ミュージカル『鉄鼠の檻』が、2024年6月14(金)に開幕し、6月24日(月)まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで、6月28日(金)と6月29日(土)に大阪・サンケイホールブリーゼで上演されます。原作「文庫版 鉄鼠の檻」は、京極夏彦さんによる「百鬼夜行」シリーズ第4弾として刊行された長編推理小説で、2017年にはコミック化もされました。2021年に上演されたミュージカル『魍魎の匣』に続いて、2作品目のミュージカル化となります。
本作の上演台本・作詞・演出を担当するのは、前作に引き続き、板垣恭一さんです。幅広いジャンルの作品を手掛け、日本版脚本&歌詞・演出を担当した『FACTORY GIRLS ~私が描く物語~』で第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞し、人間そのものや、その内面を丁寧に描く作風に定評があります。また作曲、音楽監督は、演劇『ハイキュー!!』、『僕のヒーローアカデミア The“Ultra”Stage』、舞台『鬼滅の刃』ほか数多くの舞台音楽を手掛ける和田俊輔さんです。ミュージカル界の前線で活躍するコンビが日本のオリジナルミュージカルにこだわり続けるイッツフォーリーズと贈る、ミュージカル『鉄鼠の檻』の誕生です。
出演は、主人公・中禅寺秋彦役に前作から続投の小西遼生さん。探偵の榎木津礼二郎役は前作から引き続き北村諒さんと、さらにMANKAI STAGE『A3!』、ミュージカル『刀剣乱舞』で注目された横田龍儀さんがWキャストで演じます。小説家の関口巽役は前作同様、イッツフォーリーズの神澤直也さんです。また新たに、上田堪大さん、高本学さん、小波津亜廉さん、伊﨑右典さん、イッツフォーリーズ公演には3度目の出演となる畠中洋さんらが出演しています。
アイデアニュースでは、小西遼生さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けて、同時掲載します。「上」では、2021年に上演されたミュージカル『魍魎の匣』についてと今回の『鉄鼠の檻』について伺ったお話を紹介します。「下」では、共演者の印象やオリジナル作品を作る楽しさなどについて話してくださった内容を紹介します。
(このインタビューは公演開幕前に行ったものです)
ーー2021年に上演された、ミュージカル『魍魎の匣』は改めてどんな印象でしたか?
最初は全く絵の想像がつかなかったんですが、原作と台本を読み、原作のおもしろさを作品化することのおもしろさを感じました。と同時に、分厚いものをコンパクトにまとめる大変さを1ヶ月くらいの稽古の中で、板垣さんを筆頭にずっと悩み続けていて、結構苦労して作り上げた感じでした。それを乗り越えた時は「できた!」という喜びがすごくありましたね。お客様の反応も良くて、それが伝わってきたので、「新しいミュージカルができたじゃん!」という感触がありました。
ーー圧倒的な文字量のものがミュージカルになるとは想像がつかなかったと思いますが、台本を読んだときの最初の印象はいかがでしたか?
最初の印象は、これを成立させるのは本当に難しいなということです。僕は、自分が出ていないところも含めて、筋を熟知し、網羅し、それを言葉にして、一から順序立てて憑き物を落とすという役なので、時間をかけて勉強しましたね。お客様には、勉強しなくてもこの物語を楽しんでいただかないといけないので、義務感を持って臨みました。
ーー原作も読み込んだのですね?
そうですね。特に台本に書かれていないところですね。作品の要点を抜き取ってやるわけですから、その言葉から次の言葉に繋がるまでに一体どれだけのものがあるのかを一発で感じさせなければならない。でも、それを作っていく過程はおもしろかったです。
ーー理路整然と、道筋を皆さんに伝えていく役柄だと思うんですが、それを歌で表現することの難しさはありますか。
シリーズ前作の『魍魎の匣』は小澤時史さんが作曲されましたが、その曲がすごく好きになりました。京極先生の作品は、とっつきは大変ですが、読んでしまうとすごく分かりやすいですよね。ミステリーとしてのドキドキ感に加え、知識欲をすごく満たしてくれる。例えば、作品の中で名台詞として出てくる「この世には不思議なものなど何ひとつない」は、いわゆる超常的な現象が、実は紐解いてみれば、これこれこういうことがあったから、こうなんだよと。その一方で、不思議なこともあるにはあるんだよ、というおもしろさも残しながら、難解と思われているものをきっちりと筋道を示して教えてくれる本なので、そのおもしろさを舞台でも見せたいなという気持ちがあったんですよね。
だから、わかりやすい作品ではないかもしれませんが、集中して入り込んでしまえば、興味を持ってしまう。前回でき上がったミュージカル版もその知識欲を、感情とともに見せられる作品になっていたかなと思います。
ーー1作目の時点で、なんとなく続編はあるかなという感じはあったんですか?
