2023年11月3日(金・祝)に開幕し、11月19日(日)まで東京・有楽町よみうりホールで、11月21日(火)〜 23日(木・祝)まで大阪・松下IMP ホール、11月28日(火)〜 29日(水)まで仙台・電力ホールで上演されるミュージカル『スライス・オブ・サタデーナイト』に、エディ役で出演する一色洋平さんと、本作の演出を手がける元吉庸泰さんのインタビュー後編です。
「下」では、役者にとっての作品を上演する意味を知ること、海外作品に携わる際に行っていること、翻訳作品のスラングのこと、登場人物である「17歳の彼らにアドバイスするとしたら?」というお話などについて伺った内容と、お客さまへのメッセージを紹介します。
――作品から感じる熱量の正体がわからなかったのですが、お話を伺っているうちに、目から鱗が落ちました。
元吉:最初に原文の本を買って読んだときは、本当に「えぇ…? 俺の訳し方が違うのかな?」と思ったんですよ(笑)。でも小田島くんがすごくそこをわかって汲み取ってくださったんです。振り付けの原田薫先生も、お芝居ができてヤバいくらい歌える方なので、本当に全部のナンバーやダンスが楽しくて、すごく全部必然性のあるものに組めている感じです。それを、(キャストや関係者のみなさんに)楽しんでもらえているというのが、僕はすごく嬉しいですね。
一色:楽しいですね。
――関係者のXのポストを拝見すると、もう「楽しい」というキーワードで溢れていますね。
元吉:「他にないんかい!」って思いますけどね(笑)。
一色:楽しいですよー!(笑)。役者は舞台に立つときに「なぜいまこれを上演するのか?」を知っておくと、やっぱり一回り強くなれるんです。「なぜいま、これなんだろう?」と疑問を持つと、力がちょっと一段弱くなる。でも庸泰さんがさっきおっしゃってくださったようなことは、本当に稽古初日からディスカッションして説明してくださったことで、やっぱりいまの日本で、自分たちが抱いている怒りとか、気持ち悪さと近いものがあるんだなと。たとえば「僕が払ったお金、どこ行ってんだろう?」とか、「税金いっぱい払ってるけど、なんか良くならない」とか、「今日も道路工事してる」とか(笑)。
元吉:「国民健康保険高くない!? こんなにいく?」とか(笑)。
一色:「保険がまた高いよ!」と思っても払っちゃうじゃないですか。だって払わなきゃいけないし。
――そうですね。
一色:払うことに納得できないのに払わなきゃいけない「気持ち悪さ」。お芝居で、バーでお金を払うシーンをやるんですが、そのときも同じように「気持ち悪い」んです。エリックが「また値上げした」ことについて「怒り」と「なんだかな~」いう気持ち悪さもあるけれど「でも払うよね」って。払ってでも、やっぱり週1でここ(「CLUB A Go-Go」)には来る。なぜかと言うと「他の週6日を頑張っている」から。ここにいるのは、すごく他の週6日を頑張っている子たちなので、この1日を切り取っただけでも「成長物語」なんです。でもグッと成長するわけじゃなくて、本当に半歩ぐらい。
元吉:ほんの少しね。
一色:でも多分、その「半歩」が毎週あったりするわけだから、彼らの成長である「半歩」が、大きく「劇」として見えたらいいと思っています。
元吉:そのお金を払うシーンでは、大人に対して若者が不満をぶつけるんです。「なんで値上げしてんだよ! どっか抜いてるんじゃねぇのか!?」といった若者の不満に対して、エリック役のJayさん(川平さん)がナンバーで応えて。あの流れが創れたときは素敵だったね。
一色:素敵でしたね。
元吉:台本にない流れだったんですが、みんなが「Yay!」って盛り上がって。「もっと来て欲しいんだ!」ってJayさんが言ったら「じゃあこう変えて言ってみない?」って。
一色:そこで新しい訳詞が生まれて。
元吉:あれはもう、カッコよかった!
一色:ミュージカルは音楽があることが当たり前で、ミュージカルを観に行けば音楽を聴けます。この間、庸泰さんとの雑談で、家にいるときの彼らは、この時代基本「無音」なんだと。僕もそうですけど、いまは「BGMが欲しいな」と思ったら、携帯で動画サイトを観たりする。でも彼らは音楽を手軽に手に入れられなくて、クラブにでも行かない限りは音楽を浴びられない。そんな環境なので「無音」が日常である、というのが面白くて。
だからやっぱりこのミュージカルにおいて「音楽がかかる」ということが、彼らにとってもとても大きなことで、週1で求めている巨大な快楽の一つなんです。ミュージカルにはよく「心情が拡大して音楽が鳴る」ということがありますが、彼らにはその音楽がもう最高な形で「聴こえている」状態で、それに乗り始めるというのがちょっと特殊なところかなというのがあります。
――『スライス・オブ・サタデーナイト』が決まった際、お二人とも最初に原著を取り寄せて読まれたということでしたが、海外作品に携わる際には、毎回原著をあたられるのでしょうか?
元吉:僕は結構毎回そうです。いただくか自分で取り寄せて、読んでからやります。
一色:僕もそうですね。ないものもあるんですけど、ある限りは原作を読んで。笑いの書き方とかは結構如実に違っていて難しいので。どういう意図で、ギャグが日本語に翻訳されているのか知りたかったり、あとは感嘆詞や間投詞みたいなものがあるじゃないですか。それも「Ahh」の「あー」なのか、「Hmm」の「んー」なのかを確認します。
元吉:うん、全然違う。
一色:そう。そうすると「Ahh」だと考えてるのかな? とか、「Hmm」だと何か納得いってないのかな? とか。ひらがなにするとまた違ってきたりもするので。。文章ももちろんなんですが、そういう結構細かい、感嘆詞とかはすごく参考になります。
元吉:そうですね。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、翻訳作品のスラングのこと、登場人物である「17歳の彼らにアドバイスするとしたら?」というお話やお客さまへのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■元吉:スラングには時代背景があるから、そこを知らないと原作通りに読めない
■一色:エディに「いま居る環境ではないところで、1人でもいいから友達作って」と
■元吉:「いま、カッコ悪くないように生きているか?」って、問いかけながら生きて
■一色:CLUB A Go-Goへ! 元吉:みんな一生懸命。会いに来て、好きに楽しんで
<ミュージカル『スライス・オブ・サタデーナイト』>
【東京公演】2023年11月3日(金・祝)〜 11月19日(日) 有楽町よみうりホール
【大阪公演】2023年11月21日(火)〜 11月23日(木・祝) 松下IMP ホール
【仙台公演】2023年11月28日(火)〜 29日(水) 電力ホール
公式サイト
https://slice.of.saturdaynight.jp
【作】ザ・ヘザーブラザーズ
【翻訳・訳詞】小田島創志
【演出】元吉庸泰
【音楽監督】大嶋吾郎
【振付】原田 薫
【出演】河下 楽/神里優希 一色洋平 石川新太/黒沢ともよ・ダンドイ舞莉花(Wキャスト) 熊谷彩春 高田夏帆 田野優花/HideboH/川平慈英 ほか
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セックスの描写の話…男性が女性を大切に扱ってするというよりも、男性の欲望のままにするって感じだったのかなと思いました。
スラングに関しては私の理解力がまだまだで理解しきれなかったですが、このミュージカルを同じ時間を共有できて楽しかったです。
毎度素敵な記事をありがとうございます。