2023年12月9日(土)から12月24日(日)まで、よみうり大手町ホールで、12月26日(火)から28日(木)まで新歌舞伎座で上演されるミュージカル『ジョン&ジェン』に、ジョン役(1幕=弟、2幕=息子)で出演する森崎ウィンさんのインタビュー後編です。無料部分では、楽曲のこと、二人のジョンを演じる上で感じること、作品を通して伝えたいメッセージなどについてお話ししてくださった内容を、有料部分では、ジェンの変化について、ジョンを演じていて見えないところ、共感できない時にどう演じるかというお話やお客さまへのメッセージなど独自取材の内容を紹介します。(有料部分で、物語のラストシーンに少し触れていますので、観劇前の方はご注意ください)
ーー楽曲は、主にどういったジャンルになりますか?
クラシックがベースにあって、その中にポップスみたいな要素もあります。セリフをほぼ歌にしていたりするので、変則的な拍子がとても多く、気持ちと連動させて作っているんだなと感じます。
ーー1幕では弟のジョン、2幕では息子のジョンになるかと思いますが、冒頭は5歳から始まり、とても幅広い人生を演じられることになりますよね。このふたりの人間を演じ分けていく上で、意識していることがあればお聞かせください。
キャラクターとしてそれぞれの人物が持つリズム感を、しっかり捉えていきたいと思っています。見た目や、セリフの言い回しで作る部分は、最終的に照明や衣装、パーカッションなどによって、勝手についてくると思うんですが、まずは人として根本的に、奥底に持っているリズムや何がしたくて生きていて、何が悩みでということに対して注目しています。
例えば、運動が得意なのか苦手なのか、何が好きで嫌いなのか、人の目を見て話すのか見ないのかなど、そういうポイントを捉えつつ、このリズムでいくと脚本と流れてくる音楽がハマるなとか考えます。2幕のジョンはこんな感じだとすると、1幕のジョンはもっと活発だから、彼の中で刻んでいるビートは早いんだろうななど、そういうことが少しずつ見えてきていますね。
ーーそうやって掴んだリズム感が、最終的には役の喋り方やリアクションの仕方に生きてくるイメージですか?
勝手に繋がっていくんだと思います。稽古前の「こういうふうに喋ろう」というイメージには頼らないようにしていますね。せっかく稽古期間があるので、試せるというか。試してみてここは違うな、ここはこういう意図でやってみたけど、「もう少しこうして」と言われるから伝わっていないんだなと自分の中で思うこともあります。「ここは、もう少し子どもっぽさが欲しいんだな」など、洋二郎さんに言われたことを修正していく感じですね。正直、かなり難しいので、まだわからないですし、本番に入りながらも、ずっと模索している自分がいると思うんですが。
ーー前半は姉と弟、後半は母と息子という形ですよね。姉と弟は守り合う、絆が強い姉弟(きょうだい)だと思いますが、このふたりの関係性について森崎さんはどんなふうに捉えていらっしゃいますか?
