2024年1月3日(水)から7日(日)まで、東京国際フォーラムホールD7で上演される、J-CULTURE FEST presents井筒装束シリーズ、詩楽劇『沙羅の光〜源氏物語より〜』に、光源氏役で出演される紅ゆずるさんのインタビュー後編です。「下」の無料部分では、紅さんが演じられるからこその光源氏役の見どころ、ビジュアル撮影時のエピソード、小さい頃から宇宙に興味があって絵本を書くのが好きだったというお話、2023年の振り返りと来年の抱負などについてお話ししてくださった内容を、有料部分では、今回、日本舞踊のシーンがありそうというお話、所作の美しさについて思うこと、「和」の魅力について感じることについてお話ししてくださった内容とお客さまへのメッセージを紹介します。
――紅さんが演じるからこその「ここが見どころ」という光源氏については、どんな風にイメージされていますか?
第一インスピレーションとしては、女性というか、人に対して、とにかくすがりたい人という感じです。「すがる愛情」を表現したいというイメージが、今はあります。光源氏の場合は、自分に包容力があって、「俺が全部包んであげるよ。君のことを幸せにしてあげるよ」という愛情では全然ないと思います。要は、自分の心を埋めてくれて、埋まっていないピースを埋めてくれというのを、相手に要求しているような愛情が切なく見えて、それが色気にもつながるのかなという感じもありますね。
――つい、女性のほうが守ってあげたくなるような感じでしょうか?
そうですね。結果、そのほうが女性としては強いんですよ。男性としては勝ち組だと思います。女性が「私はこの人じゃないと絶対だめだわ」という感じよりも、「私じゃないとこの人はだめなんだわ」と。「光源氏を私が支えてあげている」というように周りの女性に思わせるからこそ、光源氏は一夫多妻でいろんなところへ行けるし、「今日はここに行こうっと」とできるわけで。だから、なんだかんだ言いながら「私がいないとだめなんだわ」みたいな感じのほうが強いのかもしれないなと思います。
要は、完全にスーパーマザコンラブストーリーなんですよ。だから、純愛では全然ない。「可愛いから」、「この人のこういうところが好きだから」ではなくて、「お母さんに似てるから」とか、そういう偏った想いがあるじゃないですか(笑)。
偏愛ラブストーリーなので。そういうひねくれ曲がったところをあえて美化して、それをひとつにつなげて、それが素敵に見えたら光源氏という役は成功なんだろうなと思うんですよ。だから純愛を求めたらだめなんだなと思います。「この男は……!」とか「何だこの男は、変人だな」みたいなところが素敵に見えたら、光源氏なんだと思います。
――今回、お衣裳も見どころのひとつかと思いますが、ビジュアル撮影の時の印象的なエピソードを伺えますか?
「月を見ている感じで撮りましょう」という話になったのですが、「月を見るのって、そんなに難しかったかな?」と思いました(笑)。月のある方角と逆を向いて、肩越しに見るんですよ。それが色気で、着物の見せ方、所作にもつながるのかなと。撮影の時には、所作が全然できていないことが分かったので、これから何とかしようと思います。
――それは尾上菊之丞さんのコンセプトなんですか?
そうです。「月を見ている感じで」とおっしゃるので、凝視したら、「月はそうは見ない」と(笑)。女性の「クロスの法則」みたいな感じの源氏バージョンだと思うんですよ。これが分かっていたら、女性としても人としても魅力的だろうなとすごく思いました。月を凝視したりする女性、なんか嫌じゃないですか(笑)。撮影している時に「月、どっち?」と私の頭がパニックになりました(笑)。
――いろいろな物語にすごく没頭されたり、ある人物について「こんなはずはない」と考えたり、そういう想像は宝塚に入られる前からされていましたか?
小さい時から絵本を書くのがすごく好きだったんです。宇宙にものすごく興味があって、近くの図書館で宇宙の本ばかり見ていました。土星の輪っかを見て「これは一体何なんだろう?」というところからスタートして、「この輪っかの物語を書こう」と思って、謎に物語を描き始めたんです。残しておけばよかった。すごく変な物語でしたね。
月と星の話や、月の長老が出てきたり、宇宙人が出てきたり、織姫と彦星も出てきたり。私が書く絵本には、織姫と彦星が主要な人物として絶対に出てくるんです。それを取り巻くその他大勢の人たちの物語をやたらと書いていました。
私は三人兄弟なんですが、次男がまだ字も読めない状況の時、絵本を渡すと、彼はその絵本を見ながら、自分で物語を勝手に作っていたんですよ。それを「ふ~ん」と聞くのが大好きだったので、だからわざと「これ読んで」と渡して、物語を広げてもらって、「この子にはそういう風に見えるんだ」みたいなことをしていました。
ウルトラマンも見ているし、仮面ライダーも見ているけれど、物語の中にそういう人たちが出てくるんですよ。ショッカーが出てきたりもしました。そういえば私、作文で賞をもらったりもしていました。何の賞だったか忘れましたけど。物語が好きなんでしょうね。
――2024年、新年明けてすぐの公演になりますが、2023年を振り返ってどういう1年でしたか? また、来年はどんな年にしたいですか?
宝塚を退団後すぐコロナ禍になって、いろんな舞台が中止になり続けていて、舞台といえば中止になるというイメージがつくくらい、「本当に最後までやれるのかな」と思いながら演じなければいけない状況だったんですが、2023年はちゃんと千穐楽を迎えるということが、どんどん現実化して、自分の中でいい妄想ができるようになった年というんでしょうか。いろんなお仕事も回り始めたので、来年も舞台はもちろん、いただけるバラエティのお仕事も積極的にしていきたいなと思っています。
人に笑ってもらえたり、笑わせることができるお仕事にすごく魅力を感じるので、バラエティもひとつの舞台だなと思います。「あんなに楽しい現場なのに、本番前は誰もしゃべらないんだ! すごーい!」って、楽しいと思ったり。それを楽しく感じる私もどうかと思うんですが(笑)。バラエティはトラウマにもなるという話も聞きましたが、それをトラウマにしないように自分に打ち勝てるような下準備もしていて、でも変に気張らずにいたいですね。瞬発力がとても大切な現場というのもひとつの舞台ですし、自分も楽しみながら、続けていきたいです。
<取材協力>
ヘアメイク:miura(JOUER)
スタイリスト:鈴木仁美
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※アイデアニュース有料会員限定部分には、今回、日本舞踊のシーンがありそうというお話、所作の美しさについて思うこと、「和」の魅力について感じることについてお話ししてくださった内容やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■今回、日本舞踊のシーンがあるはず。難しいが自信を持って「ばん!」 と立つ
■所作が一番難しい。光源氏を演じるにあたり、絶対に美しくなければならない
■季語に心を向ける日本人の細やかな感情が、源氏物語にも織り込まれている
■「男役の紅ゆずる」ではなく、「源氏物語の中の、光源氏」を観に来て
<詩楽劇『沙羅の光〜源氏物語より〜』>
【東京公演】2024年1月3日(水)〜1月7日(日) 東京国際フォーラムホールD7
公式サイト
https://www.iz2tokyo-genji.com
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「男役」ではなく、源氏物語の光源氏を、紅ゆずるが分析した光源氏を観に来てほしいという言葉が印象的でした。役の性別としては男性ですが、紅さんは全く違うステージに進まれているんだなと感じました。役や物語への考察も興味深く、アイデアニュースさんならではの深いお話が沢山聞けて大満足のインタビューでした。