2023年1月7日(土)から2月5日(日)に、東京・明治座で上演されるミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』で、チェーザレ・ボルジアを演じる中川晃教さんと、ダンテ・アリギエーリを演じる藤岡正明さんのインタビュー後編です。
「下」では、2022年に様々な作品やコンサートで共演されてきたお二人がそれぞれに思う、『チェーザレ』という作品ならではのお互いの魅力のこと、この作品を演じる中での想いや決意、お客さまに伝えたいことなどについて伺った内容を紹介します。
ーー『銀河鉄道999』、八ヶ岳の『MUSICAL WEEK 2022』、『ジャージー・ボーイズ』と、今年一年はご一緒されている時間も長いかと思いますが、この『チェーザレ』ならではのお互いの魅力を、プレゼンしていただけないでしょうか。
藤岡:どっちから話す?
中川:マサの話が聞きたい!
藤岡:裏話みたいになっちゃいますけど、アッキーは今回珍しく、この船を進める最前線に率先して立っているんです。
ーーそれは、珍しいことなんですか!?
藤岡:珍しいですね。どんな作品でも、創りながらいろいろな疑問に遭遇したり、「ここってどう?」「こうだよね?」というようなことは多々起こるわけです。特に、オリジナルミュージカルにおいては、前例やお手本がないですから。だから、稽古しながらこの歌は、こうなるべきかな、この感情線でいくとこうだなとか、アイデアがいろいろと出てくるんです。
そういうことがある中で今回のアッキーは、作品や台本、世界観やメッセージ性に疑問を持って、そっちを「何か変えよう」とする方向ではなく、作品の世界の中に、自分自身を入り込ませようとしているのを、ひしひしと感じています。
ーー中川さんが、率先して前に進めようとされていると。
藤岡:はい。とにかく、「その世界」に入り込もうとしていて。ある種、これまでのアッキーは、もう少し、自分の感覚に寄せて考えようとしたりしていたと思います。僕もそういうタイプなので、よくわかるんですよ。でも、今回、なぜアッキーはそうしているのかと考えた時、これがさっき言った「責任感」や「使命感」みたいなものなのだろうと。
ーー責任感や使命感ですか。
藤岡:この2年半のコロナ禍を乗り越えてきたからこその、今の『チェーザレ』があるような気がしていて。例えば、さまざまな格差が広がったり、生活に困窮する人が増えるなど、今までの日本社会では考えられなかったような苦しみが生まれた。この作品の時代背景と今という時代が、すごくリンクする部分がより強くなったのだと思います。
2023年の日本・東京において、150年の歴史ある明治座で新しく上演するミュージカル作品としてなぜ『チェーザレ』じゃなきゃいけないのかという理由がはっきりとしたような気がしています。これは、2020年には、そこまで思えていなかったものです。意識的なのか無意識的なのかはわかりませんが、アッキーがそこに強い覚悟や使命感を持っているんじゃないかなと。
この3年弱で、とてつもないことが起きたこの時代に、「絶対にここの目的地にまで辿り着いた『チェーザレ』という作品を、必ず明治座でお客さまに届けなきゃいけない」と。僕自身も感じていることですが、主演として、座長として、彼が強い覚悟を持ってやっているのではと感じます。要は今回「こういうチェーザレが魅力的ですよ」ではなくて、「本気の中川」が見えるのではないかなと。
ーー中川さんが、そういう覚悟で創られているものを、拝見できるということですね。
中川:プレッシャーが今……(笑)。
藤岡:僕は今そう感じています。
ーー中川さんご自身としては、いかがですか?
中川:今言われて初めて「そうなんだ」と。
藤岡:でも、稽古場での居方がいつもと違いますよ。
中川:そうなんですね!?
藤岡:いろんな稽古場で、見てきていますからね。
ーー中川さんとしては、無意識なんですか?
中川:稽古場では、あまりそういう話もしないんです。そもそも、この作品の中で向き合う時間は、ダンテとチェーザレは、多いわけじゃないんですよね。でも昨日、ちょうど稽古をしていて、お互いに共通認識を持って、次の稽古に向かおうとなったことが一つあって。ダンテの登場シーンが限られている一方、チェーザレは、ピサの大学での学生時代の物語と、大人たちでの時間軸が並行しているんです。チェーザレの方が、物理的に舞台上にいる時間は長くなるのですが、「チェーザレは、ここでこういうことを感じている」とか、こういう足跡を踏んでいるのだということを、シーンとして一緒に登場している訳ではなくても、ダンテは共有できている方がいいのかもねと。
ーーなるほど。
中川:この作品は、割とニコイチみたいな発想で観られるシーンがあります。例えば、チェーザレとアンジェロ、アンジェロとミゲルなどがあるんですが、チェーザレとダンテにもそういうところがあって。
藤岡:そうですね。
中川:そして、ダンテという存在は、チェーザレたちにとって、すごく英雄として描かれています。
藤岡:史実ではそうでもないみたいですが、あくまでも原作とこのミュージカルにおいては、そういうふうに描かれていますね。
中川:チェーザレらの学生たちにとっては、ダンテの『神曲』が取り上げられた教授の授業はとても魅力的なんです。大人たちの考えを受け止めつつも、自分たちならではの反骨精神みたいな考え方で、『神曲』に書かれている内容を紐解こうとします。つまり、ダンテは、憧れの存在なんですよ。
そういう意味で、時空を超えて誰もがダンテと繋がることができているという前提で考えると、シーンとしてダンテの出演時間は短くても、全編を通して学生たちに刺激を与えている存在なんですよね。最終的にそこを繋ぐのが、チェーザレになります。だから、「作品の2時間、3時間の中でのチェーザレの足跡と同じ足跡を、ダンテも共通認識として踏んでいかないと、ラストのシーンで見えてくるものが、お互い見づらいよね」と二人で昨日も話していました。
藤岡:ところで、どうなんだよ。俺が演じるダンテの魅力は?(笑)
※アイデアニュース有料会員限定部分には、『チェーザレ』という作品ならではのお互いの魅力のこと、この作品を演じる中での想いや決意、お客さまに伝えたいことについて伺った内容などインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■中川:僕自身が持つピュアさみたいなものは、チェーザレという役とも繋がってくる
■中川:渦を大きくしていくダンテ。藤岡さんの中にある「考えるスイッチ」と重なる
■藤岡:ここから「日本のミュージカル戦国時代」に。期待に添える骨太な作品を必ず
■中川:一見難しいようでも、実は私たちの身近な部分に重なるストーリーを味わって
<ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』>
【東京公演】2023年1月7日(土)~2月5日(日) 明治座
公式サイト
https://www.cesare-stage.com
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本日千穐楽を見終えて、あらためてこの記事を読み返しました。
4回ほど観劇しましたが、このカンパニーが作り上げようとしているものと、作品が伝えようとしているものの一つがリンクしているような気がして、胸がいっぱいです。
この記事に書いてあること、もちろん中川さんと藤岡さんの信頼関係も含めて、全部、舞台から感じられることができたように思います。
素敵な記事とお写真、ありがとうございました!