板垣さんは続編はありきで考えているだろうなとは思っていました(笑)。
ーーそれは会話などから感じていたんですか?
いや、板垣さんはそういう人なので(笑)。このシリーズを板垣さんが演出されるとなった時点でですね。前回は1日だけ京極先生と舞台上でお話しする機会がありましたし、他にもメディアミックスで映画化や漫画化されていますが、自由にしていいよと言ってくださる方なんです。逆に、板垣さんは実は原作から文字をほとんど変えていないことを誇りにしていらっしゃるので。その間を上手く縫っていく楽しさに、板垣さんが多分最初に気づいていると思います。その時に改めて、これ絶対に「百鬼夜行」シリーズを狙っているだろうと(笑)。
ーーでは、今回のお話が来たときもそんなに意外性はなかったですか?
公演後に板垣さんにお会いしたときに、次もやりたいねというお話はしていました。もしやる場合には新作をやるのか、再演をやるのか、みたいな話はしていて、僕は無謀にも「同時にやりません?」と言って(笑)。同時期に新作と再演をやったら、誰もできないことがやれますよって(笑)。さすがにそうはなりませんでしたが。
ーー『鉄鼠の檻』に取り組んでみていかがですか?
『鉄鼠の檻』を作品化することを、原作を知っている人は驚いていると思うんですよね。というのも、『姑獲鳥の夏』と『魍魎の匣』が基本的にはメディアミックス化のイメージが強いので、まさか『鉄鼠の檻』をやるんだ、と思うだろうなと。僕も上演に当たって、原作を読んでみて、『魍魎の匣』のときとは全然違うレベルで、「本当にできるかな?」と思いました。
禅は日本人の魂だとは思いますが、きっとほとんどの方が詳しくは知らないですよね。禅の違いや専門的な言葉の難解さなど知らないものが多く、特に仏教用語の四字熟語は字面を見ても理解できず、パッと聞いただけでは「何それ?」ということがたくさんあって。でも原作本はおもしろかったんです。まるで禅の経典のようで読み終わった後は、禅のことを知っている気になっちゃうくらい。これをミュージカルで、3時間で、どうやったらできるかなと、実は今も悩み続けています。
(ヘアメイク/茂手山貴子 スタイリスト/尾後啓太)
※アイデアニュース有料会員限定部分には、演出を担当する板垣恭一さんとどんな話をしているのかや、「禅」が出てくる今回の作品について話してくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。同時掲載のインタビュー「下」では、共演者の印象やオリジナル作品を作る楽しさなどインタビューの後半の全文と写真を紹介します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■登場人物がお坊さんばかりなのが、おもしろい。紐解けば人間の業が溢れる
■僕は言葉で憑き物を外側に噴出させる役。だけど相手が禅僧だと通じない…
■お坊さんに聞いた「痛みを諦める」という言葉で、『王様と私』を思い出した
■朝早く起きて勉強、稽古して帰ったら遅くまで勉強。それがおもしろい
<ミュージカル『鉄鼠の檻』>
【東京公演】2024年6月14日(金)~6月24日(月) 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
【大阪公演】2024年6月28日(金)~6月29日(土) サンケイホールブリーゼ
公式サイト
https://www.tessonoori-musical.com/
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鉄鼠の檻についての小西遼生さんのインタビュー待っていました!
そしていつも素敵なお写真をありがとうございます!
観劇はこれからなのですが、楽しみが更に増しました!!