地域演劇を作る(1)見えてきた「地域演劇」の形、プロデューサー・山納洋さんインタビュー | アイデアニュース

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地域演劇を作る(1)見えてきた「地域演劇」の形、プロデューサー・山納洋さんインタビュー

筆者: 桝郷春美 更新日: 2016年11月28日

連載「地域演劇を作る」(1)

「地域のドラマを書いてみよう」。そんなフレーズに魅かれて筆者は今秋から、戯曲講座に参加しています。まちを取材して、お芝居の台本を書く取り組みで、舞台は大阪府大東市。同じ関西に住む人でさえも「大東ってどこ?」と言う人も少なくないようですが、そこは大阪市の東部に隣接する衛星都市で、2016年に市制施行60周年を迎えたのを機に、廃校になった小学校跡を文化活動の拠点にする事業の一環として「演劇プロジェクト」が立ち上がっています。

アイデアニュースでは、この大東市を舞台に行われている企画のうちの一つで、大東ならではのドラマを地域の人たちが書き下ろし、大東のまちを舞台に上演するという実験企画「だいとう戯曲講座」に筆者自身が受講生として参加して、物語が立ち上がる過程を連載でお届けします。第1回の有料会員向け部分では、この一連の企画のプロデュースを行う大阪ガス株式会社近畿圏部・都市魅力研究室長の山納洋さんにインタビューをし、地域演劇の可能性について、演劇プロデューサーとしてのこれまでの経験を踏まえた独自の視点から、たっぷりと語って下さった内容を紹介します。

「だいとう戯曲講座」お試し講座の授業の様子

「だいとう戯曲講座」お試し講座の授業の様子

■「だいとう戯曲講座」の講師は、「虚空旅団」代表の劇作家・演出家の高橋恵さん

「だいとう戯曲講座」の講師は、大阪を拠点に活動する劇作家・演出家の高橋恵さん。高橋さんは「観客の気持ちを濾過し、生活にやさしく送り返すお芝居」を目指して活動を続ける劇団「虚空旅団」の代表を務め、2015年に「誰故草(たれゆえそう)」で、第22回OMS戯曲賞(大阪ガス主催)の大賞を受賞。受賞作品は12月2日から4日まで、大阪の心斎橋にあるウイングフィールドで上演予定。大東市との関わりにおいては、大東を舞台に戦国武将・三好長慶を描いた朗読劇「蘆州のひと」の作・演出を手がけ、この作品の上演と市民による朗読ワークショップを行っています。さらに、隠れキリシタンがテーマの大東の歴史劇第2弾「河内キリシタン列伝」の創作にも取り組んでいます。

「蘆州のひと」再演より

「蘆州のひと」再演より

■扇町ミュージアムスクエア(OMS)のマネージャーなどを務めた山納洋さんが仕掛け人

この戯曲講座を含む大東の「演劇プロジェクト」の仕掛け人は、大阪ガスの社員でありながら関西の小劇場のメッカ・扇町ミュージアムスクエア(OMS)のマネージャーなどを務め、現在は同社近畿圏部において地域活性化や社会貢献事業に取り組む山納洋さんです。山納さんはプロデューサーとして、関西に実在した人物を題材にドラマを製作し、ラジオドラマとして放送するとともに、人物ゆかりの地で朗読公演を行う「イストワール」というプロジェクトや、まちを歩いて参加者それぞれの見聞を共有する「Walkin’ About」というまち観察企画など、まちと演劇をつなぐ独創的な活動を展開しています。

山納洋さん

山納洋さん

さて、この「だいとう戯曲講座」ですが、いざ本講座が始まって周りを見渡すと、参加者は大阪・兵庫・京都から来た人たちのみ。あれ、大東市民が一人もいない!? そんなまさかのスタートとなりました。筆者自身、面白そうだからやってみようと勢いで踏み出したものの、お芝居の台本を書くという経験は初めてのこと。ましてや大東は、これまで縁もゆかりも無かった土地で、こんな機会でも無ければ足を運ぶことはありませんでした。地元の人にも「えっ、京都に住むあなたが大東のことを書くんですか」と訝しげに言われ、今さらながらたじろいでいると、「地元の人が直接台本を書かなくても、やりようはあります」と講師の高橋さん。「地元のことを深く知らない外の人が、まちの魅力を掘り下げてくれることで、面白いまちだったと気付くことがあるかもしれません。住んでいても分からないことが多いですから」と話してくれた住民の方もいました。

この取り組みでは台本を書くだけではなく、大東のまちを舞台に発表公演まで行います。さて、これからどうなることやら。体当たりのルポを現在進行形の連載でお届けします。(この連載は、随時掲載します)

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、演劇プロデューサーとしてのこれまでの経験を踏まえた独自の視点から、山納洋さんにたっぷりとうかがった内容を、山納さんご本人の言葉でお届けします。

<有料会員限定部分の小見出し>

■大阪ガスグループが18年間運営、2003年に閉館した「扇町ミュージアムスクエア」

■作家を世に出し、作品を認めてもらう再演支援金の支給が2010年にスタート

■実在した人を題材に、その人ゆかりの地で朗読公演する「イストワール」も開始

■取り組みを続けていく中で、おぼろげに見えてきた「地域演劇」の一つの形

■大東市では、4つの演劇プログラムが動いている

■地域の誇りを取り戻し、小劇場演劇を支えてきた人たちの能力を生かす場に

<『誰故草(たれゆえそう)』>
近未来のとある郊外で共同生活をおくる女性たちの家に、妹が訪れる一夜のお話。私たちをとりまく生活の中に潜む問題や恐れを、日常的な会話の中から浮き彫りにし、希望と絶望をさりげなく描いている。
【大阪公演】2016年12月2日(金)、3日(土)、4日(日) 大阪市 ウイングフィールド
http://www.wing-f.co.jp/
作・演出:高橋恵 出演:得田晃子、杏華、つげともこ、竹田モモコ、イトウエリ、久保田智美

<朗読劇『芽吹きの雨』>
大阪ガス(株)と毎日放送で制作されたラジオドラマシリーズ「イストワールhistoire」第5話として、建築家・伝道家・「近江兄弟社」創立者のメレル・ヴォーリズさんとその妻で児童教育者の一柳満喜子さんの話を描いた作品。
【京都公演】2016年12月17日(土)、18日(日) 京都市 P-act(ぴーあくと)
http://p-act2009.jimdo.com/
脚本:高橋恵 原作:Grace N Fletcher「The Bridge of Love」、平松隆円監訳「メレル・ヴォーリズと一柳満喜子 愛が架ける橋」
出演:飛鳥井かゞり、得田晃子 作曲・演奏:三木万侑加

<関連サイト>
虚空旅団公演情報 http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~koku-ryodan/info.html
大阪ガス(株)都市魅力研究室ブログ http://blog.livedoor.jp/histoire2011/

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<筆者プロフィール> 桝郷春美(ますごう・はるみ)福井県小浜市出身。京都市在住。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターの道へ。アサヒ・コム(現・朝日新聞デジタル)編集部のスタッフとして舞台ページを担当後、フリーランスとして雑誌やウェブサイトに執筆。世の中と表現の関わりを軸に、舞台、映画、美術などジャンルを問わず、人物インタビューや現地取材に取り組んでいる。英語での取材・執筆も行う。 ⇒桝郷春美さんの記事一覧はこちら

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