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「歌舞伎はDNAに響くようにできている」、J-CULTURE FEST presents 詩楽劇『八雲立つ』尾上右近(上)

筆者: 岩村美佳 更新日: 2025年11月28日

J-CULTURE FEST presents 詩楽劇『八雲立つ』が、2025年12月29日(月)から31日(水)まで、東京国際フォーラム ホール B7で上演されます。J-CULTURE FEST は“伝統と革新”をコンセプトに、日本文化に親しみ、新たな価値発見の機会を提供することを目的に、東京国際フォーラム開館 20 周年記念事業として 2017 年にスタートし、日本古来の伝統芸能の良さを現代に生かす音楽や舞等の“公演プログラム”と、正月行事を中心に日本文化をさまざまな形で体感する“正月テーマパーク”を実施。2020年より、“公演プログラム”と“体験・企画展”を通して、日本文化を様々な形で体験できるイベントとして毎年開催しています。

詩楽劇『八雲立つ』は 2022年から2023年の年末年始の時期に公演を通して神々に触れることで、一年の穢れを祓い、新しい一年を寿ぐことをテーマに上演された作品です。知っているようで知らない古くから日本に伝わる神々の物語を本物の装束を纏い、日本のプロフェッショナル達が集結し、古典芸能と音楽が融合する舞台をお届けします。 主となる物語は荒魂(あらみたま)と八岐大蛇(やまたのおろち)。スサノオの成⻑物語を展開しながら、岩⻑姫の美貌への嫉妬からの闇堕ち、草薙剣の誕生から岩 ⻑姫が神上がり浄化されるまでを、日本という国の構築に大きな役割を果たしたスサノオと岩⻑姫の魂の交わりを描きます。

脚本は戶部和久さん、構成・演出は尾上菊之丞さん、出演は、須佐之男(すさのお)役に尾上右近さん、岩⻑姫(いわながひめ)役に紅ゆずるさん、 瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)役に佐藤流司さん、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)役に和田琢磨さん、木花咲耶姫(このはなさくやひめ)役に梅田彩佳さん、そしてヴァイオリンの川井郁子さんと、和楽器が奏でる音色、石見神楽 万雷の大蛇の舞が本作を彩ります。

アイデアニュースでは、尾上右近さんにインタビューしました。インタビューは上下に分けてお届けします。「上」では、再演にあたっての思いやご自身の変化、ミュージカルコンサートに出演された時のこと、歌舞伎の見どころなどについてお話ししてくださった内容をお伝えします。「下」では、普段の歌舞伎の衣裳とJ-CULTURE FEST presentsシリーズならではの本物の装束を着用された時との違い、J-CULTURE FESTに出演されての思い、作品中で右近さんがライブで隈取をされるシーンのこと、そのシーンで尾上菊之丞さんが演出された音楽に乗って届けることについてのお話、芝居を届ける側としての責任について、年末年始に一瞬訪れるオフの時間帯についてのお話などを紹介します。

尾上右近さん=撮影・岩村美佳
尾上右近さん=撮影・岩村美佳

ーー前回の資料映像を拝見させていただきましたが、ほぼ歌舞伎ですね。

 そうですね。ほぼ歌舞伎なので、前回も不安はなかったです。今回も再演ということで、気持ちを切り替えて、よりブラッシュアップしたものを、今の自分が感じていることに自然に従って取り組もうという気持ちです。再演とはいえ2年ほど経っていますから、あの時とは経験値も状況も違いますし、いい意味で変わりました。「率いていく」という意識みたいなものも持っていきたいと思っている時期ですね。

ーーいい意味で変わったとおっしゃいましたが、具体的にどのあたりが変わりましたか?

喰らいついていることには現状も変わりはないですが、例えばパンチ力で言うと、若い時にはパンチの速度ということにひたすらこだわる時期でしたが、最近は速度は落ちても、重さというか、パンチ力自体のアップを意識する時期といいますか。より大きく、重く、強く、太々しくということですかね。責任感もそうですし、より大人にということです。実際、大人の魅力とはそういうところにあるのだと思うんです。

自分でも自然とそういうところを大切にし、マインドも無理しているわけではないので、切り替わってきていると感じます。落ち着いたのかもしれないですね。今年の4月に歌舞伎座で『春興鏡獅子』という自分がずっと憧れてきた演目をやらせていただいたことも大きいです。以前は、果たしてそれができる日が来るだろうかと不安でしたので、尖ったりとか、いろいろなものを獲得しなければいけないという焦りが強かったように思いますが、『春興鏡獅子』を経験させていただいたことで、心の底から本当に安心しました。

母を訪ねて3000里じゃないですが、実の母親に会ったことがないみたいな不安というか、コンプレックスみたいなものがずっとあったんです。本当にお母さんに会える日が来るかもしれない、その時に自分がまともな人間であろうと思って、一生懸命やってきたというのが鏡獅子をやる以前の自分で、やらせてもらうとなった時にカーテンの向こう側に実の母親がいるような感じでした。

カーテンが開いた時、すなわち幕が開いた時には、母親にやっと会えたみたいな感覚で、「やっぱり俺はこの人の子だ」みたいな安心感をすごく強く持ったんです。それと同時にひと安心してしまったみたいな感覚もあり、今までの自分とちょっと違うなと、自分の変化に戸惑う時期もありました。

ーー目標を達成されたからですか?