家庭環境は人それぞれあると思いますが、僕からすると「普通」とはなんだろうと。「普通の家庭」とみんな言いますが、「普通」とは、みんな全然違うものを持っていると思っていて。だけど、僕が共感できる部分としては、例えば、子どものころは親が無敵状態な感じがするんですが、いつか親はひとりの人間なんだと気付いたり、こういうところがよくないよねと思い始めたりする。僕も弟がいるので、親に対してや家に対して、お互いに話すことがあるんですよね。
だから、人間味が溢れていれば溢れているほど、あえて言うなら、みんなが感情的になればなるほど、その家庭が、兄弟の絆が強くなっていくと思っていて。共通の敵ができるということではないですが、そういうことで兄弟が強くなっていく。だけど、その兄弟でも歳が離れていたり、生まれる時代、親の気持ち次第で変わっていくから、「そっちにはこう見えているけど、僕にはこう見えている」というふうになることもありますし。
作品の中では、「何を信じ、何を信じてはいけないのか」となってくるので、冒頭の姉弟のシーンに、僕はとても共感できます。でも共感できることと、それを表現できるかどうかは、全く違うものだと思っています。表現となると別のスキルになると思うんですよね。描かれている時代を過ごしていないからといって、その芝居ができないというわけではないですから。
客観的に脚本を読んだとき、とてもわかるなと思いました。2幕のジョンも親に対して気を遣っていますが、うちも外国に出てきて、僕は長男だったので我慢させられることも多かったですし、すごく親に気を遣うこともありました。うちはシングルマザーではないので、全く同じ状況ではありませんが、すごくわかるんですよね。「ジョンは怒っているから、そう言うんだよね」という部分がわかるんです。そういう意味では自分の持つバックボーンと重ねても……でも、重ねすぎたらしんどいから、そこはジョンというフィルターを通してうまい具合に調理できたらいいなと思います。頭で理解していても、実際に舞台の上に立つと、やることは他にもいっぱいありますから。
結局僕らは、そこで感じていることを見せる瞬間もあれば、伝える瞬間もあるから、それを伝えなくちゃいけないとなったら、またギアが違ってくるんですよ。そういう意味でも共感できる部分は多いし、多分観に来る方にとってもそうかなと思います。国が違っても家族問題は変わらないんだなとすごく感じています。
ーーふたりミュージカルだからこそ、漏れなくお客様に伝わりそうですね。
そうですね。今回の作品は、決して重苦しいものを舞台上でやっている、みたいなことではないので。最後はとてもいい曲を歌うし、人によっては泣けると思いますし、スッキリすると思います。これでいいんだなとか、ゆっくり始めてみようかななど、そういう意味でパンフレットに「一歩を踏み出す」と書いてありましたが、まさに本当にその通りだなと思いました。これをエンターテイメントとしてやる意味は、そこにあるんじゃないのかなと感じましたね。
ーー森崎さんが作品を通して伝えたいメッセージがあれば教えてください。
カタカナの名前や地名が出てきて、自分から遠いなと感じてしまうかもしれませんが、家族の話は普遍的なもので万国共通だとすごく感じます。人間は誰しも完璧ではないし、それに対してどうにかして向き合っている人もいれば、向き合ってない人もいたりして、それはそれで人それぞれタイミングがあると思います。
この作品は、何か自分に大きな欠点があったとしても、そこに向き合ってどうやって生きていこうかという話でもあると思うんです。「もしかして、こういう欠点を持っていてもいいのかもしれない」と思える勇気をすごくもらえると思いますし、そういう勇気を与えられる作品になればいいですね。
<取材協力>
Hair&Make-up KEIKO
Styling AKIYOSHI MORITA
※アイデアニュース有料会員限定部分には、ジェンの変化について、ジョンを演じていて見えないところ、共感できない時にどう演じるかというお話やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■「これからも間違えるかもしれない」と言う2幕のジェン。ジョンはそれを受け入れる
■ジョンは「戦争に行く」という選択をするが、僕にはその選択はできないかも、と
■共感できないときは「伝えること」に重きを置く。自己満足の演劇にはならないように
■もしも、「観よう」と選んでもらえて、何かを感じて帰ってくださったらとても嬉しい
<ミュージカル『ジョン&ジェン』>
【東京公演】2023年12月9日(土)~ 2023年12月24日(日) よみうり大手町ホール
【大阪公演】2023年12月26日(火)~ 2023年12月28日(木) 新歌舞伎座
公式サイト
https://stage.parco.jp/program/johnandjen
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登場人物の性格や人柄をリズムで捉えたり、その人の中に流れるビートに当てはめたりと、音楽人である森崎さんらしい役作りだなぁと、とても印象的でした。
稽古を通し演出家とキャストが一丸となって、ここまで作品や人物のバックボーンを固めていく事例はあまり聞いたことがありませんでした。描かれる場面の前後をここまで考えさせられたのも初めてかもしれません。
自分の今後の観劇の仕方も変わりそうな良い体験となりました。