カラフルにユーモラスに…子供も大人も舞台に集中、音楽劇「兵士の物語」 | アイデアニュース

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カラフルにユーモラスに…子供も大人も舞台に集中、音楽劇「兵士の物語」

筆者: 達花和月 更新日: 2016年9月2日

「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫」の一環として、8月5日~8月11日に東京・シアタートラムで上演された、音楽劇『兵士の物語』を拝見しました。世田谷パブリックシアターは、1997年の開館以来、子供たちにとって楽しく遊べる身近な劇場となることを目的に、子供たちと創造性あふれる舞台芸術との出会いの場となる公演・企画を行っており、今年も「せたがやこどもプロジェクト2016」として、多様なプログラムが展開されました。子供に親しんでもらえるプログラムという事で、劇場には子供たちの姿も多く、学校に上がる前の子供の比率も高かったように思います。普段私が観劇するほとんどの演目が未就学児童お断りのものですが、お父さん、お母さん、あるいは兄弟たちと楽しげに会話する子供たちの高い声があちこちで聞こえてくる客席はどこかほのぼのとしていました。

世田谷パブリックシアター「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫ 音楽劇『兵士の物語』」より=撮影:引地信彦

世田谷パブリックシアター「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫ 音楽劇『兵士の物語』」より=撮影:引地信彦

開演時間となり、客席は明るいまま「こんにちは~」と明るく優しい雰囲気でにこやかに舞台に登場した語り手(川口覚さん)と、声だけの登場の『天の声』(近藤良平さん)が、客席の子供たちに語りかけ、これから始まる「音楽劇」で演奏される楽器と演奏者の紹介が始まりました。今回の音楽劇の編成は、ヴァイオリン(三上亮さん)、コントラバス(谷口拓史さん)、クラリネット(勝山大舗さん)、ファゴット(長哲也さん)、トランペット(阿部一樹さん)、トロンボーン(玉木優さん)、パーカッション(西久保友広さん)の7種類の楽器。子供たちにそれぞれどんな楽器なのか、その音や形状、特徴的に面白いところなどを、面白可笑しく紹介していきます。また、通常はめったに聞く機会のない、クラリネットの非常に小さな音や、ファゴットのダブルリードだけの音、コントラバスの非常に高い音など、演奏者への質問というかたちの無茶振り(笑)で、ユーモラスに楽器を印象付けていきます。

ちなみに、どんな質問だったかというと、私の見た回では、今日のおなかの調子や、朝食に何を食べたか?好きなフルーツは?などの何気ない質問を、『演奏で』回答してもらうというもの。演奏者が工夫を凝らして出す音を聴いて、「答えのわかった人はいる?」という感じで客席の子供たちに水を向け、一生懸命考えて声をあげる子供たちの姿が、いかにも好奇心の塊という印象で、微笑ましい演出でした。7つの楽器全てを紹介し終え、舞台上に演奏者全員がそろうと、演奏者の皆さんの少し不思議な雰囲気の、白いゆったりとした服や白いふわっとした帽子に目がいきます。『天の声』の解説によれば、衣装のコンセプトはなんと「七福神」なのだとか!そんな感じで、子供だけではない、大人向けの要素もちりばめつつ、「音楽劇」が始まりました。

世田谷パブリックシアター「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫ 音楽劇『兵士の物語』」より=撮影:引地信彦

世田谷パブリックシアター「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫ 音楽劇『兵士の物語』」より=撮影:引地信彦

客電が落ち、新たに舞台に登場してきたのは兵士(北尾亘さん)。彼は10日間の休暇をもらって、故郷へ帰る途中なのだということが語り手によって語られます。背中にリュックを背負い、行軍よろしく手足を大きく振りかぶりながら元気にひたすら歩くその姿は、黄緑色のシャツ、水色のパンツ、緑のキャップに極彩色のタイツ、黄色のリュックという、おおよそ兵士らしからぬ、目にもまぶしいカラフルさ。

世田谷パブリックシアター「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫ 音楽劇『兵士の物語』」より=撮影:引地信彦

世田谷パブリックシアター「せたがやこどもプロジェクト2016≪ステージ編≫ 音楽劇『兵士の物語』」より=撮影:引地信彦

舞台セットが、演奏者たちが乗る、大小10個の白い円柱の台に、上方に吊られた白い3つのスクリーンという、シンプルなモノトーンの空間なので、兵士の衣装は視覚的によく映え、スクリーンに映し出されるイラストの背景とあわせて、まるで絵本の中の人物のよう。軽快な演奏と、それに合わせて兵士もダンスをしたりジャンプをしたりと、リズミカルだったりトリッキーな動きをしていたので、ひょっとしたら子供たちには、いつも自宅のテレビで観ている、子供向けの知育番組のアニメーションや人形劇を観ているような感覚になったかもしれません。いずれにしろ、先程まで客席から聞こえていた子供たちの声は驚くほど静まり、舞台に集中していることが伺えました。

劇場入口が可愛らしく飾り付けられており、撮影可だったので紹介します=撮影・達花和月

劇場入口が可愛らしく飾り付けられており、撮影可だったので紹介します=撮影・達花和月

≪あらすじ≫(プレリリースより)
兵士がひとり、歩いています。彼は短い休暇をもらい、母親と恋人が待つ故郷に向かっているのです。ひと休みして、リュックから古いヴァイオリンを取り出して弾いていると、老人にばけた悪魔が現れます。老人は兵士に、そのヴァイオリンが欲しいと言い、兵士が断ると、かわりに金持ちになる本をあげようと提案します。兵士は相手が悪魔とは知らず、大切にしているヴァイオリンと本を交換してしまいます。そして、老人の誘いにのって、老人の家で3日間を過ごし、ようやく故郷に着いてみると。なんと、3日ではなく、3年が過ぎていたのです。兵士はやっと、自分が悪魔にだまされたことに気づきます。金持ちになる本のおかげで財産は築いたものの、心は満たされず、兵士はまた歩きはじめます。そうして、彼を待っていたものは…?

<せたがやこどもプロジェクト2016《ステージ編》 音楽劇『兵士の物語』>
【東京公演】 2016年8月5日(金) ~ 8月11日(木・祝) シアタートラム (この公演は終了しています)

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※ここからアイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分です。公演の内容を文字と写真で、詳しく紹介します。

■子供と大人の笑いのツボの差を意識した演出

■ユニゾンで聞こえる音の深さで、兵士の後悔に重みを

■コンテンポラリー系のコミカルな動きとバレエの優雅な動き

■子供たちが、おうちに帰って、どんな感想を漏らすのか、興味が

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<筆者プロフィール>達花和月(たちばな・かずき) 遠方の友人を誘って観たお芝居との出会いがきっかけで、演劇沼の住人に。ミュージカルからストレートプレイ、狂言ほか、さまざまな作品を観劇するうち、不思議なご縁でライターに。熱っぽく自らの仕事を語る舞台関係者の“熱”に、ワクワクドキドキを感じる日々。 ⇒達花和月さんの記事一覧はこちら

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