そうですね。純粋に歌舞伎に対して、自分の仕事に対して、フラットに向き合うという時期にいきなり突入しましたので、5月、6月くらいは自分自身でも結構びっくりしていたかもしれません。7月に自主公演を開催させていただき、それが終わってから休んで、9月の南座さんでようやくフラットになったと認識できました。そういう差し引きなしの状態でした。

ーー成し遂げられた時は、「次はどうしようか」となりますか?

それを想像していなかったんです。実現できる日までのことしか考えて生きてこなかったので、その後を考えたことは一度もありませんでした。だから、「やっべ! 30年やろうと思ってやってきけど、その後の60年くらいどうするの?」みたいな。だから、焦りました。

ーーフラットになったとおっしゃっていましたが、新たな目標を作るというわけではなく、積み上げていくみたいなことでしょうか?

今後はその演目をやり続ける、当たり役にする、右近が歌舞伎座でやることによって、お客さまがたくさん入ってくださるという目標がまず一つあります。そして、僕は鏡獅子という古典作品に憧れてきましたが、その憧れられる古典になるような作品を、今度は自分が新作として作るのも目標です。当面の目標という感じになりますね。短期的な目標は『春興鏡獅子』でしたから、次は、日々の積み重ねの向こう側にイメージする感覚の目標を持っています。

ーー『八雲立つ』は、歌舞伎よりもよりいろいろなジャンルを好むお客さんが来られるであろう内容の作品だと思いますが、前回ご出演の際、客席の雰囲気の違いなどは感じましたか?

客席を通って引っ込んだりする場面もありましたので、違いを感じました。歌舞伎は相当音圧がありますし、ノーマイクで、劇場の箱は結構狭いです。そういう意味では、歌舞伎の熱さ、あつかましさでいいと思うんですけどね。それは僕の好きなところで、歌舞伎の圧みたいなものを、直に感じていただいているという空気を感じました。お客さまがちょっとのけぞっていましたし、それがいいなと思いました。

ーー劇場空間に、濃密に詰まっているんですね。

歌舞伎の魅力とは何かというと、いろいろありますが、一生やり続けることを前提とした大人たちが、ほぼ休みなく重い衣裳を着て、重い小道具を持って、ノーマイクで大きい声を出して、毎日本気でやっていて。サラブレットと言われている人たちも、結局やっていることは馬車馬です。そういう一生懸命、本気、大変なことを当たり前として、舞台に立っている人たちの生き様を見るというのが、歌舞伎の魅力だと思うんです。僕なりに、そこに向かっていっているのではないかと思います。

ーー今回新たな共演者の皆様とご一緒されますが、皆さまにお会いになりましたか?

紅さんと和田さんは存じ上げています。紅さんは番組でご一緒だったことがあったり、観に来てくださったり、共通の知り合いがいたりするので、そういう繋がりで存じ上げていました。和田さんは、松也さんと一緒に、前にプライベートでお会いしたことがあったぐらいですかね。

その中で、佐藤さんとは一緒に取材させていただいてよかったです。共演の前に取材などで話せるといいですね。大分話せて僕は仲良くなったと勝手に思っていますので(笑)。

<取材協力>
スタイリスト:三島和也(Tatanca)
ヘアメイク:Storm(Linx)
※その他スタイリスト私物

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ミュージカルコンサートに出演された時のこと、歌舞伎の見どころなどについてお話してくださったなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。〓日掲載予定のインタビュー「下」では、普段の歌舞伎の衣裳とJ-CULTURE FEST presentsシリーズならではの本物の装束を着用された時との違い、J-CULTURE FESTに出演されての思い、作品中で右近さんがライブで隈取をされるシーンのこと、そのシーンで尾上菊之丞さんが演出された音楽に乗って届けることについてのお話、芝居を届ける側としての責任について、年末年始に一瞬訪れるオフの時間帯についてのお話などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■ミュージカルコンサートに出演した時、パパッとハモリが決まって「うわー!これは何だ!?」って(笑)

■歌舞伎を好きになってもらうことに繋がる可能性があるから、自分が嫌われないことは仕事として重要

■常に幸せは自分の心が決める。「ちゃんと楽しもう」という気持ちでいるのは重要かもしれない

■歌舞伎には相手を尊重しながらも、歌舞伎の世界に染めていく力がある。その柔軟さと芯の強さが面白さ

<J-CULTURE FEST presents 詩楽劇『八雲立つ』>
【東京公演】2025年12月29日(月)〜12月31日(水) 東京国際フォーラム ホールB7
公式サイト
https://yakumo2025.com

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尾上右近さん=撮影・岩村美佳
尾上右近さん=撮影・岩村美佳

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<筆者プロフィール>岩村美佳(いわむら・みか)  フォトグラファー/ライター ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。「書いてみないか」という誘いを受け、未経験からライターもはじめた。現在、演劇分野をメインに活動している。世界で一番好きなのは「猫」。猫歴約25年。 ⇒岩村美佳さんの記事一覧はこちら

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