音楽劇『空中ブランコのりのキキ』が、2024年8月に東京・世田谷パブリックシアターと、兵庫・アクリエひめじで上演されることがこのほど情報解禁されました。咲妃みゆさんと松岡広大さんの出演が発表されています。別役実さんの傑作童話数本を原作に、快快の野上絹代さんを構成・演出に迎え、歌・音楽・サーカスありの楽しくも切ない新作が、世田谷パブリックシアターの夏のアートフェスティバル「せたがやアートファーム」メインプログラムとして届けられます。
劇団「快快」の俳優・振付家・演出家であり、劇団活動のみならず演劇、ファッション、ダンスをまたにかける鬼才・野上絹代さんと、同じく「快快」の脚本家・演出家であり、第57回岸田國士戯曲賞・最終候補となるなど気鋭の北川陽子さんが、劇作家・童話作家として数々の名作を生みだしてきた別役実さんの傑作童話数作品を元に、一本の音楽劇としてストーリーを再構築して創作される本作。音楽には、バンドサウンド・ワールドミュージック・雅楽・エレクトロ・打ち込みなどジャンルを逸脱した特異なセンスを持ち、多くのアーティストやメディアに音楽・リミックス提供し活躍するオオルタイチさんが決定しました。
原作となるのは、中学校の国語の教科書にも掲載されていた「空中ブランコのりのキキ」、童話集「山猫理髪店」より「愛のサーカス」などサーカスをテーマとした作品数本、「丘の上の人殺しの家」と、どれも別役実さんの傑作と言われる、不条理でどこか不思議な作品です。出演者には俳優のほかサーカスパフォーマーも加わり、演劇・歌・音楽・サーカス・ダンス・アクロバットを融合した、楽しくも切ない新作となります。
■コメント
【構成・演出】 野上絹代さん
別役作品にはしばしば、アイデンティティを失った設定や人物が登場します。例えば、乗務員が増え続ける乗客のいない汽車、いない泥棒を逮捕するため泥棒に扮する警察官など、一見”無駄” とも言える存在がとても切実で愛おしいのです。今作『空中ブランコのりのキキ』の主人公もアイデンティティに悩む少女です。そんな彼女を咲妃みゆさん、キキを支え見守る登場人物にも魅力あふれる方々に集まっていただきました。加えて選りすぐりのサーカスアーティストの皆さんも。 驚き・笑い・愛に溢れた作品になります。ご期待ください。
【出演】 咲妃みゆさん
何が巻き起こり何を目の当たりにするのだろうと…まるでサーカスのテントに足を踏み入れる直前の高揚感に包まれているようです。別役実さんが生み出された数々の童話が融合する世界を表現豊かにお届けすべく、野上絹代さん、松岡広大さん、プロフェッショナルな皆さんと手を携えて丁寧に創りあげていけたらと思っております。世田谷パブリックシアターは長年憧れ続けてきた劇場でした。こうして初舞台の機会をいただけたことに心から感謝しております。今年の夏は、キキと仲間たちにぜひ会いにいらしてください!お待ちしております!
【出演】 松岡広大さん
素敵な皆様と創作が行えることにとても感謝しています。別役実さんの童話を読んでいると心地いい寂寥感を憶えます。意味も計算もなく過ごした子ども時代が去来して二度と戻ってこない時間や自由さに憧れたり、反して非合理的なことを些か冷笑的な目で眺める現在の視線も感じます。静かで相対的な現象がなぜだか好きです。わからないことが沢山ありますが、それすら楽しくなってきました。未知なるアートの要素の融合、もうワクワクが止まりません。お子様も、子どもだった大人の皆様も、どうかこの一座を楽しみに待っていてください。
■原作について
<童話「空中ブランコのりのキキ」>
“そのサーカスで一ばん人気があったのは、なんといっても、空中ブランコのりのキキでした。”
キキは三回宙がえりのできる空中ブランコのり。キキの三回宙がえりを一目見ようと、どこの町へ行 ってもそのサーカスはいつでも大盛況でした。
しかしキキには、もし他の誰かが三回宙がえりをはじめたら、自分の人気はおちてしまうのではないかという不安がありました。
「お客さんに拍手してもらえないくらいなら、わたしは死んだほうがいい……」
けれども予感は的中し、ある日、他のサーカスでも三回宙がえりが成功してしまうのでした。
<童話「愛のサーカス(山猫理髪店より)」>
ある夜、象と、小さな象使いの少年を乗せたイカダが港街に流れ着きました。象と少年がどこから来た
のか、どうやって来たのかはわからず、少年も話すことはありません。街の人々は象と少年に眠る場所
を与え、彼らの生活を見守りました。相変わらず少年は何も言いませんでしたが、少年や象のちょっとし
たしぐさや表情に人々は感動してしまい、もはや港町に辿り着いた経緯はどうでもよくなっていました。
街の人々は象と少年を思いやり、彼らのために優しくしたいという気持ちが、街全体をなごやかにしてい
ました。
そんなある日、大きな黒い箱馬車が街に乗り込んできます。馬車から現れたのは、金星サーカスの団長を名乗る陽気な紳士でした。
<絵本「丘の上の人殺しの家」>
モントン村の西にある丘のてっぺんに、ポツンと一軒、《人殺しの家》が建っていました。
そこには、ピーボテー、キーボテー、チーボテーという、《人殺し 3 人兄弟》が住んでいました。
彼らは沢山の《殺しのメニュー》を用意していましたが、もう 12 年もお客さんは来ていません。
3 人はだんだんと悲しくなってしまいました。
そんなある日、ついにお婆さんのお客さんがやってきました。《殺しのメニュー》を見せると、お婆さんは
「私は、ぜんぶやってみてもらいたいんだよ」と言うのでした。
別役実 (べつやく みのる)さん:1937 年、旧満州(現、中国東北部)生まれ、2020 年没。劇作家、小説家、エッセイスト。早稲田大学政治経済学部政治学科に入学、ベケットらの不条理劇に影響を受け、鈴木忠志らと新劇団「自由舞台」(後の早稲田小劇場)を創設、その旗揚げ公演であった戯曲『象』(62 年)で注目され、『マッチ売りの少女』と『赤い鳥の居る風景』で 67 年第 13 回〈新劇〉岸田國士戯曲賞を受賞。71 年『街と飛行船』『不思議の国のアリス』で紀伊國屋演劇賞。その他にも、芸術選奨新人賞、読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞特別賞、紀伊國屋演劇賞、鶴屋南北戯曲賞、朝日
賞、読売演劇大賞・芸術栄誉賞など受賞歴は多数。童話や児童のための作品も多く、生み出した戯曲は 140 本を超える。日本の不条理演劇を確立した第一人者と言われている。
<せたがやアートファーム 2024 音楽劇『空中ブランコのりのキキ』>
【東京公演】2024年8月 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2024年8月 アクリエひめじ
公式サイト
https://setagaya-pt.jp/stage/15937/
【原作】 別役実 (童話「空中ブランコのりのキキ」「山猫理髪店」「丘の上の人殺しの家」より)
【構成・演出】 野上絹代
【音楽】 オオルタイチ
【脚本】 北川陽子
【出演】 咲妃みゆ 松岡広大 ほか
【主催】 公益財団法人せたがや文化財団 【企画制作】 世田谷パブリックシアター 【後援】 世田谷区
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