね。

そういう愛情にあふれた場だったので、私としてもすごく勉強になりました。それから2年くらい経った時に、「これちょっと読んで」と、その友達から渡されたのが今回の舞台の原作となる『ハッピーバースデー』だったんです。今までフジテレビでドラマ化されたり、朗読劇などではやったけれど、本格的な舞台化はされていないので是非きっかけをつくってもらえないかと。 

さっきおっしゃっていたのと同じように私もボロボロ泣いて、「こんな素晴らしい本があったのね」と思いました。ショッキングな話でありながら、最後には救いがある。未来を見つめられる終わり方になっているのが素晴らしいなと思いました。でも舞台化するといっても、何から始まればいいの? 脚本がかけて演出もできる素晴らしい方はいないかと(笑) 。

――ご出演のご経験は多いけれど、作るほうはということですね。

そうしていたら、「あ、そうだ!」と思い当たったんです。ミュージカルに特化して考えているところを取っ払って、音楽があって豊かな舞台であれば、別にミュージカルというくくりじゃなくてもいいんじゃないかと思い、以前関わらせていただいた水木英昭プロデュースの水木英昭さんにお願いしたんです。水木さんは原作を読んで、「とても骨太な、すごい作品だね。やりましょう!」と言ってくださったんです。そこから動き始めたのが、ちょうどコロナ禍の真っ只中だったんです。

――コロナ禍の大変な時間の中で、誰と一緒にやろうかということをいろいろ考えていらっしゃった?

はい。水木さんにというのは、どこか直感的なものがありました。水木さんは元々コメディを得意としていらっしゃる方なんです。これはコメディではないですが、柔らかな笑いをこの作品に、ほんの少し加えることが出来たら、舞台作品としてのエンターテインメント性が高まるのではないかと。そこは水木さんも十分に分かってくださっているので、お任せしています。

――今伺って気づきましたが、ミュージカルや音楽劇など、特にジャンルを謳っていないんですね。

そうですね。でも、生演奏も入りますし、主演の亜季緒さんが書き下ろしてくださったテーマ曲がありますので、音楽もふんだんに使って繰り広げられます。「お芝居」と言ってしまうとそれはちょっと寂しいんです。せっかく生のキーボードとバイオリンが入りますし。ミュージカルと同じくらい手間暇をかけながら作っています。

――川口調さんが直人役(主人公の兄)をされるのは、驚くと共に最高だなと思いました。

そうなんですよ。オーディション時からダントツでした。オーディションでは、直人の台詞も読みながら、いじめっ子の大輔が出るシーンも全員にやってもらったのですが、彼の迫力がすごくて、「おっ……いいじゃん」と思いました。なんでも全力でやってくれるんです。振付を担当されている南流石さんが、オーディションで「ハッピーバースデーのテーマ曲を歌いながら、大空、とか、地面、とか、花が咲いた、とか、歌振りしないで自由にパフォーマンスして」というオーダーを子供たちに出したんです。

――難しそうですね。

「歌振りをしないで」という条件で、どうしたらいいか分からない子もたくさんいる中で、彼はすごかったですよ。面白かった。全部部活に例えてやったんです。

――「部活」ですか?

この歌を歌いながら、テニス部とかバレーボール部とか、卓球部とか。いろんなスポーツ系の部活を自分で組み合わせて表現していました。それも自分の得意技であるバレエとかバトントワーリングを一切やらずに。そこしか目が行かないくらい、すごかった。でも上演の際には、調くんのバトンも観られるかもです。彼にも何か披露してもらわなければ。きっと大活躍すると思います。

――オーディションでは、自然と輝いているところが見えるものなんですね。

他にも振付で目を引いた入内島悠平くんという子は、何をやっているかは分からなかったんですが、板前みたいな動きをしていました(笑)。動きに夢中になっていて口が動いていなかったんです(笑)。そういうことを楽しめる子供たちが集まってくれました。

本来子供は「遊べ」と言われたら「オッケー!」と好きに遊ぶのに、大人の知恵が入ってくるとそれができなくなって、大人の喜ぶことをしようとする子が増えている中で、そういうものを取っ払える自由さが一番難しいんですよね。でもこの物語では、ぜひみんなにそうあってほしいなということで、あすか役も大抜擢のふたりなんですよ。

――あすか役の上野彩喜さんと矢野沙羅さんは、キャリアはおありなんですか?

まだ舞台の経験が少ないふたりでほとんど色が付いていないけれど、やりたい心は「どぴゅ~ん」というくらいあるんですよね。なので、私たちはそこをうまく邪魔しないように、伸び伸びとやってもらいたいな、本当の心を出してもらいたいなと思っています。

――おふたり、瞳が似ていますね。

オーディションでも、とても心の出せる子だったというか、期待しつつ、ふたりに決めました。あすかと直人のお母さん、静代役の亜季緒さんはシンガーソングライターで、いくつか舞台をやったことがありながらも、もう俳優はやらないと決めていたそうです。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、静代役(お母さん)の亜季緒さんのことなどについてお話ししてくださった内容などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。24日掲載予定のインタビュー「下」では、物語の軸となる直人役(お兄ちゃん)の川口調さんのこと、ご自身の仕事への想い、舞台としてのこの作品の魅力、子供との関係性について一人の大人として思うことなどについてお話ししてくださった内容などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■親の存在はとても大変であり、難しくて重要なもの。亜季緒さんが「やってみます」と

■小学生の時、すごく悪かったのにガラッと優しくなった男の子が。それが忘れられない

■元々のすごく優しい部分を引き出したのは、きっと彼のお母さんだったんだと

■どの子たちも全身に宝物を蓄えているので、大切にしたいという思いがすごく強く

<Entertainment Human Theater︕紀伊國屋書店提携公演『ハッピーバースデー ~命の唄~』>
【東京公演】2023年10月25日(水)~10月29日(日) 紀伊國屋ホール
公式サイト
https://www.mizu-pro.com/2023happy-bd.html

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土居裕子さん=撮影・岩村美佳
土居裕子さん=撮影・岩村美佳

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<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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