ミュージカル『スリル・ミー』が、2023年9月7日(木)から10月3日(火)まで東京芸術劇場シアターウエストで、10月7日(土)から9日(月・祝)までサンケイホールブリーゼで、10月11日(水)と12日(木)にキャナルシティ劇場で、10月14日(土)と15日(日)にウインクあいち大ホールで、10月21日(土)と22日(日)に高崎芸術劇場スタジオシアターで上演されます。ふたりの役者と一台のピアノのみで繰り広げられる息をもつかせぬ究極の100分間。2011年の初演から何度も上演されてきましたが、2023年は、尾上松也さん(私)と廣瀬友祐(彼)さん、木村達成さん(私)と前田公輝さん(彼)、松岡広大さん(私)と山崎大輝さん(彼)の3組のペアで上演されます。
アイデアニュースでは3組のペアの取材をしました。初回は、2021年に初めて出演した松岡さんと山崎さんのインタビューを、上下に分けてお届けします。前回出演の際は、初対面の際に取材させていただきましたが(https://ideanews.jp/archives/101702、https://ideanews.jp/archives/101713)、2021年の公演を経て絆を深めたおふたりが、作品について、お互いについて、様々な視点で語ってくださいました。
「上」では、再演にあたっての率直な気持ち、前回感じたこと、演劇に対しての考え方の変化、前回の「私」と「彼」を振り返っての想い、「若さ」による勢いがあったというお話などを伺いました。「下」では、お互いのことをどう感じているか、演出・栗山民也さんの言葉やエピソードとお客様へのメッセージを紹介します。
――おふたりだからこその手応えがあっての再演かと思うのですが、今、率直にいかがでしょうか?
松岡:再演というものに対して、僕にとってはレクリエーションなんです。初演の続きという捉え方もあると思うのですが、どちらかというとさらに深掘りできて、いろんなところにさらに根を張れる、幅を広げられるという意味で、再演は必要だと思っています。何よりまた挑戦というか、再び山崎くんとできるということが一番大きいです。前回は心残りもありますし、2年経ったからこそ見えてくるものもあります。僕自身も変わりましたので、戦いたいと思います。
――前回は戦っていませんでしたか?
松岡:戦っていたのですが、違う戦い方かなと。ずばっと切り込んでいきたいです。
――山崎さんはいかがでしょうか。
山崎:こうやってインタビューでお話させていただくと、広大くんが答えている言葉が僕にも聞こえるじゃないですか。初演後ちょいちょい会っていたので僕にも分かりますし、本人も「変わったんだ」という話を結構言っているので、まず広大くんがどう変わっているのかが楽しみです。この2年の間、演劇というものがやっぱり好きなんだと再認識している広大くんを近くで見ているんですよ。そんな彼ともう1度やることができるというのが、そして、ふたりとも前回とは同じものを作ろうとしていないということがやっぱり楽しみです。
松岡:議論ができるということですね。
山崎:そうですね。それが楽しみです。
――公式HPに最初に掲載された山崎さんのコメントに「考え方が変わった」と書いてありましたが、それは演劇に対する考え方のことですか?
山崎:そうですね。そして考え方が変わっているからこそ、多分知らないうちに、出し方も自分の中で変わっていっている気がしています。自分では意図していたわけじゃないんですよ。僕は前回の『スリル・ミー』の映像資料をずっと見ていなかったんですが、わりと最近になってちょっと見返してみたり、前の台本を手に取った時に書き込んでいることだったりを見ていたら、「多分今の俺はこれをできないし、やろうとしてもこうはならないな」というのを実感したんです。そうなると、絶対違うものができるんだろうし、考え方が変わったというか……。
松岡:自然と変わったんじゃない?
山崎:そうだね、触れてきたものがいろいろあるからこそ、変わっているんだろうなとは思いますね。
――松岡さんも相当変わったとおっしゃっていましたが、何か具体的なことはありますか?
松岡:『ねじまき鳥クロニクル』が公演中止になってからさらに猛勉強して、劇場に観に行ったりとかしているので、僕にとって演劇が必要なものになりました。今までは「大好き」とか「好き」とか、動詞的なものだったり、述語で話していたんですが、「必要」になりました。
――「衣・食・住」みたいなものですか?
松岡:「衣・食・住・演劇」になりました。その3つの柱の中に演劇が1本入ったみたいなものです。元々演劇って、もっと生活圏に入っているものだと思うんですよ。でも今はどちらかというと特権的な階級の人とか、あるいは買い占めが起きたりとか、不正利用とか転売とかが出てきてしまって、なんだか高級な趣味になってきてしまっているなと思っています。
――すごく分かります。
松岡:それでは新しい人も入ってこないし、俺はYシート(20歳以下限定)の存在をSNSでも発信していますが、「知らなかったです」という人も多いし、それは主催者が悪いとか、どこが悪いというのではないけれど、ただすごい覚悟を持って劇場に来る人がすごく増えてしまったなと。
本来はもうちょっと足取り軽く、「今日あそこであれやってるらしいよ」「じゃあ行こうよ、当日券あるんだって」と、映画やお茶に行く感覚だったと思うんです。我々20代が10年後に演劇を引っ張っていくと考えると、客層はどうなってしまうんだろうか?と戦慄を覚えます。今それを考えただけでも怖いです。変わったというのはそういうところです。
ーーふっと足を運ぶ場になったら、すごいですよね。
松岡:僕は細々と草の根運動をしています。
山崎:何だろうね、分からなきゃいけないと思わせてしまうのもいけないし……俺の言っていること分かる?
松岡:分かるよ。
山崎:分からないんだったら分からなくていいし、そういうことをどの活動をしていても思います。特にこの『スリル・ミー』は簡単な話ではないから、「ちゃんと受け取れなかった……」と思わせてしまうのも申し訳ないなと思います。
松岡:そうなんだよね。我々が自由度を与えられていないということでもあるから、それはこちらの責任でもあるのかなと。
山崎:あまり小難しく考えて欲しくないんですよね。なぜなら僕がそういうタイプだから。感覚で感じ取ってもらえればいい部分もあると思っていますので。全て理解して分析しなくてもよくて、感覚で感じ取ったものをまた何かに生かしてもらえれば、ということを思います。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、前回の「私」と「彼」を振り返っての想い、「若さ」による勢いがあったというお話などインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。23日掲載予定のインタビュー「下」では、お互いのことをどう感じているか、演出・栗山民也さんの言葉やエピソード、お客様へのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■松岡:若さは我々の肩書き「だった」。無理することになるから今回は出さない
■山崎:当時の僕がやっていた「彼」は、すごく取り繕った一面を見せていた
■松岡:「私」として客席から登場するときに、顔を覗かれることがあって…
■山崎:リアルだからこそ、「この先に進まないでほしい」とすごく感じる作品
<ミュージカル『スリル・ミー』>
【東京公演】2023年9月7日(木)~10月3日(火) 東京芸術劇場シアターウエスト
【大阪公演】2023年10月7日(土)~10月9日(月・祝) サンケイホールブリーゼ
【福岡公演】2023年10月11日(水)・10月12日(木) キャナルシティ劇場
【名古屋公演】2023年10月14日(土)・10月15日(日) ウインクあいち 大ホール
【群馬公演】2023年10月21日(土)・10月22日(日) 高崎芸術劇場 スタジオシアター
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/thrillme2023/
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インタビュー記事有難う御座います。前回の公演を経て、本番が始まる前のお二人の心境を聞く事が出来て嬉しいです。二年の間にそれぞれに経験を積んだ二人の深まった演技が観れる事を心から楽しみにしています。